良い病院とそうでない病院の識別 2014・6・10
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衆議院議員の石田昌宏氏は、政治家になる前は、看護士であった。
日本看護協会に務め、これまでに2千か所以上の医療施設を見て
回ったという。
良い病院かそうでない病院か、その見分け方について、興味ある
対談記事があった。(*1)
良い悪いの定義は難しいが、病院の姿勢や方針の良さは自然と
そこで働いている医師や看護師の表情に顕れてくるらしい。
その見分け方を次のように簡単に紹介している。
1)病院に行ったら、看護婦や患者さんの表情を注意してみる。
良い病院には笑顔の人が多いし、そうでない病院は雰囲気が暗い。
氏は言う。
”病院なのだから、笑顔が無いのは、当たり前という意見もあるかも
知れないがそれは違う。
そもそも病院は病気や怪我を治すための施設。
健康と幸せを回復するために場所。
だから、回復に向かう人が多い病院、それを支えている人が
いる病院は笑顔が多い。
時には病室から笑い声が聞こえるぐらいが良い。”
石田氏は聖路加国際病院内科、東京武蔵の病院精神科に
看護師として勤務していた。
患者が笑顔になれる雰囲気を造りだすのには看護師の
力が大きいと実感している。
看護師が笑顔なら、患者も自然と安心感で、笑顔になれるのだ。
でも、一方的に看護師だけに期待するのも片手落ちかもしれない。
と、石田氏はこう述べている。
”月並みのですが、(患者さんから)’ありがとう’と
いう感謝の言葉を付けられるだけで(看護師は)とても
嬉しくなるものです。
この一言でどれだけ、看護師たちが救われるか。”
患者と看護師が笑顔の人が多いということは
”その病院はお互いに信頼関係がある病院だ、
ということができます”と 石田氏は言う。
だから、まず、受付して待合室にいるとき、周囲の患者さんと
看護師の表情を観察してみることを薦める。
2番目の良い病院の見分け方は、効率重視かどうか、
見極める事という。
良い病院は、病気が治る前に退院させない病院だという。
とはいっても、まだ入院もしていないのに効率重視かどうか
判断ができないだろう。
そのために、もっと簡単に見分けるのには、診察室に
入って、医師と話すとき、”患者と目線を合わせて話しの
やり取りをしているか”ということだという。
友人の母堂が眼科に行き、担当医師から”手術した方が良い”と
言われて、一気に不安になった様子をみせたと友人から聞いた。
その手術する、細かい話しを納得できるように医師に聞きたいのだが
医師は机のパソコンに向かって、データを見ているばかりで
眼を合わせてじっくりと話をしようという気構えすら
感じられず、その医師への信頼感すら喪失しかかったと
話しをしていた。
患者の眼をみず、パソコンの画面をみて、時折、
ちらりと視線を患者に向ける。
こういう医師の診察時の態度は良く見かける光景にもなってきた。
”医療の、データ化、システム化”が進む一方、患者の目線に
たって、とか寄り添って、という余裕も失われてきたかのようだ。
石田氏は言う、
”評価の高い病院では 機能や効果を優先せず、
治療にしても、’ここまでです’と突き放すようなやり方は
決してしないと思う”。
患者も医師まかせにしておかないで、
この病院でどれだけ、自分の病状を緩和してどの状態に
持っていくのか、どこまで、この病院で治せるのかという、ロードマップを
頭に描きながら、医師との対話を試みることも必要だろう。
先回までユマニチュードの話題をとりあげた。
石田氏も、患者と寄り添う病院では看護師が目線を
患者と同じところまで下げて話していると述べる。
”車椅子の方に、しゃがんで正面から目を合わせて話し
かけているかどうかというのは良い病院かどうかの
判断材料になりますね。”
文字通り患者の視点に合わせるということなのだろうが、
70歳以上の看護師を採用して、患者との繋がりを深くしよう
としている病院もある。
石田氏がその病院を訪れたとき、認知症の患者さんが
70歳以上の同年代の看護師と楽しそうににぎやかに
盛り上がって話していたのを見た。
”昔の歌謡曲の歌詞をどちらが、正しく覚えているか、
そんな会話で盛り上がり、認知症の方の状態が改善している”
と感じた。
同じ世代が同じ世代を世話する、これも一つの高齢化に
即した患者さんへの目線を合わせた対応の一つだろう。
いろいろと石田氏はご自身の体験や、病院への視察周りで
感じたことを述べておられた
良い病院かどうか判断するとき、名医がいるかどうかも
話題になる。
しかし、石田氏は次のように言う。
”神の手といわれる名医のことが話題になりますが、医療は
手術がすべてではありません。
やはり、環境の穏やかさ、というものがあって、人はそこで
癒されて治っていくのだと思います。
ですから、患者さんには積極的に看護師と話をしながら、
コミュニケーションを取ってほしいと思います。”
石田氏の理想とする病院のイメージがあると語る。
それは、
”穏やかな時間が流れ、木漏れ日が差し込むような病院”の
だという。
穏やかな時間をつくるのも その病院にいる人達だ。
医師、看護師、そして、患者。
心一つだ。
木漏れ日を見ても、心が穏やかになるか、不安が増すかは
心一つといえるだろう。
笑顔は最大の愛のプレゼントだと言った詩人がいた。
どんなときでも、病気で苦しいからこそ、辛いこそ、痛いからこそ、
そこで投げかけられる笑顔、感謝で受け取る笑顔、
笑顔でもたらされた ホットする温もりは どんな薬より、心を
癒すことだろう。
ましてや、まだ、病になどかかっていない人・・・
健康なのに、それを忘れて、ぶつぶつ文句を言う人、満たされない部分を
探して不満になる人、いつの間にか眉間に皺(しわ)をよせて、難しく
考え込む人、・・・・
健康な私たちは、病院とは無縁の今だからこそ、”笑顔”を今から作る
ように心がけることも、将来必ずその笑顔で癒し、癒される実感を
持つ日に役立つことだろうと思う。
(*1) 文藝春秋 2014 6月号