所変われば、こんなに違う・・・診断基準値
2014・6・16
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基準値が大きく変わる~その背景にはいろいろな事情が
あるにせよ、セラピー協会の主旨からみれば、
生命力と自然治癒力を発揮するためには好ましい方向に
向かっているといえよう。
“以前メタボリック症候群が流行語になって、
みんなが腰回りを気にし始めたように
(基準値の見直し案が)一種の啓発になるのじゃないかと
楽天的にとらえています。“
と言う奈良医師(前出)の、考え方は、高血圧に対する
一般常識にまず、疑問を投げかけて ”波紋をつくる”
ことが、高血圧と健康を考える上での、第一段階と
とらえているようだ。
新たな基準値ということで高血圧の例を先回
お話ししたが、実は健康診断の基準値は、各医療機関が
独自に設定している場合が多いことを、御存知だろうか?
慶応大学医学部名誉教授猿田喬男(たかお)氏は
雑誌のインタヴュ―で 次のように、述べている(*1)
“慶応病院で行っている検査の基準値は、慶応の学生や
職員のうち健康な人のデータを集めてそこから
決められています。
この方法は他の大学病院や検査機関でも同じです。
大きな差が出ることはありませんが、基準値は検査機関
によってまちまちです。“
そうだとしたら、これはどういうことだろう。
ある病院で検査を受けて”健康”と判定されても、
別の機関での検査では基準値が異なるわけだから、
‘異常あり’という判定がでることもあるということだ。
日本人間ドック学会が2013年8月に発表したデータによると、
検査を受けた人の約93%は‘異常あり’と判定されるという。
つまり、2012年に人間ドックを受けた人は 316万人。
健康であると太鼓判を押された人はたったの
7・2%に過ぎないという。
健康基準値が不明確であり、根拠もあいまい。
そうした状況で検査を受ければどんどん病人が増えて行くと
いうことになる。
関東医療クリニック院長 松本光正医師は言う。
“いつしか、高血圧は悪いもの、薬で下げなければならない。
しかし、そうではない。
血圧にしろ、コレステロールにしろ、尿酸値にしろ、
数値が高いのには意味がある。
風邪をひいたときに、ウイルスを退治するために
熱が高くなるのと同じです。
その数値でなければ、その人が生きられないから、
高くなるのです。
数値の上下に一喜一憂することがストレスになって、
逆に体に害を及ぼしています。“
基準値というのはどのように決められているのか、
ここで論じる話でもないと思う。
ただ、言えることは、最近のニュースでもいろいろと
明らかになっているように
製薬会社と病院などの現場の結びつきや政治的からみの
話も少なくないということがいわれている。
同医師は週刊誌のインタヴューに応えている(*1)。
“現在のWHO(世界保健機構)は製薬会社との
癒着で成り立っているようなもの。
1999年にWHOは血圧の基準値を
160から140に一気に下げました。
これほど重大な決定をするからには、
複数の研究によって裏付けられた事実が
なければなりませんが、その根拠となったのは
たった一つの研究成果でした。
基準値が改定されたのは、この研究に、
世界規模の市場を持つ、巨大製薬会社が
かかわっていたからだと言われています。
基準値が厳しくなることで、製薬会社の儲けは
莫大に膨れ上がります。
現在WHOは
予算の7割を製薬会社の寄付金に依存しているのです。“
私たちの健康は基準値を頼りに判定されている。
その基準値の根拠がこうした企業の利潤にからむ、
癒着関係に左右されているとしたら、そして 基準値が
厳しくなるにつれて、病人病と判定される割合が増えて、
ますます、薬の需要を高めるようなシステムになっている
としたら?
この基準値の曖昧性は各国の数値を見ても明らかだ。
日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国、韓国、カナダの諸国
の健康診断基準値を比較した数字がある。
高血圧の数値(mmHg)
日本とヨーロッパ~129以上、アメリカ~119、
中国と韓国~120、カナダ~140
糖尿病の場合(空腹時血糖 mg/dl)
日本、ヨーロッパ、韓国~99
アメリカ~105、カナダ~104
肝機能障害の指標(v-GTP)
日本と中国は男女とも共通数値でそれぞれ、50と45.
ヨーロッパ~男性66、中国~45.
日本の女性~50だが、韓国の女性~38、
カナダで~36
この指標値は、一番ばらつきがみられて、
国によっては、1・5倍近い正常値の違いがある。
基準値のばらつき は、根拠の違い、判断の違いがそこに
あるからなのだが、そうであるのなら、健康診断に行くことが
必ずしも正しい健康の判断を下しているとは
いえないことがわかる。
米国MDアンダーソン癌センター、上野直人医師は、
日本以外の先進国はあまり 健康診断の受診を推奨して
いないのはこうした理由に基づくことが多いと、
雑誌のインタヴューで述べている。(*2)
*1 週刊現代 2014年5月31日号
*2 週刊現代 2014年5月24日号