先日、佐藤栄作の「沖縄返還密約」をあばいて、逆に男女の「情を通じて」の卑劣な情報ソースというレッテルを張られ、果ては報道界から追放された西山太吉が逝った。
彼は功罪半ばの儘に迷いながらも、生涯新聞記者であろうとした。
デイリー新潮で彼の記事を読むと、不思議と女性を利用しての卑しい情報獲得が強く映し出される。
数年前に読んだ澤地久枝の「密約」では、42歳の女と41歳の男の有り触れた関係との割切り方、そして、密約を国会で糾弾した横路孝弘社会党議員が資料そのものを政府に提出した勇み足により、情報ソースの女性が特定されてしまった。
新聞記者として、情報源を守れなかった悔恨が西山氏の矜持を萎えさせたのがよく理解できた。
男女関係か、虚偽政策か、どちらが真実なのか、いや、どちらも事実なのだろうが、政権とマスコミが社会を卑近な不倫関係に誘導させた疑いは強く残る。
岸・佐藤・安倍の政権運営は「国民を騙す」ことを当然としているが、この血脈が一貫して日本の近代化の足を掬っているのに気付く。
西山氏の強引さや横路議員の軽はずみが、結果として、この国の報道の民主化に軛を掛けてしまったのが悔やまれる。
西山氏は情報源としての女性を傷つけてしまい、悔やんでも悔やみきれぬ儘に卒寿を超えても、その苦から逃れられないことを悟りつつの一人の旅立ちだったのだろうか。