千秋楽を映画館で見て来ました。
あまりいい精神状態ではなかったので、正しく見ることが出来たかどうか。
私はどうしても望海風斗が退団してしまうという実感が持てなくて、回りの人のようにしくしく泣くことは出来なかったんですけど。
fff(フォルテシシモ)
上田久美子さん、また名作を生んで下さってありがとうございます・・・という感じです。
とはいえ、非常に難解だと思いますし個人的に「よくまあ、ベートーベンの生涯を切り取って芝居にしたなあ」と感心するばかりで。
上田先生の才能ってすごすぎるなあ。
この物語におけるベートーベンは非常に自己中心的でわがままで、思い込みの激しい勘違い男です。
だから女性を好きになっても、相手がどう思って付き合っているかがわからない。
わからないから裏切られたと思ってしまう。
自信家で、自分の音楽を「革命」だと言います。
勿論、それはフランス革命により、オーストリアのハプスブルク家等ヨーロッパ全体の王室が不安に陥っている時であり、庶民の中の庶民であるベートーベンは、音楽によって革命を引き起こし、自由と平等を勝ち取りたいと思う。
ナポレオンのように。
そういう流れを、天から神様が見ているというのも面白いし、モーツァルト、ヘンデルらが天国の門から入れない理由が「音楽を神から人間の手に移したから」という解釈も「へえ」と思ってひたすらすごいと思うばかり。
真彩希帆演じる「謎の女」は基本的に「不幸」という名前の女ですね。
一生懸命に「死んだ方がいいわよ」というけど、その度に立ち上がるベートーベン。
そしてこの謎の女は耳が聞こえないベートーベンの耳役でもあります。
最後だし、もう少しラブラブな役がよかったなと思いつつも、ストーリー的にしょうがないか。
ベートーベン役に子役と青年時代がいることにも驚きました。
それぞれがいい味を出しています。
憧れのゲーテに会うけど、色々指摘されて落ち込んだ先にロシアのナポレオンがいて・・・ここから先の交響曲への流れは神がかり。
勿論、オープニングも神がかっていましたが。
人は不幸になる為に生きているのか・・・そう考えると落ち込むけど、その先に「歓喜」がある。つまり何をどうやってもめげないベートーベンという姿があるわけですね。
ラストの第九は「国境のない地図」以来の歌声でした。
望海風斗のどこまでも強く生きる姿勢と声に魅了され、真彩希帆の天使のような声に癒され、そして彩風咲奈の若々しいナポレオンもかっこよく、彩凪翔のゲーテは全てを見抜く目をもっていましたね。
でも私の目を引いたのはやっぱり朝美絢で、いつの間にか骨太に生まれ変わり、若い頃から歳をとっていく過程の声音の変わり方が素晴らしいと思いました。
勢いだけでなく、本当の意味で自分を見せることが出来るようになったんですね。
雪組の最強の二番手になりそうです。
シルクロード盗賊と宝石
正直「fff」もすごく重くてずしっと来る作品だったんですよね。
だからショーはもう少し軽くてもいいかなと思ったんですが、これまた芝居に負けないくらい音楽も衣装も重い。
コスチューム物。それもシルクロードは確かにロマンがあるけど、その割にはシルクロード感があまりないショーでした。
しかも、どこが「盗賊と宝石」なの?
ストーリー性があるのかと思って期待してたんですが、結構ぶつ切。
さらにちょっとだらっとした感じもあり。
真彩希帆はここでも謎の女っぽくて、せっかく青い宝石をぶら下げているのに全然効果がない。
宝石にまつわるあれやこれやというと「ソロモンの指輪」を思い出すのですが、ああいう神秘的な感じはなかったと思います。
青い宝石が青いバラになるなんて・・・うーん・・・燕尾服はよかったんだけどな。
それでも退団者の方々がみなよい場所で踊ってくれたので個人的に満足です。
あ、それと手錠のシーンは天海祐希へのオマージュですよね。
突然・・・という感じがしていやに長いシーンだなと思ってしまったのですが、既視感があり「そっか」と納得しました。
私が望海風斗と出会ったのは花組の「復活」でした。
新人公演を見ていないし、花組はあまり興味がなく「太王四神記」でも「虞美人」でも顔を見ている筈なのに記憶に残っていなかったんです。
でも「復活」はたまたまいいお席で見ることが出来て、望海風斗の何というか・・・他を圧する表現力に一目で惚れてしまったわけです。
私はこういう優等生タイプは好みではない筈なのに。
歌声が好き、演技力が安定。華があると・・思っていたら雪組に組替え。
雪組のチケットはとにかくとることが出来なくて、ファンなのに見るチャンスは本当に少なかったです。お茶会に参加出来たのがせめてもの幸いでした。
こんなにご縁がない人だったんですけど、映画館で見る彼女は雪組において光り輝いていました。もうだいもんなしでは世も日も明けないといった感じで。
トップになったらどんな大物になるんだろう。そして相手役は誰なんだろうと思っていました。
そしたら星組から真彩希帆が組替えになってやってきて。
最初は先生と生徒みたいに見えた二人が、作品を重ねるにつれてよいパートナーに進化していく過程を見ることが出来たのは嬉しい限りです。
真彩希帆は元々可愛い娘役で、我が家の姫などは「ぜひ礼真琴と」と思っていたので、組替えになった時は怒るわ嘆くわで「だいもん、わたしのきいちゃんを不幸にしたら許さない」とばかりに、「琥珀色の雨にぬれて」の地方公演を見に行ったのでした。
望海風斗と真彩希帆の相性のよさにちょっと安心したのか、次第に何も言わないくなりましたけど。
「ひかるふる路」の時は多少硬くなってた真彩希帆。
でも「ファントム」の頃には素晴らしいハーモニーでゴールデンコンビになっていました。望海&真彩の代表作と言ったらやっぱり「ファントム」になるのではないかなと思います。
最初は先生役だった望海が、次第に成長してくる生徒に恋をしていく・・そんな感じでしたね。望海も「さなぎが蝶になるように」と言っていましたが、真彩希帆の変わり方はよい意味で劇的でした。
望海風斗に本当の意味で「まいった」と思った作品は「ドン・ジュアン」でした。
スカイステージでした見てないですが、始まったが最後まで目を話すことが出来ない。
息が出来なくなるほどのド迫力で、まるで「ドン・ジュアン」の為に生まれて来たんじゃないか?と思う程でした。
フレンチミュージカルとの相性もよかったんですね。
勿論、望海風斗と言えば、その父性的な優しさや包容力が売りで「星逢一夜」の源太、
「壬生義士伝」の吉村、そして「アル・ァポネ」でしょうか。
家族を守る為に一生懸命に生きる役がとても似合う人でした。
望海風斗も真彩希帆もとても優等生で歌唱力も演技力も抜群ですから、今後は心配していません。どんな舞台でも大輪の華を咲かせると私は信じています。