両親から愛されず育った男女の双子
結婚が決まっていた姉の朱里は・・・婚約破棄し 二十歳の誕生日に死んだ
弟の伊吹に「ごめん」とだけ書き残して
姉の遺品を整理していて伊吹は 旅芝居の一座の半券があることに気づく
姉からこうしたものが好きだ 趣味だとは聞いたことがなかった
姉の突然の自殺の真相があるのかと この一座の舞台を観劇に出向く
そこで目を奪われたのは一人の女形 鉢木慈丹
伊吹より僅かに年上に思うが 彼には妻も舞台で子役として出る娘もいた
何故か幼少より母から剣道と日舞を習いにいかされていた伊吹
観客として来ていた伊吹に慈丹は 一座に加わらないかと熱心に誘ってきた
姉と一座との接点は見つからないまま 伊吹は一座に入る
父親からは冷たい心が凍り付くような言葉しかかけられなかった伊吹
自分は汚いのだ そう思い 人から触れられることも耐えられず
姉の朱里と二人寄り添い守りあってきた
しかし 姉はもう居ない
馴れぬ舞台に立つうちに・・・一座の人々とも打ち解けることが少しずつできてくる
かつて一方的に伊吹にしつこいほどの思いを寄せ 叶わぬとなると 逆恨みもした幼馴染の娘の和香が 自分をこんなにしたのは伊吹だと刃物持ち傷つけようとし 慈丹の顔が傷つけられる
いくら告白しようが 拒否され続けているのだから 自分には脈がないーと素直に諦める賢さもなかった娘
また娘の母親も逆恨み体質で・・・まず自分の娘が悪いのだと反省とかそういうこともできない人間
娘がこうなったのは相手のせいだと 他人が悪いと文句を言いにいく
恥をかくのは自分だと思うのだが
まずそういう娘に育てたのは自分なのだと そこが反省できない
まず他人を傷つけたなら まして刃物まで振り回しているのだから 謝罪あってしかるべきだが
というかね この物語の母子は人柄 性格的にもそっくりで
まさしくこの母にしてこの子あり
でも現実にもこういう親子は多い
なるほど この親なら ああいう子も育つよねーと
自分の出生の秘密を知り 両親と一座の深い関わりも知って・・・・・一座を抜け出し 母親と向き合う伊吹
父親も苦しんでいた そして 首を吊って死んだのだ
朱里もどうして自分たちが生まれたのか どうして両親から愛されないのか知ってしまった
この秘密から伊吹を護ろうとして 独りで死んだ
秘密を知った朱里が向き合った母親は・・・・・朱里を救う言葉などかける女ではなかった
同じ地獄へと・・・・・・
どこか狂いながら生きてきた人間なのかもしれない
伊吹は慈丹によって死の淵から引き戻された
これからは両親の子供としてではなく 慈丹の従弟として 舞台に立ち続けるのだろう
解説は書評家の三宅香帆さん
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ごめんなさい