「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
いつかS先生と秋吉で呑んだ折、この歌の話題になった。年次研修で受けた講義に珍しくおもしろいのがあって、「サラダ記念日」の解釈を微に入り細に入り行う講義だったという。
なぜ7月6日か、なぜサラダなのか、サラダをほめてるけどメインはなんだったのか、そもそも朝食か夕食か、するとこの二人の関係は … 。
そういう内容を掘り下げていき、一種の歌から広がる世界を鑑賞できたと述べてらして、なるほどそういう話なら聞いてみたいと思っていろいろ考えた。
この歌を載せている教科書もたしかあったはずだけど、試験ではどんな問題作るのだろう。
この歌から読み取ることのできる作者と「君」の描写を説明したものとして最も適当なものを選べ。
ア メインのグラタンの出来が今ひとつだったことは「君」の表情から気づいたものの、なんとかいいところを見つけて褒めようとしてくれる「君」の優しさを感じとった作者には、今日が生涯忘れられない日になることが予想され、あたたかい喜びにつつまれている。
イ 知り合って一週間で「君」のアパートにお泊まりするとまでは思っていなかったものの、ここで家庭的なところを見せる機会だといきごみ朝食に手作りのドレッシングをつくったところ、見事に狙いがはまったことに内心ほくそ笑む作者と、純真な「君」の姿を読み取ることができる。
ウ 「君」がこの世を去って一年が経ち、はじめて「君」を家に呼んでサラダをふるまった夜がまさか最後になるとは思ってもいなかったと愕然とする。ツナグへの依頼が叶って明日会えることになったが、彼に会う前に自分の気持ちを整理しておこうとしている。
エ 「君」がいないと何にもできないできないわけじゃないとサラダをつくってみたものの、あまり美味しく感じることができず、ふたりでサラダを食べた頃の思い出にひたりながら、もう恋なんてしないなどという強がりを言うのはやめようと考える作者が描かれている。
… だめだ。玄人筋から選択肢の神とよばれてるオレさまにも正解がつくれない。
ひとつ言えるのは、かりに正解を書けたとしても、けっこう野暮な作業だということだ。
ひょっとして、国語の授業は、一人一人の脳裏に広がる豊かなイメージを、狭く小さく限定するという性質があるのだろうか。
いやいや、そんなことはない。イメージをふくらませるためにこそあるはずだ。