何日経過しても武道館の興奮が収まらないのであえて書かせて頂きます。
とはいtっても、しつこく書くけど武道館は決して音楽向きの場所ではないです。
アリーナ席と1界のスタンド席以外は舞台がほぼ見えなくなるので、礼真琴がトロッコに乗って動いているシーンや、舞台上の群舞の意味も、双眼鏡だけでは読み取れない。
ただ、会場がくるくると色が変わっていく、炎が燃え立つ、紙吹雪がこれでもかっと言う程に飛び出す、みんなのブレスレットが勝手に色を変える。
そういう意味では現場で見てよかったなとは思います。
しかしながら、いわゆる「アリーナ席」はOGが沢山いました。その理由は恐らくですが、
「礼真琴で武道館を埋める事が出来るか」という問題だったと思います。
アリーナ席を用意するのでと呼んだOGは本当に沢山いたし、彼女達がかぶりつきで見る事が出来た事に文句をいうつもりはありませんが、いわゆる、コツコツお金を貯めて、ファン歴も長いファンを「貢献度」によって差別化するというのは、ちょっと嫌、許せないなと思います。
当初は余裕でチケットが取れるようなことを言いながら、一か月前には「チケット難」になり、結果的に上手下手に追いやられたファンたちはどの層なのか。
毎回目にするこういう光景が、少しずつ不信感へ繋がるなと思いました。
この武道館は配信で見るのが最も正しかった。でなければアリーナ席か。
とりあえず私が見た千秋楽はブルーレイになるようなので、この際、ファンであってもなくても、何なら宝塚を見た事のない方にもぜひ見て頂いて、それくらいの価値はあると思います。
総合演出を手掛けた太田高彰氏による会場の雰囲気作りは抜群で、それはもう宝塚じゃなくて、様々なバンドやアイドルのコンサートのようで、さらにその中でも非常に上質で迫力あるステージ作りだったと言えます。
今まで武道館でコンサートを行って来たのは二人。
真矢みきと柚希礼音でした。
真矢みきが武道館でコンサートを行うと聞いた時の驚きと「席が埋まるのか?」という心配は今とすっかり同じでした。
でも真矢の生み出した世界は、あの当時の宝塚ではありえない程現代的でかっこよかったと思います。
柚希礼音の場合も、ダンス力を生かした素晴らしい舞台だったと思います。
しかし、今回のANTHEMはまずテーマがそこにありました。
「応援歌」を意味するANTHEMという言葉を軸に、ファンに対して前向きになれるような楽曲だけを集約して選びました。
私は、礼真琴の最初のコンサートである「VERDAD」を見ています。
まだコロナ禍で会場はアンフィシアター、これまた円形の不思議な劇場の、ありがたい事に一番うしろだけど真ん中から見る事が出来たのです。
前半は星組の歴史を振り返るような演出。後半はJ-POPやミュージカル曲に特化して進みました。
宝塚らしく、おしゃべりも多かったなと思います。
でも、カラオケボックスをイメージした背景と礼真琴が歌うAdoの相性のよさに驚いて、「礼真琴にぜひJ-POPを歌って欲しい」と思いました。
その願いが叶って「REACH」というアルバムが出たんですけど、個人的にはちょっと期待外れ。もう少し最近の曲を入れて欲しかったなと。
とはいえ「ギラギラ」「勇者」などは本当に素晴らしい出来で、退団したらシンガーになってくれたらいいのにと思いましたよ。
だから今回も「VERDAD」のようなものになるのかなと予測していたら、とんでもないものだったという話です。
最初から照明は勿論レーザー光線飛びかう中で、EXSILEやそれ系の人達が表現できない「真っ当な歌唱力と圧倒的なダンス力」でガンガンと「ANTHEM」を歌い出すわけですから。
見た目は勿論いいし、星組のメンバーの個性的といったらない程で、それなのになぜかものすごくグループとしてまとまっています。
礼真琴のオーラが組子に放射状にのびているかのような錯覚を起こさせるものでした。
「オーリバル」など日替わりのメニューでは、その度に照明が変わり、当たり前ですが曲のイメージを変えていく・・そして老人ですらもノリノリにならざるを得ない程のパワーに圧倒されていきました。
曲を選ぶ→順番を決める の流れがものすごくよくて、違和感も変化もわからず、一瞬にして世界観が変わっていく感じでした。
ひろ香祐がマイクを担当したトークで語られた内容は、宙組だったらきっとパワハラと言われるのではないか?と思う事もありましたし、でもそういう事があったから下級生が育ってきたのだと思うと感慨深いものがありました。
組において下級生が育つ理由は二通り。
ものすごく目端が利いて面倒見のいいトップ
水夏希や北翔海莉がそういうタイプで、すれ違いざまにアドバイスしたり、楽屋で指導したり、厳しい事もいいつつ褒める事も忘れない、飴とムチを使い分けるタイプ
自分が何も出来ない事を認めて下級生に委ねるタイプ
真琴つばさや紅ゆずるがこのタイプで、自分の欠点を認め、苦手な事は出来る生徒にどんどん振るおおらかさを持っている。彼らが教える事は常識です。
礼真琴は目端が利いて面倒見がいいタイプです。むしろ、カリスマトップの元では下級生は頼ってしまって育たないというわけです。
そんな人柄を知った所で、「これからはちょっと宝塚の世界に戻りまして」と言われて始まったのが、一つの曲の中に宝塚の礼真琴が関わった作品を織り込んでいくという手法。
そして、それを下級生が実際に衣装を着て担当し、礼真琴と和していく。
これで泣かないファンはいないだろうと思います(私はひたすら関心してたけど)
で、最も素晴らしかったのは「マダム・ギロチン」でこれ以上ない悪役の顔を見せた礼真琴が、そこから「最後のダンス」を歌い、そして消え、そこに暁千星が圧巻のモダン・ダンスを見せて、礼真琴が中央のセリから飛び出すシーン。
「私から憎しみを奪うな」から「栄光の日々」とヅカメロディを紡いだと思ったら、そこからまた一瞬にしてJ-POPへ戻る。
通常だと暗転してちょい時間があって、トークを挟み・・という場面からなんでしょうが、これを省略しても全然問題ないという流れに圧倒されました。
ミセスの「Soranji」は多分、本人達が歌うよりずっといいと思いました。
Adoなどの曲もそうなんですけど、いい曲をさらに綺麗な声で迫力で盛り上げる礼真琴の歌唱力は本当にPOPSに向いています。
最後に「星を継ぐもの」で締め、「THIS IS ME」をアンコール曲に選んだことも、最初から最後までファンを応援し続けてくれた楽曲選びだった思います。
礼真琴とテジェさんの新曲「SOULS」を聞けばわかりますが、彼女は宝塚の域を超えたコンサートを行ったと思います。
これを見た後では過去のどんな宝塚のコンサートを見ても古いと思ってしまうかもしれません。時代の流れにピッタリで、むしろ最先端をいく楽曲が宝塚のトップスターが歌い切ったという意味で、本当に意義深いコンサートでした。
TCAミュージックで「RECH」の中の曲がアップされているので、騙されたと思って一度お金を払って聞いてみて欲しいです。無論「SOULS」も。
退団が惜しまれるな・・・・と。