水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

1月8日

2013年01月08日 | 学年だよりなど

 

学校も始まった。
 体育館で始業式、そして全国選抜への出場を決めた、テニス部、卓球部、少林寺部の壮行会。
 教室にもどり、実力テスト。試験監督中に、三学期分の予習はだいたいめどが立ったぜぇ。

 

 1学年だより「新年おめでとうございます」
 
 冬休み中に読んで最も心動かされた本は、平田オリザ『幕が上がる』という小説だ。
 主人公は、北関東の高校に通うさおり(高橋さおり)。
 高校2年の秋大会が終わり、3年生たちが引退したあと、部長を務めることになった。
 他の4人の部員と話し合って「地区大会突破、県大会出場」を目標に掲げ、新体制での活動をはじめた。
 とは言え、顧問は演劇については専門外の先生で、自分たちでなんとかしていかねばならない。
 新体制になってからの寒い季節、みんなで基礎練習などにとりくんでみたものの、運動部のように練習試合があるわけではないので、実力がついているのかどうかの実感がわかない。
 日が経つにつれて、部員のモチベーションも目標を決めた時ほどのものではなくなってくる。
 新年度を迎え、さしあたり新入部員を確保しなければ、5人のままでは出来ることがあまりに限られてくる。
 同時に、三年生になった3人は、自分たちの進路についても考えなければならない状況になっている … 、といった、みなさんにとっても人ごととは思えないであろう設定のお話だ。
 そんな彼女たち(男子部員は2年の1名だけ)の転機は、新任で赴任してきた美術の吉岡先生が、大学で演劇をやっていたことを顧問の先生から聞いたときだった。
 「副顧問になってほしい」と頼みに出向いたさおり達を、吉岡先生はコーヒーをいれて迎えてくれた。新入生オリエンテーションでの、さおりたち演劇部のパフォーマンスを、吉岡先生も興味をもって見ていたようだった。
 毎日じゃなくてもいいから練習を見てほしいと言うさおり達にこう答える。


 ~ 「美術部のこともあるし、新人だから、いろいろ研修とかもあるのね。 … まず、私も高校演劇 のこと、少し勉強してみるよ」
 「ありがとうございます」
 「大会があるんでしょう?」
 「秋です。秋までに、頑張りたいんです。地区大会で三番以内になって、県大会が目標です」
 「何だ、小っちゃいな、目標」
 「え?」
 「行こうよ、全国大会」(平田オリザ『幕が上がる』講談社) ~


 その夜、インターネットで吉岡先生の名前を検索したユッコ(演劇部の看板女優)は、彼女が学生演劇界で相当有名な存在だったことを知る。
 二人のスタッフ希望を含め7人の進入部員を迎えることができ、計12名にふくれあがった演劇部の挑戦がはじまった。

 

 生徒さんにも紹介したいと思った『幕が上がる』だが、演劇部の先生的な方には薦めにくい本のような気もしてきた。「よく書けた小説だよね」って素直にほめないんじゃないかな。
 細かいところを指摘して、こういうところが事実と違うとか、ほんとはこんなテンションじゃないんだよねとか、この吉岡先生て存在はありえないとか、著者は小劇場のことわかってんのかな(さすがにそれはないか)言う人がいるようで。
 でも、顧問とかじゃなく、プロとしてお芝居にかかわっている人は素直に読んでくれるかもしれない。いや、読まないか、役者さんは。
 じゃあ、誰が読むの? お芝居の本当の当事者じゃなくて好きな人。高校の部活に関わっている人。青春時代へのあこがれと喪失感を感じることのできる人。なるほど、今の自分にはハマる要素がすべてある。
 高校時代の自分が読んでたら、どうだろう。演劇部を一回だけのぞきにいったり、福井市文化会館でやってた大会を見に行ったり、つかこうへいを愛読するくらいには芝居に興味があった高校時代だが、何かに対して素直にがんばるということ自体が一番できない時代だった。だから、たぶん … 、いやだからこそ昔ものめりこんだかもしれない。そういえば、あのころ没頭した「赤頭巾ちゃんシリーズ」みたいな本が、今はないな。

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砂漠でサーモンフィッシング

2013年01月07日 | 演奏会・映画など

 渡まち子さんという映画評論家のブログをよく読ませてもらっている。
 昨年のワースト映画日本編で、このおれさまがベストに掲げた「篤姫ナンバー1」が入っているではないか。最高のB級作品だったのに。
 渡さんが高評価だった「砂漠にサーモンフィシング」を先日新都心で観たが、よかった。
 イエメンの大富豪が、砂漠で鮭釣りをしたいという突飛な望みを実現しようとするところから話は始まる。
 エージェントを通じて依頼を受けたイギリスの水産学者フレッドは「不可能!」と一蹴するのだが、中東情勢の悪化に伴う国家戦略との関係で取り組まざるを得なくなったり、間に入ったコンサルタントのお姉さん(エミリーブラント・ちょー魅力的)の働きやらで、あとにひけなくなり、また大富豪の財力もあいまってかぎりなく実現に近づいていく。
 大富豪のシャイフ(ほりの深い、いかにも中東のイケメンさん。しぶい)は、決して酔狂でこの計画を企てたのではないことがだんだんとわかってくる。
 学者フレッドに、シャイフが語る。
 「われわれは神をたたえて生きている。しかし私は人を称えたい。砂漠の多いこの国で、これだけのことがやれると人々に知らしめたい」
 「人を称える?」
 「そう、その傲慢さをね」
 かっこよかった。
 人の傲慢さ。たしかにそれこそが、この世をつくっているのだ。
 その傲慢さを自覚しながら、何事かを成し遂げようとするのが人間の姿だ。
 思えば、傲慢であることの自覚を失っているのが、今の日本人といえるのかもしれない。
 フレッドとエミリーブラントの関係が仕事のパートナー以上のものに発展しはじめると、ストーリーにせつなさも加わっていく。
 終わり方には不満もあるけど、こういう作品をしみじみ楽しめるくらいには大人になったなと思えた。

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新人戦

2013年01月06日 | 日々のあれこれ

 新人戦行ってきました。会場までおこしいただいた皆様、応援いただいた皆様ありがとうございました。
 結果は銅賞でした。ここから、どこまで伸びることができるのかが今は楽しみです。
 また明日から一歩ずつすすんでいきます。今後ともよろしくお願いします。

 午前中に1時間ほど合奏し、楽器を積み込み、さいたま市文化センターに向かう。
 道がすいてて、こんなに近いのか、さい文! というぐらいで着いた。世間は、お正月明けでのんびりする日曜だったのかもしれない。こちらは仕事だけど。
 中学校さんの演奏を少し聞いてから楽器をおろし、集合場所に並んで、「時間なので移動してください」と係の生徒に言われて動き始める。
 夏のコンクールのように、プラカードをもった子が先導してはくれないのだ。
 これでいいんじゃないかな。打楽器も大型のものは共通だったから、移動や入退場が楽だし、ステージ係の先生もいなかったので、前の団体が終わったのをみて、じゃ行こうかと入場した。
 そして全体の進行は時間通りにすすんでいく。夏もこれでいいんじゃないかな。
 絶対にそうはならないけど。
 演奏の方は、とにかく最後までみんなでたどりつきたいというのが、正直な気持ちだった。
 高位の成績を望むなんておこがましい実力であることもわかっていた。
 万が一のため3月30日のオール関東新人戦の日はあけてあったが、関係なかった。
 1月の段階で、夏のコンクールのステージで演奏でき、しかも5人の先生方の講評までいただけるのだから、自分たちだけでやろうとしたらお金がいくらかかるかわからない。
 群馬県、山梨県からの参加校さんも、もとはとれてると思う。
 しかしこの両校は実に充実したサウンドだった。人数はともにそんなに多くないが、しっかり楽器をならしていて、審査結果をみるかぎり、もっと上位でもおかしくない演奏だったと思う。
 まあ、しかし頂点をうかがう学校さんというのは、1月の段階でここまでの演奏ができるのかと、大宮高校さんの演奏を聞きながら思ったものだ。埼玉の中堅といわれる位置にいる高校さんとの差も大きい。
 きっと、その差の大きさを感じて、他校さんもがんばることだろう。
 外に出て演奏することを億劫がってはいけない。今年は出稽古力を高めよう。

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顧問力

2013年01月05日 | 日々のあれこれ

 午前中は3年生の講習があるので教室でパートやセクションでの練習。
 午後は、入場練習、2曲通してみて、録音して聞いて、再度直しという練習。
 久々にOBが何人か来てくれたので、10秒だけぐちってから、最後の合奏。
 本番が夕方なので、明日の午前中にけっこう練習できるのがありがたい。
 しかし、明日は全体の終了時間が20:20を予定している。群馬や山梨の学校さんも参加しているが、帰りは大丈夫なのだろうか。いろんな意味でタフな大会だけど、だからこの時期に参加するのは辛いなと昨日は思ってしまったけれど、そして一日や二日で急にうまくなったりはしないけれど、やっぱり無理してでもがんばろうと今日は思った。
 とりあえずやろうと言えるのは顧問力の一つじゃないかと思う。楽観力とか笑顔力ということもできるかもしれない。その点においては、こんな自分でもいる意味はあるはずだ。
 あと、その部活の競技・ジャンルに対する専門性はあった方がいいに決まってるが、専門性が足りない分は、だんどり力やら、学び力でかなりカヴァーできる。
 ものすごい専門的な力を顧問の仕事として発揮できない場合もあるけれど、専門力はやはり大きい。
 『幕が上がる』の吉岡先生は、教員になって一年目だが、演劇についての力は比類ないものだった。
 自身がすぐれた役者であり、同時に自分や自分を取り巻く環境を客観的に見る目ももっていた。
 だから、役者としての生徒達に何が足りないのかをすぐに見極め、演出家やスタッフとしての生徒達にも、何が今やるべきことかを的確に指示することができた。
 吹奏楽の世界でも、教員になってすぐにコンクールですばらしい結果を出す先生がいるから、そういう意味でも吉岡先生のような存在はリアルに感じた。
 また『幕が上がる』話になってしまったけど、ほんとにこの作品についてならいくらでも語れる。

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1月4日

2013年01月04日 | 日々のあれこれ

 日本文学史上に燦然と輝く、高校部活小説のベスト3(2013年春現在)を発表したい。
 正統派部門では、佐藤多佳子『一瞬の風になれ』(陸上部)、誉田哲也『武士道シックスティーン』(剣道部)、平田オリザ『幕が上がる』(演劇部)の三作。初めての小説でこれだけのものが書ける平田氏はすごいと思う一方、平田氏だから書けた作品とも言える。
 ついで広義の部活小説に目をはせ、裏ベスト3として次の三作をあげたい。
 室積光『都立水商』(水商売)、須藤靖貴『俺はどしゃぶり』(川越市郊外の男子高校アメフト部が舞台)、朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』(映画、バレー、野球、吹奏楽、ソフトボール、帰宅部)。

 さて、練習を再開したが、あさって本番ていうのは冗談ですか? という合奏になってしまった。
 どうしよう。
 『幕が上がる』の吉岡先生のように、何をすべきかを的確に把握し、やり方を示せる顧問であったなら、もっと効率よく上手にしてあげられるのかなと思う。
 しかし、なげいていても仕方がない。顧問、部員ともに現有の力と置かれた環境のなかでできる限りのことをするしかないのだ。明日もがんばろう。

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本年もよろしくお願いします

2013年01月03日 | 日々のあれこれ

 新年おめでとうございます!

 明日(4日)から練習を再開し、

  1月6日 埼玉県吹奏楽コンクール新人戦@さいたま市文化センター 17:15演奏
  1月13日 ニューイヤーコンサートin南古谷@東邦音大グランツザール 15:40演奏
  2月3日 川越市合同音楽祭@川越市民会館大ホール 時間未定

 と本番が続きます。そして

  3月24日 第21回定期演奏会@川越市民会館大ホール 15:00開演

 が今年度の集大成になります。
 ぜひみなさまでご来場ください。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします(_ _)

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