夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

長島槙子著「遊郭(さと)のはなし」 メディアファクトリ―

2008-06-16 10:02:11 | 本と雑誌

長島槙子著「遊郭(さと)のはなし」 メディアファクトリ―
長島槙子著「遊郭(さと)のはなし」 メディアファクトリ―
ダ・ヴィンチ「幽」主催
第2回『幽』怪談文学賞 長編部門特別賞受賞作

赤い櫛を見たならば お逃げなさいまし

ゆめゆめ拾ってはなりませぬ

死にますよ

そんな恐い不思議がたんとある遊郭の物語

怪談話を聞き続けた客も いつしか取り込まれ・・・
ああ こわい こわい

なるほどあるかもしれませぬなぁ―と

しばし異界に遊べる一冊です


「この夜を越えて」―その腕を・一

2008-06-16 01:23:48 | 自作の小説

徹底的に楽をしたい藤三(とうざ)は 佐波と原森を 香瀬の源太郎と阿矢女に任せたのに続き 黒浜を駿(はやお)に任せる事にした

駿とその妻の佐津子に姉娘華奈女(かなめ) 妹娘 古都女(ことめ) 息子の弥太
弟の駒弥(こまや)と祖父になる弥十と あと藤三が選んだ者達が 黒浜へ向かう

茜野の里は かなり寂しくもなったが 若い力も育ってきており 何より藤三は老け込んだり 守りに入る年ではなかった

里の周囲を互いに裏切らぬ人間達で固める

ただ将来 駒弥は茜野に戻ってくる

黒浜で兄の 駿が地固めするまでの応援

駒弥は藤三の相談相手であり 兄弟のない藤太にとっては兄のような存在であった

駿や駒弥達が何とか黒浜に落ち着いた頃 意外な客があった

香瀬の里の理一郎に嫁いだ紅音(あかね)の妹 芙蓉(ふよう)・・・

華奈女と古都女に会いに来たと言う

「わたし 海を見るのは初めてです」
この大きな瞳の娘は随分楽しそうだった

供は十名ばかり―姉の紅音が片付いた後は芙蓉の番で 嫁入りする前に許して貰った自由な旅らしい

「お姉様は自由に好きな相手と一緒になれたのに・・・わたしはつまらない」
そうぷっと膨れる

黒沼の里の隣りの甲森(かぶともり)の里は 紅音が香瀬の里へ行くなら 下の娘はこちらと縁を結ばせようと強く言ってきた

甲森の権蔵(ごんぞう)は四十男 正妻を殺したとかの噂もあるし妾もわんさか

どう考えても良縁とは言えない

黒沼の里は強い兵もおらず―むしろ弱い―荒くれ者揃いの甲森に無理難題押し付けられ・・・泣く泣く 娘を差し出す

いわば人身御供な―

で可愛い娘を哀れに思った父親の明重(あきしげ)がせめてもと 嫁ぐ前の旅を許したのだ

芙蓉の兄春重(はるしげ)の妻に至っては 「いき遅れの小姑が役に立つ場があって ようございましたこと」などと嫌味を言う

気の強い紅音がいては出せなかった言葉だ

芙蓉も活発な娘だし そこそこに勝ち気ではあるのだが やはり嫂には遠慮もあり 姉の紅音のようには 返しきれない

姪達に優しく構う駒弥を見るうち 芙蓉にこんな人が旦那様であったら―と慕う気持ちができたのも 無理からぬ事であった

俗に言う女顔の優男 駒弥は甘さが漂う美男であった

細身だが背は高く よく見れば肩幅はしっかりとある

何里走ろうともへばらぬ体力の持ち主で しかも脚が速い

健脚と言っていいだろう

左ききだが 刀は両方遣う

華奈女に古都女に 妹がいない芙蓉には嬉しい話相手であり ―ずっとここにいられたら―と願うようになる

けれど約束のひと月はじきに過ぎる

この人を好きだ 愛しいと思う気持ちを大切に嫁いでいこう

お父様と約束したもの

頭では判る 芙蓉は自分に言い聞かせる

帰る日が近付くと次第に芙蓉の表情は暗くなっていった

食も細り溜め息ばかりをついている

佐津子はそんな芙蓉を気の毒に思いつつかける言葉がない

娘達より僅かに年上な芙蓉に待つ未来が 明るいものとも思われず不憫がかかる

力関係

戦(いくさ)を避けるのも里を守る人間のつとめ 責任
その重さ

人当たりが良い駒弥は生の感情を余り見せず 何を考えているのか読み難い

だから駒弥が 黒沼へ帰る芙蓉達を護衛して送って行くと言い出した時 やや駿も面食らっていた

「黒沼の里へはまだ行った事がありません
香瀬の里とも縁続きです
見ておきたいのです」そう駒弥は言う

駒弥は見聞を広げる折角の機会だからと 五名ばかりを選んで連れて行く

黒沼に着けば別れだし そう口をきくこともできないのに 芙蓉の心は弾んでいた

あと少し 姿を見ることができる

それだけの事が 泣いてしまうほどの喜びを芙蓉に与えた

海に背を向けて山に入り 緑の中を進んでいく

旅人が休める無人の小屋が 幾里か進むごとに立っている

その小屋は芙蓉と乳母の彬(あきら)に身の回りをする二人の娘が使う

男達は大抵野宿だった ひと月の間に気心の知れた駒弥達と黒沼の男達は和気藹々とバカ話をしている

その楽しそうな話を聞いていると いっそ仲間に入りたく思う芙蓉だった

乳母だけに彬は芙蓉の気持ちが判っていて 甲森の権蔵なぞを 相手に決めてしまった明重の弱腰が腹立たしくてならない

紅音には好きな相手を選ばせたのに

目は口ほどに物を言い・・・
芙蓉の大きな瞳は 駒弥への想いを見せている

では 駒弥は何も思惑は無いのだろうか


「本格ミステリ08 2008年 本格短編ベスト・セレクション」本格ミステリ作家クラブ・編 講談社

2008-06-16 01:19:09 | 本と雑誌

「本格ミステリ08 2008年 本格短編ベスト・セレクション」本格ミステリ作家クラブ・編  講談社
「本格ミステリ08 2008年 本格短編ベスト・セレクション」本格ミステリ作家クラブ・編  講談社
黒田研二著「はだしの親父」
病室を抜け出し病院の庭で死んでいた父
ちゃんとスーツを着ていたのに靴を履いていなかった

何故なんだろう

男ばかりの三人兄弟の真ン中の夏彦は 今自分がついている修業中の仕事のことを父親に言えず 生きているうちに会いにこれなかった

兄弟は亡き父親への見方を変えたそれぞれの瞬間を覚えていた

長男の春彦は 家を出ていこうとした時 追いかけてきた父親の姿に

末の秋彦は金魚を入れた容器が壊れ―困った時 父親がとった行動に

そして夏彦は 何故 父が靴を履かずに病院の庭にいたかを知った時
ただ子供を愛する父の深い心を知る

読了後 とても心が温かくなる物語です
この作家さんは こうした話も書けるのだと 新しい一面を見せられた思いです

法月綸太郎著「ギリシャ羊の秘密」
あるホームレスが殺された
警視である父親から作家で名探偵の綸太郎は 彼の知人が巻き込まれた話を聞かされる

犯人は何故 死体にかけられた上着を持ち去ったのか

娘に会いたかった父親・・・

東川篤哉著「殺人現場では靴をお脱ぎください」
安楽椅子探偵モノのバリエーションと言って良いかと
お嬢様刑事の家の抱える執事兼運転手が謎を解く

ブーツを履いたまま部屋で死んでいた女性の事情とは

柄刀一著「ウォール・ウィスパー」
父親は娘を殺して無理心中をしようとしたのか

甦る記憶が事件の手掛かり?
紫色の影・・・恐ろしい・・・

霞 流一 著「霧の巨塔」
霧の中 事故で男はあるはずのない巨大な塔を見て触れていた

一緒にいたマネージャーが殺されて

居合わせた探偵が謎を解く

一人俳優を守ろうとした男

北森 鴻 著 「奇偶論」
民俗学の講師を蓮杖那智に押し付けられた助手の内藤は よくよく事件を引き寄せる性格か 謎に遭遇してしまう

米澤穂信著「身内に不幸がありまして」
気高く美しいお嬢様に仕える事に喜びを見出していた夕日

丹山家に続く不幸 凶事

その裏にいたのは 実は―

乾くるみ著「四枚のカード」

手品 マジックを超能力と称して行なった人間が殺された

さて誰に容疑を絞ったものか? 探偵役は林 茶父

北山猛邦著「見えないダイイングメッセージ」
死を目前にした男が金庫を開ける数字を残す為にしたのは―写真を撮ること?!

何故に・・・

やる気なさげな探偵 音野順の兄で世界的指揮者の要登場

ちらりと話を聞いただけで謎を解いてしまいます

名探偵の素質は遺伝する?のでしょうか

渡邉大輔著「自生する知と自壊する謎―森博嗣論」

ま 評論て ことで

私は こういうのは苦手なので
何故 そう思う?って強引な引っ張りもあるし

ああ こういうの書くのは疲れるだろうなあ―と

一例をあげるならば「奇妙にも伝わってこない」とあるが 中には「伝わっている」読者もいるかもしれない

個人の考え方のみで断じては 言い切ってはいけないと思う

まあ しかし こうした作業が好きな人間も 読むのが好きな人間もいるのでしょう

円堂都司昭氏による収録作品への解説つき

序は 本格ミステリ作家クラブ会長 北村薫氏が書いておられます

好きな作家の作品から読み始めるのも良し 律義に前から順番に読んでいくのも良し―です