玄冬時代

日常の中で思いつくことを気の向くままに書いてみました。

岩波新書「巻末挨拶」―2-

2021-10-19 11:20:26 | 

私の調べた範囲では、①1938・11(刊行挨拶)②1949・3(再刊挨拶)③1970・3④1977・5⑤1988・1⑥2006・4、というように「巻末挨拶」は5回変わっていた。決して定期的ではなく、不定期に変更している。

私が一番興味があるのは、「先の戦争をどう捉えているか」ということである。

①の刊行の時は言うまでもなく戦争賛歌であった。王道楽土・国体明徴・八紘一宇の言葉が躍っていた。日中戦争勃発後の世上を考えれば、こう書かざるを得なかったというのが窺える。

②の再刊挨拶に「偏狭にして神秘的な国粋思想の圧制に抵抗し」「いまだかってない崩滅を経験し、…」「平和にして自立的な民主主義日本建設の道はまことにけわしい。」というかんじであった。

これが書かれた年が、1949年と云うならば、その下地には、既に東京裁判は終わり、未だ米軍占領下にあり、天皇の人間宣言も行われ、新憲法も制定されたということが明確に伝わってきた書きぶりであった。

それから、約20年を経て、1970年に書き換えられるのだが、ふと何故1960年前後に書き換えられなかったのか、という疑念が生まれてきた。

ここで紙幅の都合で、次回へ

岩波新書の1938(昭和13)年の「刊行挨拶」は家には無くて、図書館から借りて来ました。

コメント (1)
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