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答えは市役所3階に 辻堂ゆめ

書評誌で次世代の注目ミステリー作家と紹介されていた著者の作品を初めて読んでみた。ある市役所がコロナ禍の緊急事態宣言で様々な影響を被った人々向けの相談窓口を設置、様々な人がその相談所を訪れて自分の悩みや苦境を語るという連作短編集だ。ミステリー作家ということなので、相談を受けた市の職員である主人公が見事に悩みを解決していくのかと思ったら、あくまで主人公は相談に来た人の話の聞き役に徹し、悩みを抱えた本人が自分のことを話すうちに思いを整理し解決策を見出していくためのわずかなヒントを提供するという展開。悩みに悩んだ状況は、ちょっとそれを聞いただけの他人にが解決策を提供できるほど浅いものではないということだろう。本書の面白いところは、相談に来た人達が立ち直る道筋を見つけたところで終わりではなく、その後に本人が相談員に語らなかった、語れなかった事実を主人公が推理していく後日談のような部分。仕事の機会が減りホームレスになった男性の話では、主人公がその男性が語らなかった彼の職業を推理する。コロナがこんな職業にも影響を与えているんだなとびっくりしてしまった。(「答えは市役所3階に」 辻堂ゆめ、光文社)
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