コレステロール値、背後の利権構造 とは? 2014・6・22
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これまで 日本で論争のなっている基準値の緩和化、
降圧剤副作用、各検査の基準値がそれぞれの機関で定められている
という健康診断の結果の矛盾性などを見てきたが、
基準値でいえば、世界的にみても、様々な国で長年をかけて
薬の患者に与える影響を追跡調査している結果がある
1985年に英国研究グループの行った 5年間の追跡調査の
結果によると、高血圧治療薬をとって、薬で血圧を下げても
下げなくても、あまり高血圧患者の死亡率が変わらなかった
という結果が見られた。
むしろ、薬を取ったグループに 心筋梗塞による死亡率の
ほうが、取らなかったグループより大きかった。
血圧が上がることより下がりすぎる方が危険だということ
について、岡田医師(前出)はこう述べている。
“その理由として有力視されているのは、血圧が下がりすぎると、
脳への血液量が減少し、めまいや立ちくらみなどを起こし
やすくなる。
脳の神経細胞に 十分な酸素や栄養分が送られないために、
思考・判断能力の低下につながる。“
としたうえで、2006年にアメリカの研究者グループが
35万人を対象に25年間追跡調査した結果と結び付けている。
血圧と死亡原因の関係性を探るための大規模調査であったが
”転倒・転落事故、自動車事故、自殺”などの死亡率と、
”病気以外”の死亡率が 血圧が低くなるにつれ
同様に増えていったという結果だった。
医師たちは、血圧が低すぎることで、バランス感覚や判断力の
低下を招いて、こうした結果が生まれたのかもしれないと
しているが、血圧を薬で低くすることの弊害だけでなく、
血糖値を薬で下げるのも危険だと岡田医師は次のように
述べる。
“血糖値というのは、脳のエネルギー源ですから、
低血糖症になると脳の中枢神経の働きが低下し
意識消失や異常行動 こん睡状態に陥るケースがあります。
血糖値の基準値は年齢に関係なく100mg/dl 未満。
しかし最近のデータによれば、高齢者であれば、
治療目標は160~180mg/dl)と かなり高めに
見積もられています。
つまり、病気でないのに、血糖値を下げる薬を飲んでいる
人が多い。
高齢者が薬による急激な血糖値の低下で、
立ちくらみや失神などを起こして 生命にかかわる事態に
至るケースが実際に頻発しています。“
それではコレストロ―ルの値に関してはどうなのだろか?
東海大学医学部名誉教授大櫛陽一氏は次のように述べている:
“コレステロールは細胞膜や神経、ホルモンなどの材料で、
人体に必要不可欠なものです。
コレステロール値は高いことより実は低い値のほうが
要注意なのです。”
大櫛氏の研究では2009年に発表された、
日本人2万6121人を平均8・1年間追跡調査した結果がある。
それによると、
“男性ではLDLコレステロールが180mg/dl 以上の集団で
総死亡率の上昇は認められましたが、これは高コレステロール
血栓という遺伝病が原因です。
しかも上昇率は100mg/dl未満のグループに比べると
小さなものでした。
女性では、LDLコレステロールの高い集団であっても、
総死亡率の上昇は見られませんでした。
それよりも、危険なのはコレステロールを下げ過ぎること。
先の調査結果の通り、細胞の免疫力が落ちて
感染症などにかかりやすくなってしまう。
日本ほどでたらめな非常識が常識としてまかり通って、
患者の健康を損ねている国は
他に在りません。“
週刊現代誌でも取り上げていた、こうした非常識が
まかり通る舞台裏には医学界、医薬品業界の
知られざる関係があるというのだ。
高血圧基準値の歴史的考察をしてみると興味深い。
1987年~
旧厚生省が上(収縮期血圧)を160未満、下(拡張期血圧)を
95未満と定める
2000年~
日本高血圧学会が 60歳なら 上が140、下が 90未満と
いうガイドライン
2008年~
厚労省主導の特定健診では、上が130未満、下が85未満を
正常範囲と規定
この背景に何があるか?
それはアメリカでも基準値が引き下げられ厳しい数字が
定められてきている。
その原因に、大きな利権構造があると指摘したのが、
カナダ人ジャーナリストアラン・カッセル氏だ。
“Selling Sickness(邦題・怖くて飲めない)”という著書を
2006年に出した。
同署で こうしたアメリカの基準値変更の影にある原因
として次のように述べている。
“アメリカでも最近まで、高血圧の基準値は、どんどん
引き下げられていきました。
それにつれて、膨大な数の健康な人たちが
病人の範疇に引き入れられることになった。
たとえば、アメリカでは当初、正常な血圧は
‘90~140未満’とされていたが、2003年‘80~120未満’
というガイドラインが策定されました。
すると、一夜にして、3000万人の人たちが病気と
判定された。
病人が増えて得をする人たち、それは、医師と
製薬会社です。“
カッセルズ氏は医師と製薬会社の間には次のような癒着が
あるとも書いている
“一般の患者を診断する一般医は製薬会社から無料で
薬のサンプルを提供される。
高血圧のガイドラインを作成する委員会のメンバーは
製薬会社の顧問や講演会の講師になって金品を提供される。
時には会社の株主になることもある。
さらに、ガイドラインにお墨付きを与える専門医には
メーカーの研究員などのポストが用意される。
実際のアメリカ2003年 高血圧ガイドラインの
策定メンバー11人のうち、9人が様々な製薬会社から
金銭的援助を受けていました。“
こうしたことが事実かどうかをここで論議する以前に、
すでに日本でもこのようなことを髣髴(ほうふつ)とされる
ニュースが世間をにぎわせていたことは記憶にまだ新しい。
たとえば、大手製薬会社“ノバルティスファーマ”が
販売している降圧剤“ディオパン”の薬効を “脳卒中、狭心症に
効果あり”と宣伝してきた。
ところが、それが操作された臨床データによってねつ造された
ものであることが発覚した。
莫大なこの薬の売り上げの一部が、臨床データをねつ造した
医師たちへの“奨学寄附金”になっていたという疑惑が
もたれている。
厚労省は薬事法違反≪誇大広告≫で同社を刑事告発して、
現在、捜査が進められているという。
自分の体は自分で守る~医師の言うなりにならない姿勢~
こうした記事が発表されることで、再度、健康について、
そして、それを維持する体の備えている不思議な能力について
再考する良いきっかけとなるだろう。
インタヴュー箇所 [参考] 週刊現代 2014・5・25/30 日号