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旅するカラス屋 松原始
最近立て続けに読んでいる著者の本。本書は著者のカラスを求めて日本全国、海外各国を巡る旅の経緯が克明に語られる。内容は、①カラスに関する学術調査 ②鳥類研究者の集まりである国際学会 ③純粋にカラスの姿と生態を見るための私的旅行という3章立てだが、全て「カラス」に特化した著者らしい内容の一冊だ。読んでいて思うのは、旅の経緯が出会った鳥やその動きなどが実に克明に描写されていること。これは記憶だけでは絶対に無理だと思うので、多分細かな記録をメモしているのだろう。純粋な私的旅行でもそうする研究者魂に脱帽だ。また素人としては、時々カラスの鳴き声を聞くことはあるが、それがどういう種類でどのような動きをしているかなど気にしたこともないし、多分意識的にしっかり見たとしてもその動きの環境に照らした意味とかを理解することは不可能だ。それを世界中の研究者の論文や自分自身の感覚を頼りに推論していく様はプロの技そのものだ。カラスを見つけて大喜びしている記述を読むたび、自分の好きなことを職業にすることの強さや楽しさを感じることができる。なお、これだけ世界各国をカラスだけを目的に旅をしていても、実際に目にしたことのあるカラスは世界に生息する40種のうち10種前後だという。カラスというものの奥深さは正直すごいなぁと感じた。(「旅するカラス屋」 松原始、ハルキ文庫)
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