夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「だんだん集まる」ー20-

2018-09-11 21:33:45 | 自作の小説
今にして思い当たるのは徳二郎さんが最初から僕の事を「ボン」と呼んでいたこと

それは・・・知っていたからか 気づいていたからか
僕が唐十郎さんの息子だとー

それを聞くと

「棺野を名乗るからには おそらく松琴さんの子供だろうと そうある苗字でないし
唐十郎さんの気にしかたとか様子が特別だったし

物腰にボンと唐十郎さんには似たところがあった
並んでいる・・・一緒にいるところなんぞも なんとなく親子っぽいというか」


徳二郎さんに唐十郎さんは「父親だ」と名乗りはしなかったが 「面倒をみてほしい」と頼んだそうだ

徳二郎さんにとって唐十郎さんは恩人

徳二郎の父親の一徳(和則)の入院費用も葬儀費も馬場本家から出ている

段々村においては暮らしがたちゆかなくなった家については ずうっと馬場本家が面倒をみてきたという

その代わり馬場本家になにかあれば 村人は総出で手伝う

それは昔からのしきたり きまりごと ならわし

だから婆様も唐十郎さんも 恩に着せるようなことはなかったと

ばかりか看病で普通の会社には就職できない徳二郎さんを 唐十郎さんは雇って{特別な仕事}を頼んでいたそうだ

その{特別な仕事}については 唐十郎さんが僕と話し合いたいことに含まれるんだとか


暮らしている場所が山深い村だけに 台風や大雨などで警報が出そうな時には 避難用の大型バスで村の住人は早目に村を離れる
その避難用の住居が町にあり 村を離れその住居で暮らしている人達もいるらしい

全ては唐十郎さんが計画し考えていること

高齢者ばかりになっていくこの村

その未来について


病院と契約した療養施設
「その手の集合住宅は既存のものは規制が多く暮らしていて自由があましない
家賃というか 住み続けるにはかなりな金がかかる
高齢になっても年金をもらえない生活をしてきた人間も割といるし 
段々村の住人に関しては 唐十郎さんがそこを考えた投資をしてきた」


それも唐十郎さんがしてきたことの一部なんだそうだ

形あるものは いつかは無くなる いつか消える
人も建物も住んでいる場所さえ
永遠のものなんて何も無い


だからこその備え

唐十郎さんはかつて母さんがいた馬場本家の離れで寝泊まりし 事務所代わりにもしている
もう ずっと

聞けば妙に切ない

中途で消えた相手
失われた恋

唐十郎さんは どんな思いで生きてきたんだろう

そして母は
現在 どんな思いでいるんだろう


僕が本当に唐十郎さんの息子ならば

唐十郎さんは 僕に何を望んでいる 何を期待している

何か産業があれば 人は集まる
過疎化は解消できる


そうでなければ過疎化の村は終焉を迎える
村の幕引きか

想像しているより会って唐十郎さんの話を聞くべきなんだろう

徳二郎さんが唐十郎さんに忠実なように 村の中には縄網千鶴のスパイみたいな人間もいたようだ

この時の僕には・・・・唐十郎さんの元妻の縄網千鶴さんと娘の加世子さんが大騒ぎをしていることなど 知る術もなかったんだけどね