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時計泥棒と悪人たち 夕木春央

前に読んで面白かった「方舟」の著者の新刊を本屋さんで見つけたので読んでみた。大正時代の日本を舞台に、そこそこ売れている青年画家とその幼馴染の2人が色々な事件を解決していく連作ミステリー短編集だ。いずれの短編も画家以外の登場人物のほとんどが奇人、変人、悪人ばかりというドタバタ要素の強いのが特徴。奇妙な構造の美術館を建て始めた年老いた富豪、立ち聞きばかりしている家政婦さん、身代金の金額が曖昧な誘拐犯からの脅迫状などに絡んで、意外な結末、どんでん返しが色々仕掛けられていてどれも楽しかった。前作の「方舟」のようなあっと驚く大どんでん返しに比べると小粒な感じだが、短編集としては粒揃いだし、短編毎に色々違った魅力を感じることができるのも読者としてはむしろ有り難い。これからも新作をフォローしていきたい作家だ。(「時計泥棒と悪人たち」 夕木春央、講談社)
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