塗装の剥げ落ちた部分を除いたら、新車のようにピカピカになってトラクターが戻ってきた。
肝心の秋野菜用の畑は八割方出来上がっていたから良いものの、この時期の故障は冷や汗ものでしたね。
もう草刈り鎌のように擦り減って細くなっていたブラウ(鋤)も新品に交換。
いやー、正直なところ、新車の購入も頭にちらつき、カタログまでチェックしていました。
でも、「この先何年出来ると思うの?」なんて慎重派スベルべママの言葉にも・・・・。
納車してきた担当には「もう二、三年使って、身体にも自信が持てたら新しくするよ」なんてお愛想(笑)。
朝食前に一仕事して、食事後納車を待ち、スベルべママに軽トラで先行してもらって、
試運転を兼ねて早速トラクターで山道を登ります。
クラッチを全部交換したので、少し繋ぎが固い。
発進する時は慎重に半クラッチを使わないとなんと、ウィリーで前輪が浮き上がる。
誰も居ない山道を、思い切って大声で歌を歌いながら登ります。
さて、山道を登り切り上の畑部分に到着ですよ。
ここまで来ると、歌はさすがに歌えませんね、人様を驚かせる、いや、笑わせる訳には行かないから。
さて、トラクターで歌った主な歌は、先日大同級会で歌ったこれ。
「下駄を鳴らして奴が来る~ 腰に手ぬぐいぶら下げて~ 学生服に沁み込んだ~
男の匂いがやってくる~♪」が主でしたよ。
そうだなー、歌う前に一言いえば良かったなー、「じゃま」に捧げるなんて。
文字通り、こんな風なバンカラで、みんなに好かれた好漢「じゃま」と呼ばれた男は、
事業の失敗から、バブルのパンク時と時を同じくして、自らの命を絶ってしまった。
小柄ながら頑健な体躯で、ハンマーで殴っても死ぬような奴じゃなかったのに・・・。
中三の夏休みに、何人かで「駒の湯」に遊びに行き、一泊して楽しんだとか(スベルべは欠席)。
その際に、思いつきで登山道をたどり始め、もう少し上、もうすこし上なんて登り、
とうとう山頂まで登ってしまったとか。
越後駒ケ岳の山小屋「駒の小屋」のオヤジさんは、「下駄っ履きで登ってきたのは初めてだ」と絶句したと言う。
そして、あいつ「じゃま」はスベルべにそっと近づいては「おい!ドン!」なんて囁いて笑っていた。
覚えたばかりの「ドンファン」の言葉を使ってみたくてしょうがなかったのだろう。
もちろん、当時のスベルべは当たり前ながら「ドンファン」なんかじゃ有りません。
女の子に付け回されても逃げ回る、純情な少年だったのですから(笑)。
今回も彼「じゃま」が生きていて、出席したらそっと近づき「ドン」なんて囁いたかもしれない。
可笑しなもので、中学卒業から五十年も経つと「ゴメン、あだ名は思い出したけれど、本名が・・・・」
なんて、謝りながら、名札を確認する奴も居るんだもの(大笑)。
はてはて、またも話がトラクターから脱線してしまったけれども、これにて終り。