早朝 一郎は宮殿の犬を連れて走っていた
口を開けば脳天気 でも見掛けとは違う人間らしい
飛び込み 探り 油断をさせる
何を使っても 何を犠牲にしても
それが国の為だから
ダーラは目を閉じた 国に忠誠を
謀殺された父親
どうしても やらなければいけないだろうか
そして全く唐突にカシムは告発された
インタビューを始めたアメリカの放送局 生中継の番組内でタリア王女は泣き出し その涙のわけを聞かれ―カシム王子の婚約者になるのだと互いを知ってから公表するのだと言われ 乞われるまま体も許し お腹に赤ちゃんもできてるのに― そう泣き崩れてみせた
事の真偽はともかく―と内務大臣サラディンは言う「タリア姫の国に対してもカシム様を王子のままにはしておけませぬ」
で噂の当人は のほほんとしていた ―そういう事なら謹慎します
公務から身を引き 一見のんびりと過ごしている
むしろカリカリしているのは史織であり亜依香だった
一躍ヒロインとなり各国のマスコミに取材攻勢を受け タリアはその度に髪型変え衣装変え
嬉しそうに喋っていた 余りにも連日テレビで カシムの不実を逢った夜 どんな事をしたかまで こと細かに喋り続けるので 逆に 人々は 最初同情していた人間も嫌悪感を抱くようになった
嘘はばれるのだ
カシム王子が 公務で国外にあった日の夜も逢っていた
タリアは言っており その嘘を国民が告発した
待っていたようにカシムの側近が過去のカシム王子の行動を発表し カシム王子の部屋の外の護衛の兵達もタリア姫の話を否定した
更にはタリア姫の部屋に出入りするオルク王子の姿が映ったビデオからの写真も流された
タリア姫は墓穴を掘った
オルクの子を妊娠してしまった事で 焦ったのだろうか