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異分子の彼女−腕貫探偵オンライン 西澤保彦
書評誌で取り上げられていた一冊。知らずに購入してしまったが、本書は、市役所の相談窓口の職員が市民の困り事や悩み事をスッキリ解決するという安楽椅子探偵のような体裁のコンセプトで10年以上続いている人気ミステリーシリーズの最新刊だった。これまでのシリーズ作品を全く読んでいないので、設定などが分からなくて大丈夫かと読む前は少し心配だったが、コロナ禍でオンライン窓口に変更されていたり、これまでに登場したワトソン役のような脇役が全く登場しないなど、設定や枠組みが一新となったらしく、これまでのシリーズ作品未読ということを全く気にしないで最後まで読むことができた。内容については、市役所の相談窓口に持ち込まれる事件なので軽い日常の謎かと思ったら、収録された3つの事件とも複数の死者が出る凄惨な殺人事件。しかも事件はいずれもかなり複雑怪奇かつ猟奇的だし、大半の部分が相談者の目線で語られていていて情報が限られているので、相談者が犯人ではないということくらいしか拠り所がないという難事件ばかりだ。少し積み残された謎があるように思えるし、犯人の不可解な行動について「パニック状態だった」で済ませてしまっているところもあるが、推理の見事さと真相の意外性抜群のエンターテイメント小説だった。(「異分子の彼女−腕貫探偵オンライン」 西澤保彦、実業之日本社)
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