今更・・・・と言われそうですが。
池田理代子作品です。
1972-1973年。マーガレットコミックス。
前にも書いたと思いますが
私は「別冊マーガレット」派だったので、週刊マーガレットに連載されていた
「ベルサイユのばら」をリアルタイムで読んだ事はありません。
タイトルは知ってました。
池田理代子という漫画家も。
「章子のエチュード」という作品を読んだ事があって、印象に残っていたんです。
だってこれ「幼妻」の話で
確かヒロインの章子は16歳で、一回りも違う男性と恋に落ちて結婚するという・・・
「奥様は18歳」とか、いわゆる「幼妻ブーム」でもあったんでしょうか?
だけど、「章子のエチュード」はやたら生々しかったなと
じゃあ、どこで「ベルばら」を知ったかといえば、宝塚です。
ある日、学校から帰ってテレビをつけたら「劇場中継」をやってて
ランバール公の奥様が「まるでニンフのよう」とおっしゃり、上手から
白いドレスを着た安奈淳オスカル様が登場した・・・あたりから見て。
感動のあまり号泣し、再放送時、そのほか雪組や星組版は
テレビの前にテープレコーダーを置いて録音しセリフを全部覚えるという
毎日。
無論、原作も読まなくちゃ。
でも当時、コミックスは1冊320円。10冊セットは3200円。
全部は買えず、バラで買うにしても1巻から売ってるわけじゃなくて。
本当にバラバラの巻で全部買ったんです
小学生の情熱はすごい。
1巻と最終巻では絵ががらっと変わってまして。オスカル様が
どんんどんかっこよくなっていくことにウキウキしておりました
この本がすごいのは、
歴史を題材にした
フィクションとノンフィクションの間に齟齬がない
というレベルの高さです。
当時、少女漫画といえば「恋愛」もの。
結婚に突き進んでいく話がほとんどでしたから、そこにいきなり
「フランス革命」ですよ。
今じゃ、誰でも知ってるフランス革命の話。
でも、当時は『フランス」といえば「♪オーシャンゼリゼ♪」ってな具合で
マリー・アントワネットの名前は知られていても、いわゆる「革命」を知る
小学生はいなかったろうなと。
池田理代子自身も、フランスに行った事がなく、資料だけでリアルに描いたと
言ってますし・・・・海外旅行もメジャーじゃなかったころ、宮殿の絵を描くだけで
大変だったろうなと思います。
そして、この漫画のすごいところは
「小学生でも歴史がわかる」というほどのわかりやすさですね。
のちに「オルフェウスの窓」(サラエボ事件、ロシア革命)
「エカテリーナ」「ナポレオン」など、数々の歴史漫画を描く池田理代子ですが
どれも難解で・・・・そういう意味で「ベルばら」は下手な教科書よりよっぽど
わかりやすかったと言えるでしょうね。
フィクションとノンフィクションの間に齟齬がない・・・・というのは
アントワネットとフェルゼン、オスカルとアンドレの関係が本当に自然である事。
ロザリーとポリニャック夫人の関係、ベルナール(デムーラン)とロザリー
サン・ジュストの関係などが、違和感なく描かれている点がすごいです。
そして、オスカルの思想は非常に「保守的」です。
そもそも左とか右とかいう言葉はフランス革命から始まったと言われています。
オスカルは衛兵隊に属し、バスティーユ攻撃にも参加するバリバリの
革新派に見えますよね。
「ヌーベル・エロイーズ」やジャン・ジャック・ルソーなどを読みふけり
父に危険思想を持っているのではないかと思われたりする。
宝塚歌劇では、オスカルはすっかり「ウーマンリブの象徴」にされてしまい、
ブイエ将軍が「たかが女のくせに」といえば
「女だって生きる権利はある」と反抗する思想家にされておりますが
原作のオスカルは、どこまでも「国」の為に尽くす戦士です。
ベルナールが「革命が起こるかもしれないから外国へ逃げろ」というのに
オスカルは「私はフランスと心中するぞ」と言い放つ。
こんなセリフ、現代のシールズさん達は絶対に言えませんよね。
オスカルが世代を超えて愛されるのは、その思想の根底に「国家愛」が
あるからではないかと私は思います。
その後、小学校6年の時、小さな本屋でツバイクの「マリー・アントワネット」を
見つけたときは嬉しくて、とっても分厚い本で読み切れるかどうか心配でしたが
買ってしまった記憶があります。
とっても面白かったですよ
これをきっかけに「王室」「皇室」「歴史」に興味を持ち、今に至るのですが。
ただ、今時の女の子達に「ベルサイユのばら」はちょっと難しいかもしれませんね。
非常に文章が多いし、「古典」の引用も多い。
「ベルばら」を読むという事は、ギリシャ神話や星座の話を知ってないと
ちんぷんかんぷんだったりしますし。
先日、同僚(あの55歳)と「ベルばら」の話をしたのですが
彼女に
「ベルばらって・・・・アンドレ死ぬよね?オスカルも死ぬの?」と言われて
かなりショックでしたーーー
さて、本編の「ベルサイユのばら」を通読したら、数々の「外伝」を読んでほしいです。
1995年ころでしょうかね。
主役はオスカルの姪であるル・ルー・ド・ラ・ローランシー。
ル・ルーは「ベルばら」10巻で大活躍をするのですが、その性格を
そのまま探偵ものにしちゃったという。
絵はひどいけど、ストーリーは抜群に面白い。
池田理代子は時を経て、ストーリーテラーになりました。
そしてっ
2014年。
絵の劣化はどうも防げないなとは思うのですが、
「外伝」よりは随分まともになって・・・・(アシスタントがいいの?それとも
外伝はアシスタントなの?)
最初はジェローデルが主役と聞いて、読む気にならなかったのですが
「エピソード3」でフェルゼンとマリー・テレーズのすれ違いを見て涙。
さらに、「エピソード4」でめちゃくちゃ綺麗になったル・ルーとアランの出会い。
ファンにはたまらないです。
あのル・ルーが・・「オスカルお姉ちゃま」と変わらないほど美しくなるとは
血は争えないなあ。しかも性格がオスカル様みたいで。
このエピは続けてーー
マリー・テレーズも亡きお母さまそっくりで。
うっうっうっ・・・・・・・と泣ける作品に仕上がってます。
そしてっ!!
2015年
表紙はオスカル様でも、あまり出てこない。
相変わらずジェローデル様なんですが、なんとフェルゼンの妹
ソフィアと・・・・?
そっか。そういう出会いもあるよなと。
二人とも奥手で思慮深くて。でもよき茶飲み友達になれるかもって感じですね。
ジェローデルは革命を生き延びることができるのか?
11巻で、革命時、亡くなっていたジャルジェ将軍の奥様。
実はロレーヌ公国の貧乏貴族の娘。
祖父は高名な画家で、そのお蔭で貴族になったものの、
お金の為に結婚しなくてはいけない羽目に。
そこに彗星のごとく登場するのがレニエ・ド・ジャルジェ将軍。
将軍の猪突猛進の恋物語も面白いですが
彼とロレーヌ公の出会いの意味深さが本当に秀逸。
オールドファンも新しいファンもぜひぜひ最初から読んでみてください。
(決して私の同僚のように「あの小難しい漫画ね」なんて言わないで)