感情的とならないために・・平成25年4月8日
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池見博士の脳の生理学の働きによると、自他の区別ない、
ふれあいの心は、大脳の古い皮質で生まれる集団意識に属している。
このふれあいが足らないと、集団欲が満たされないことになり、
孤独感や、孤立感を人は感じる。すると、無性に、その穴埋めの感情、
ふれあいの充足感を求めるようになるという。
博士の言葉を引用しよう。
“人間は孤独の寂しさに耐えかねて、無性に相手を
求めるようとする。
この場合の相手は、誰であってもよく、その寂しさを
満たす方法よりも、より原始的なスキンシップ、肌の触れ合い
などによることが多いものである”
しかし、新しい皮質は 大人の心 を支配するので、古い皮質
と異なり、自分の主体性を自覚させる。
本当の自分であろうとすればするほど、孤独感を感じることになる。
そして、誰からも理解されないという想いがその孤独感を増すだろう。
新しい皮質が、こうして、理解してくれる相手を求めるとき、
それは、古い皮質の、誰でもよいから、スキンシップやふれあいが
欲しいという原初的な欲望とは異なり、自分を理解してくれる人と
のふれあいを求めるという違いがでてくるとする。
現代人は、Cの本能の心に飢えていたり、あるいは、その欲求に
振り回されて、フリーセックスやモラルの問われる犯罪を
犯したりする。
同時にAの大人の智慧の心を使って、分別を聞かせる一方、
嫉妬や競争心にあおられて、ストレスのたまる生活を
送ったりする。
Pと呼ばれる、親の心はある意味で、CとAの心に、社会的な
他者への思いやりと、その円満な関係を築く理性的な目を
持つことには役立つが、やはり、まだ、私には、不十分な
感がぬぐえないのは、魂 という領域と心との関係の明確性
が欠けているからだろう。
そう考えていたときに、池見博士の次の言葉に遭遇した。
“今日の脳の研究の進歩は、心は超越的・神秘的・心霊的なもので、
科学によってはとらえられないとする、前世紀的な不可知論が
誤りであったことを、次第に明らかにしつつある。
しかし、デカルトが二元論的な立場からではあるが、
‘精神は身体の一部である脳に、他の部分をさしおいて、
宿っているわけでなく、身体と全面的に合一し、あたかも
一つの全体をなしている‘といっているように、脳を切り刻んだ
断片を調べる研究法だけで、心の問題を解きうるとするのは、
自然科学者の傲慢と誤信である“
つまり、こうした、脳科学の研究も、ある意味、すべての科学や
哲学を総括してこそ、今後なされていく方向性になると博士は
行間に語っているのだ。
さて、話しがそれたが、このCAPのバランスを整えるために次の分析
方法に用いられている。
CAP とは、PとAとCの心である。
P~理想や良心を司る心、周囲への思いやり。二面を持つPとして、
母性愛的な無条件の愛に近い、母親的なP正義に反した事への批判、
叱責、処罰を行う、父親的要素のPがある。
A~主体的自我で、創造的な営みを司る。
現実的適応と、個性に即した自己表現を行う。
C~本能的な欲求や、感情を含み、生命活動を司る。
そのための二つの基本的原理、ホメオスターシス*1と、
ふれあいを求める愛情を繋げる役目、順応的な自分。
これら、3つの心の分析を使って、アメリカでは、
Transactional Analysis という方法が試みられている。
略してTAという。
TAでは、3つの分析が行われる
1. 性格の構造を知る構造分析
2. 対人関係をしる、交流パターン分析
3. 人生をドラマとして、その中で演じる基本的構えと脚本の分析
1の性格分析はこうした要素の強弱によって、その人の性格
パターンを知る。
2の交流パターン分析というのは、性格や状況に合わせて、
一般的に3つに分けられる。
共感的交流
互いに、相手の主体性を認め合う。
P主導型。
社会的交流
自己実現というゴールを達成するために、相手の協力を要する場合、
意識して行う交流パターン。
A主導型。
社交辞令やビジネスの契約を取り付けるための手段としても
活用される。
防衛的交流
自分の本当の欲求や動機が意識化されないとき、表面的には
それとわからない会話で行われる交流。
C主導型、または、C-A主導型の交流。
俗にいう、飼い犬に手をかまれる とか、言われる結果を
招きやすい。
なぜなら、自分にも気がつかない裏の心、己に背く心に操られて、
そういう結果をもたらすことが多々あるからだ。
裏面的交流
これは、自分の真の欲求や動機を表現せずに、意識的に遠回しに
伝えようとするコミュニケーション。時には皮肉やあてつけなども
含まれる。
A型主導の交流。
ゲーム
巧妙なセールスマンが使う、コミュニケーションに見られる。
結婚詐欺、ビジネス詐欺、オレおれ詐欺など、相手を操り、
こちらの思うおツボにコミュニケーションを持っていく。
自分の欲求や動機はカムフラージュして、
表面的には異なる交流パターンをとる。
こうして、交流パターンを分析しながら、自分自身のPACの比重、
自分の相手への対応パターンの自覚、他人の自分に対する、
パターンの確認などを振り返ることで、意識的に、自分の心を
状況にあった統御ができるよう、持っていくことにある。
池見 酉次郎(いけみ ゆうじろう)博士について:、
大正4年(1915年)6月12日 - 平成11年(1999年)6月25日)
日本の心身医学、心療内科の基礎を築いた草分け的な日本の医学者。
旧制福岡中学(現福岡県立福岡高等学校)、九州帝国大学医学部卒業。
戦後、アメリカの医学が日本に流入した際、心身医学の存在を知る。
昭和27年(1952年)にはアメリカミネソタ州のに留学し、帰国後、
日野原重明、三浦岱栄らと共に昭和35年(1960年)日本心身医学会
を設立し、初代理事長になる。
翌昭和36年(1961年)九州大学に国内最初に設立された
精神身体医学研究施設(現在の心療内科に当たる)教授に就任し、
内科疾患を中心に、心と体の相関関係に注目した診療方法
を体系化、実用化に尽力した。
九州大学医学部名誉教授、自律訓練法国際委員会名誉委員長、
日本心身医学会名誉理事長、国際心身医学会理事長、
日本交流分析学会名誉理事長などを歴任。
著書に「心療内科」、「セルフコントロールの医学」などがある。
平成11年(1999年)6月25日肺炎のため、福岡市内の病院で死去。84歳。
参考)
”セルフ・コントロールの医学” s・57年9月1日 日本放送出版協会
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