Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

DEATH NOTE デスノート

2023-08-13 | 映画(た行)

◼️「DEATH NOTE デスノート」(2003年・日本)

監督=金子修介
主演=藤原竜也 松山ケンイチ 鹿賀丈史 香椎由宇

人気コミックの実写版。原作未読なので、映画の再現度やストーリーの改変がどの程度なのかはわからない。そんな僕が他の作品と比べたりすることなしに、ストーリーに集中できていた。他のことを考える余裕を与えないのは、エンターテイメントとしてはよくできているってことじゃないのだろか。

死神のノートを手にしてしまった主人公が、法が裁けない悪人を次々と殺害する。何においてもそうだけど、度を越した"力"を手にすると人間は狂っていく。その過程は痛々しいけれど、藤原竜也の怪演は十二分の説得力を持っている。そして"L"を演ずる松山ケンイチの圧倒的な存在感。松山ケンイチはなーんか苦手なんだけど、この特異なキャラクターを感情を抑えて演じきるのは確かに凄い。有名どころのキャスティングも楽しいが、この二人の対決あっての面白さ。

クライマックスの舞台となる美術館は、磯崎新設計による北九州市立美術館。香椎由宇が電話をかける池のある回廊、夜神月とLが初めて出会う階段の場面もこの建物である。




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特別編 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト

2023-08-11 | 映画(は行)

◼️「特別編 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト」(2023年・日本)

監督=石原立也
声の出演=黒沢ともよ 安西知佳 朝井彩加 大橋彩香

上映時間を聞いて映画館で観るのをちょっとためらった。でも57分だとしても、部長になった久美子をやっぱり見届けたくなって。元吹奏楽部のトロンボーン吹きである僕としては、塚本君的な立場で久美子を見守らねばならんのだ🤔。うむうむ。

オープニングがいきなりニューサウンズインブラスのアレンジによるOmens Of Love ! 。T-Squareファンの僕はこれだけで心を掴まれてしまう♪

確かに長尺にすればアンサンブルコンテスト本番の演奏シーンも出てきて、どのチームがどれだけ上手だったか納得がいくものになっていたかもしれない。だけどタイトなスケジュールの中でメンバーがどれだけ頑張ったかを、コンテスト場面の演奏で示すのはなかなか困難。演奏で優劣を表現するのは難しいし、演奏を聴く側の感じ方で左右される。コンテスト場面を敢えて描かなかったのは、これはこれで良かったのではないだろか。むしろ部員全員をちゃんと鑑賞する僕らに示すこともできたし。劇場版はファンサービスのイベントだもの。これでオッケーでは。

この特別編は、次のテレビシリーズ第3期に向けて、部長となった久美子の立ち位置、部員との接し方、持ち味がよーく理解できるものになっている。噛み合わない演奏を、麗奈と違う視点でアドバイスする場面は、演奏パートの違いが演奏への向き合い方の違いに繋がっていることを示す納得の場面。だけど現実、なかなかこうは言えないと思うのだ。

この久美子の持ち味が間接的にうまく表現されているのが、「リズと青い鳥」でおなじみのみぞれ先輩とのやりとり。開きにくい窓を久美子が外側から開けたのは、久美子の人との接し方の隠喩になっている。話の良さはもちろん、それを分かりやすいビジュアルにする京都アニメーションの巧さでもある。

マリンバを運ぶ場面の細やかな描写。音楽に向き合ってるのはアニメの部員たちだけじゃない。京アニスタッフの真摯な姿勢が感じられる。隙のないイメージがある滝先生のネグセw。優子×夏紀のバトル。そして麗奈と久美子の素直に口に出せないお互いへの思いと信頼が観ていて心地よい。

リーダーってどうあるべきか。社会人になってウン十年経っている僕ら世代は、さんざん聞いてきたことでもある。立場が人をつくる。一方でその人だからできる役割がある。ユーフォ特別編にはそのひとつの答えがある。京アニでこんなことを考えてしまうなんて。これは大きな誤算だし収穫。






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じょしらく

2023-08-08 | テレビ・アニメ


2020年代の今見ると、2010年代初頭のサブカル好きを取り巻いた空気感を思い出させてくれる。同時期のアニメやドラマ、映画、コミック、政治、世相、アニメ製作の裏事情まで盛り込んでいる面白さ。もちろん、このアニメは"女の子の可愛さをお楽しみ頂くため邪魔にならない程度の差し障りのない会話をお楽しみいただく"ことに主眼が置かれているのだが、ハイスピードで盛り込まれるネタの数々に、「あったよねー」と懐かしくなる。これもいつか世代限定のアニメになっちゃうのかなー。

落語が絡む話はほんとに各話の"枕"程度で、あとは脱線に次ぐ脱線のガールズトークを楽しむアニメ。これはこれで楽しいのだが、各話に関係する落語にちょっとでも触れて欲しかった気もする。「娘ほめ」の回なら落語の「子ほめ」の文句を一つでも散りばめておくとか。と、優等生的な感想を持ちつつも、この掛け合いのコンビネーションの見事さと、しつこいギャグの応酬はクセになる。

最終回に魔梨威(まりい)さんが高座に上がるのを袖から撮り続ける長回し(?)が不思議な余韻を残してくれる。

Bパートの東京各地を街歩きするシリーズが好き。地方都市在住のわが身としてお上りさん的に興味あるのと、切り口の面白さが楽しい。畑亜貴と神前暁コンビのOP、ヒャダイン作の桃黒亭一門によるED。楽曲よき。

お先に勉強させていただきましたっ。





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ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE

2023-08-06 | 映画(ま行)

◾️「ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE」(2023年・アメリカ)

監督=クリストファー・マッカリー
主演=トム・クルーズ サイモン・ペッグ レベッカ・ファーガソン ヘイリー・アトウェル

この「デッドレコニングPART ONE」を観る前に、たまたまなのだが「キートンの大列車追跡」を観ていた。1926年の蒸気機関車のアクション映画と、2023年のオリエント急行で繰り広げられるアクションシーン。キートンは特殊撮影技術もない時代にこれを撮ったのか!!と、とにかく感激する。思えばイーサン・ハントのシリーズ第1作ではTGVが登場したし、鉄道を使った名作は数知れず。鉄道と映画ってほんとうに相性がいい。

どちらも鉄橋から列車が落下するシーンがあるけれど、トム君は簡単には落とさない。ギリギリ停まってセーフ!にせずに、畳みかける見せ場に繋がっているのが実に上手い。高所恐怖症の僕には、「ミッション:インポッシブル」シリーズはマジで心臓に悪い映画だ😰。今回も映画館の椅子にへばりついておりました💧。前作「フォールアウト」でも断崖の隙間に食い込んだ飛行機が少しずつ落下していくシーンがあり、従来横の空間が縦になる面白さがあった。今回はその発展形。スピルバーグは「ジュラシックパーク」の第2作で、本作の列車と同じように断崖にぶら下がったトレーラーの中をカメラが縦に駆け抜けるという妙技をやってのけた。あれも凄かったけど、トム君はその危機場面を繰り返す波状攻撃にしたんだから、すごいよな。

さらに予告編でおなじみのバイクスタント!高所恐怖症の自分は、クライマックスの恐怖感が強烈に残ってしまう映画でございました。これを4DXで観るなんて
無理!無理!無理!😱
映画料金おごってもらっても
固辞!固辞!固辞!😱
レビュー書いてるだけなのに、手のひらに汗が…💧。更年期?ww

シリーズ毎回新たなミッションが登場するけれど、ついにAIに立ち向かう大風呂敷広げてきた。このシリーズのプロデューサーとしてのトム君は、テーマや舞台の選び方、スタッフやキャストの人選まで時代をよく読んでると思う。使い途も分からない鍵だけを追って、よくここまで人が動くよな…とも思うけれど、もはや何が脅威になるかなんて予測不能な時代になっているとも言える。

レベッカ・ファーガソン、今回もカッコよかった。ローマの街を駆け抜けるカーアクションもど迫力。黄色のフィアット≒ルパン三世をイメージしてしまう日本人にはたまらない。鍵を狙って追ってくる組織は複数あって、対立関係も複雑なのに、お話の混乱もなくむしろスッキリしてるのは娯楽映画としてよく練られているということなのだろう。スパイ映画にベネチアはよく似合うと思うのは長年の007ファンの発想だろうか。

ともかく続編!待ち遠しい!😆




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恋するシャンソン

2023-08-04 | 映画(か行)

■「恋するシャンソン/On Connait La Chanson」(1997年・フランス=スイス=イギリス)

監督=アラン・レネ
主演=アンドレ・デュソリエ アニエス・ジャウィ サビーヌ・アゼマ ランベール・ウィルソン ジャン・ピエール・バクリ

●1998年ベルリン国際映画祭 銀熊賞(生涯貢献賞)
●1997年セザール賞 作品賞・主演男優賞・助演男優賞・助演女優賞・脚本賞・音響賞・編集賞

かつて「シェルブールの雨傘」や「ロシュフォールの恋人たち」でジャック・ドミ監督は台詞のすべてを歌にした。それはとてもミュージカルとはひと味違った素敵な試みだった。それとは違うが、普段生活する中でふと歌の文句が頭を過ぎることってないだろうか。人からなにか相談をもちかけられたけど断りたい・・・と思ったとき、中森明菜の「禁区」(♪それはちょっとできない相談ね)心の中で流れたり、吉野屋に立ち寄ると頭の中で中島みゆきの「狼になりたい」が流れてちょっと気だるい気分になったり(僕はおかしいのだろか?w)。

「恋するシャンソン」はシャンソンやフレンチポップスが散りばめられた映画。だが場面を盛り上げるために既成曲が流れるような使い方ではない。それは台詞の一部になっているのだ。映画の冒頭。ヒトラーからパリを焼き払う命令を受けたドイツ人将校が突然綺麗な声で歌い出す。美しいパリの街を焼き払うことなんかできない。そう思った将校は、ジョセフィン・ベーカーの「二つの愛」を高らかに歌い始めるのだ。
♪私は愛するものがふたつあるの/それは故郷とそしてパリ
この映画が面白いのは、演じる役者が自分の声で歌うのではなく、オリジナルの歌の断片が台詞として挿入されること。いかつい男優が突然女性の声で歌ったり、もちろんその逆も。曲はあくまで断片として流れるので、唐突さとアンバランスな感じが面白い。医者にかかる登場人物の一人が症状を述べる代わりに流れるのは「体の弱い僕」。
♪脾臓はぱんぱん/心臓はどきどき
・・・と症状を延々早口で歌い続けるコミックソング。相手を勇気づけようと拳を握って歌うのはフランス・ギャルの「レジスト」。不動産業を営むプレイボーイはジャック・デュトロンの「僕は女の子たちが好き」。意見を聞かずに暴走する妻に別れを切り出そうとする夫が口ずさむのはセルジュ・ゲンスブールの「手切れ」。オリジナルを知らずとも選曲がいい、と思えるのだがサントラでそれぞれの曲をフルサイズで聴くと選んだ理由がよくわかる。シャンソンでは男女の掛け合いがみられるものもある。ダリダとアラン・ドロンの「甘い囁き」(サントラ未収録が残念)、アルレッティとアキスタバスの「そして残りは」も効果的に使われている。

実は映画の存在を知ってサントラを先に購入していた。だけどなかなか観る機会がなくってやっと観ることができたんでした。フランス映画らしい恋の群像劇。でもそれをあの静寂の映画「去年マリエンバートで」を撮ったアラン・レネが撮ることが観る前から不思議で仕方がなかった。僕は「マリエンバート」と「恋するシャンソン」に共通するレネ監督らしさを見いだせる程レネ作品を観ていないが、敢えて言うならば遠景でストーリーを描いているところかな。皿の積み重なった不思議なオブジェがある広場を見下ろす借家のバルコニー。上から見る風景とそこで小さく動く人。群像劇の面白さは、観客である僕らが多くの登場人物とそれぞれの交錯する思いを遠くから見守っているようなもの。それはマリエンバートで城の中庭で位置を変え続ける男女を見つめ続ける遠景とどこか似ているのではなかろうか。ともかく音楽と恋模様を楽しむのがこの映画は吉。さぁサントラ聴こう。



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スチームボーイ STEAM BOY

2023-08-02 | 映画(さ行)

◼️「スチームボーイ STEAM BOY」(2003年・日本)

監督=大友克洋
声の出演=鈴木杏 小西真奈美 中村嘉葎雄 児玉清

19世紀イギリスの風景、蒸気機関の躍動感、ありそうなのに見たことのないメカ、飛行機、疾走感。心をくすぐる面白さの要素は全編に散りばめられている。しかしながら世間の評価は今イチだし、どちらかと言えばコケた大作のように評されている。

これは「ラピュタ」になり損ねた冒険活劇だと思うのだ。

主人公レイもパズーも庶民的な現場で働く少年で、機械を扱うのは得意。蒸気で飛行する装置を改造して乗りこなす才能の高さは、初めてのグライダーを見事に乗りこなすパズーにも通ずる。人当たりもよく、アニメ作品でよくある好意的な少年像だ。どちらもクライマックスではダーティな大人たち相手に大活躍するのに、何が違うのだろう。

「スチームボーイ」はとにかく絵がカッコいい。崩れ落ちる建物からはがれ落ちる瓦、砕け散るガラス、博覧会会場に差し込む光。緻密な作画が迫力を生み、ノスタルジックな色合いの風景に見入ってしまう。そこに次々に重量感のある乗り物や建造物が現れる。スチーム城の展望台に現れるコクピットのデザインも、無数の計器にパイプオルガンのような操作パネル、ディスプレイ代わりに拡大レンズが博士の周りをグルグル回る。観ていてワクワクしてくる。これは大友克洋監督の好きがとことん貫かれているからに相違ない。だから少年向け冒険活劇としては申し分ない面白さがある。スチーム城が真の姿を現すクライマックスは、飛行石の間にたどり着いたラピュタであり、科学技術と人間の関わりも共通点のようにも思える。

一方で、「スチームボーイ」がなんか惜しいと思わざるを得ないのは、主人公レイをめぐる人間関係の複雑さだ。財団、スティーブンソン一派、英国軍が入り乱れ、さらに父と祖父の考えの違いを知って右往左往することになる。それはストーリーの展開からすれば面白い要素なのだが、結果として、レイが一本筋の通った行動をとる活躍につながらない。お高くとまった財団のお嬢様のいけ好かないキャラクターが、最後まで変わらないのも残念ポイント。ラストでレイのほっぺにチューでもしてくれれば、印象は違うだろうに。小西真奈美、いい仕事してるんだけどな。

少年が心から楽しめる要素をたくさん備えた力作。だが、ここにはジブリ好きが見入ってしまう気丈な美少女も、見守ってくれる婆さんも出てこない。機械が現れ、蒸気が吹き出し、重い機関車が吹っ飛ばされ、軍艦が凍りつく映画だ。「アキラ」のグロさがないだけで、破壊が破壊を呼ぶ。だから万人が楽しめる少年少女の成長物語を期待すると、映画は全然違う着地点を示してくる。「スチームボーイ」は「ラピュタ」になれない、独自の冒険活劇なのだ。エンドクレジット、セピア色の絵画で示されるその後の様子を見る限り、魅力的なエピソードがありそうなんだが。




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