37歳で病死した不世出の俳優 市川雷蔵 彼には{演じること}の美学があった
ファンの会報などに 寄せた文 自分の近況 これからのこと
収録されたプライベートな写真も興味深くはあるが
しかし心を打つのは 雷蔵の長男の「父の記憶~まえがきにかえて」である
―私には父についての記憶が全くといっていい程ない 父は私が五才の時この世を去ったのだから 実質五年間 生活を共にしたことになる ― に始まり ―父がどのような顔をするか 何を喋るか見てみたいと 私は痛切に思うのです―
そこには 亡き父への希いがある かなわぬと知りつつ スクリーン上でしか会えない父親 その生身の姿に触れたかったと
この素な感情が発露した文のあとでは雷蔵の遺した文章は 生真面目なスターであろうとした 若い 思考の堅さや 気負いなどが見え
そう 雷蔵は若かったのだと あらためて思います そして もし彼が現在 命あって この若き日に書いた文章を読み返したら 何というだろうか 何を思うのだろうか それを知りたい気がします