羽化しても翅の縮れはそのままの片羽のとんぼ餌となりて生く
蛆虫は皮膚から溢る芋虫の残り僅かな生命愛おし
田に落ちて捕らえられたるケラ虫の腹に吸い付くアメンボの山
母蜘蛛は子蜘蛛の血肉となりにけり生みし子蜘蛛へ還る母蜘蛛
栗の幹に緑のツートンカラーで、とっても綺麗な幼虫がいた。「お洒落で美しい!」と感動しつつ覗き込んでビッ栗仰天するしかなかった。そこは生死をかけた死闘の現場だった。最初はゴミかと思ったのだが、くねくね動いているから生物と判った。体長6mm程度で頭部を幼虫に突き立てている。寄生蜂の幼虫なのだろうか、「要注意!」と知っていても、どうにもならない状況になっている。人智の及ばぬ世界なのだ。
虫を外せば、大きい幼虫は助かるだろうか。小生にとってフイールドの生物は、原則的に「触れない・捕獲しない」できている。特別の理由は無いけれど、そうなのだ。大きい幼虫は「幼虫図鑑」で「ウスタビガ」と判明したが、背中の黒点は寄生痕らしい。幾つかの資料を総合すると、尾部に取り付いているのは「食い込む姿」ではなく、「体内から出てきた状態」らしい。コマユバチの仲間だとすると、複数寄生している可能性が高い。黒点の数だけ体内にいるのだろう。
すでに、ウスビタガの幼虫は蛹になる能力は失っているのだが、一つの命を頂いて多くの命が生まれる現場だ。「育ての親」とも言えるウスタビガの幼虫に合掌…
バタフライガーデンとは言えないが、庭で羽化する定番がジャコウアゲハである。何株か育ったウマノスズクサを食草にして、今年も幼虫が育っている。早くから姿を見せて一株食いつくし姿を消した幼虫が、リンゴの誘引ロープで蛹になっていた。「お菊虫」と言われても、あの「八百屋お菊」を連想する人は周囲にはいない。蛹をみて「菊の花びら」を連想するのがオチだろう。
18日、蛹が黒く変色していた。「病気か羽化直前か」判断つきかねて、早朝の観察をするつもりだったのだが、20日の四号台風一過の朝、すでにもぬけの殻だった。19日には中身があったのだから、数時間の差で機会を失った。台風が悪い。
他の幼虫は、ミツバにキアゲハ、カラスザンショウに?アゲハ、ホトトギスにルリタテハ、アケビにアケビコノハ、スミレのツマグロヒョウモンくらいしか確認していないけれど、カタバミにはヤマトシジミが舞っている。どの種類も羽化の現場は見たことが無く、記憶にあるのは「お蚕さん」だけだ。
夏至を目前にしてイトトンボの数が急に増えた。水辺の土手を歩くと何匹も飛び立つが、何時までも空中に留まらないし距離も飛ばない。種類に確証は無いがイトトンボ類に間違いはなく、あえて言えば「モノサシトンボ」なのかどうか…。図鑑と比較しても明確な相違点が判る訳でも無い。
ただイトトンボ類は、他のトンボ類と比較しなくても飛翔力が少ないようなので、見ていると物悲しさが湧き出る。そんなわけで、堤の肩の部分から水面を覆うように繁茂してきたウツギを刈り取った。これで水面空間が広がって飛翔し易くなったろう。
泥水地は厳冬期に一度干上がっているが、ヤゴなどは全滅しなかったのだ。か弱さと逞しさの境界は、これからも分からないままの世界だろう。