おかんのネタ帳

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野に咲く花

2016-04-30 15:50:59 | 舞台・映画・ドラマ
暑かったり、寒かったり、雨降ったり・・・
ややこしいお天気が続きましたけど、GWに入りました。
お天気も、良くなってきましたね。風がまだあるねんけど・・・

さて、28日は、またまた兵庫芸術文化センターへ行ってきました!



8日に行った「焼肉ドラゴン」に続く、鄭義信さんの、
戦後三部作の一つ、「たとえば野に咲く花のように」の舞台です。

この作品は、鄭さんの脚本で、鈴木裕美さんの演出。
でも、そこかしこに、鄭さんらしいセリフがあふれていて、
市井でたくましく暮らしている人々が描かれています。



1950年頃の九州のF県のとある港町。
エンパイアダンスホールで働く主人公の真喜は、在日韓国人。
恋人を戦争でなくし・・・でも、第三国人には、
遺骨おろか、戦死の知らせもない。
朝鮮戦争で戦場となった祖国には家族もなく、帰る場所もない。
まさしく、夢も希望もなく過ごしている。

ダンスホール女給仲間の珠代の恋人は、海上保安庁に勤める太一。
鈴子は、真喜の弟淳雨のことが気がかり。

向かいに新しくダンスホール「白い花」が開店した。
ライバル店のオーナーは、顔に戦争で受けたキズがある康夫。
朝鮮戦争の特需で儲けて、ダンスホールも買ったらしい。

同じ目をした真喜を好きに鳴る康夫、そんな康夫の婚約者あかね、
康夫の弟分の直也は、あかねを愛し続けている。
一方通行の四角関係・・・

真喜の弟は、日本に来て憲兵になったらしいけど、
終戦になり、朝鮮人として、そのことが後ろめたいと思っている。
仕事にも就かず、武器の部品を造って大もうけしている工場に、
火炎瓶を投げて、警察に捕まってしまう。

植民地支配のもと、日本のために戦ってきた人々は、
敗戦によって植民地支配から解放されたことで、
日本人でもない、あいまいな立場に立たされ、
何に向かえばいいか、何を目標に生きていけばいいのか、
悩むことになるんですね。

戦勝国人でもなく、敗戦国人でもない「第三国人」・・・
某政治家の発言が問題になったりしたけど、都合良い言葉があるもんやね。

やがて勃発した朝鮮戦争は、在日の人々だけでなく、
後方支援の米軍の基地がある日本の人々にとっても、影響を及ぼし、
海上保安庁の太一は、米軍の指令で、日本海の掃海作業に出発します。
朝鮮半島が分裂したことは、在日の中でも分裂をうみます。

真喜のセリフに、

「今、私らが悩んでることなんて、50年先の子どもらには、
 きっと、取るに足らんようなことになってると思う」

そうやろか・・・
終戦後70年を過ぎた今でも、日韓の関係は微妙やけど・・・

真喜が何度も蓄音機で流す曲は、「虹の向こうに」
オーバーザレインボー、です。

「あんた、虹の向こうに、新しい国があると思う?」

真喜が康夫にきいてました。

かたくなに、絶対康夫と別れないと言い切るあかね、
アルコールに走るあかねを、見守るしかない直也。

相手を傷つけるしかない愛し方って、本当にヒリヒリする。
観ていて、イライラするくらい、みんなが不器用で、
時代に翻弄されて、でも、好きという気持ちは純粋で・・・

女性の演出家だからか、登場する女性たちへの目線が優しい。
ラストは、鈴子、珠代、真喜がそれぞれ妊娠。
妊婦が3人でお芋を食べながら語り合うという大円団。

子どもが生まれる、そういう展開だけで、未来が明るくなるね。
何より、夢や希望を失って、何を目標に生きていけばいいんだ、
なんて言うてる男を、現実に引き戻すし。

唯一、顔の傷以上に、戦争で心がキズついている康夫は、
行方がわからないままやけど、でも、真喜は明るい。

女は弱し、されど母は強し。

そうそう、この作品は、ギリシャ悲劇をベースにしたものを、
って、鈴木さんが鄭さんにオーダーして書かれた作品だそうです。


さて、6月に、三作目の「パーマ屋スミレ」が上演されます。

「焼肉ドラゴン」は1970年の頃の大阪郊外。
「たとえばの野に咲く花のように」は1950年頃の九州福岡の港町。
「パーマ屋スミレ」は、上記の作品の間、1960年頃の北九州が舞台。
こちらは、鄭さんの演出です。