「報復ゾンビ」－２１－

認めている相手ー新垣連(しんがき　れん)と一緒だったとはいえ嫁入り前の娘が無断で家をあけた事　たとえそれが連と一緒であったとしても
娘の身内にしてみれば苦々しい気持ちにならないほうがおかしい

「ごめんなさい　おじい様　全部　私が悪いんです！」

家に着き部屋に通されて祖父の緑矢克雅(みどりや　かつまさ)の姿を見るなり　あきひが叫ぶように謝る
彼女は連の気持が掴めず不安で・・・・・連が出社しない日なのに「ちょっとした用を片付けに」－
その「ちょっとした用」がとても気になって　連を車でつけてしまったと
連が行ったのは阿美津で・・・・・自分がしつこく責めたので
連が隠してきた秘密を話さざるを得なかったこと


ー連の姉の蓮のことは克雅には話さないーそうあきひと連は話し合って決めたのだった

それでも話が通るように精一杯のあきひの芝居

それで混乱したあきひが落ち着くまで時間がかかったのだと

他にもありそうだーそんな表情の克雅ではあったが

「あきひさんをそこまで思いつめさせたのは僕の言葉が足りなかった為です　すみません」
連の目には濁りも曇りもなかった　

その事だけを克雅は確かめた
「目の黒いうちに・・・・あきひの花嫁姿は見られないのかとー諦めていたよ・・・」


「おじい様・・・」



それまでの長い年月を埋めるかのように　それから結婚式までは短く・・・披露宴は場所と招く人々を変えて三度に分けて行われた

克雅は孫娘の幸福を確認するかのように数年生きて曾孫もその腕に抱いた

連とあきひの間には子供を持つことへの恐怖もあったがー
連は言った
「僕らがおかしくなるとしたら死んでからだ　半世紀先のことはわからない
起きるかどうかわからないことに怯えて生きるのはやめよう」


母親になることは女性を強くする

連が逃げ出したくなるほど賑やかな家庭にするのだと言ってあきひは連を笑わせた
二人で乗り越えていこうと連は言う

いつかは家族でーと





千希良蓮と新垣連と二人のれん・・・・・


それぞれの現在の幸福はいつか　もしかしたら・・・惨めに崩壊するかもしれない

けれど　それまでは幸せに暮らす時間を持てる

幸せになるように　幸せでいられるように


それはこの呪われた研究を続けた医師の願いでもあった


燃えてしまった医師の遺書はー

ーただ一人　この世界にあってほしい人が死んで

自分は人の病を治す職にいながらその人を救えなかった

自分すら恨んで呪った
あの人以外の生きる者全てを恨んだ

どうにかしてかの人を　この世によみがえらせることはできないのか

シェリー夫人のフランケンシュタインではないが
小説世界のようにー


夢はかの人に今一度会うこと
その為だけに・・・・・・・

しかし夢は夢だ

あの人はよみがえりはしない

そうと気付きながら　知りながら

わたしは実験を続けた

研究は不完全ながら　ある種の成果は出た

だが・・・ここまでだ

わたしの命は長くない


そう・・・・・このまま死ぬべきだ
何もせずに


しかし　しかし
わたしは最期の実験をせずにはいられなかった

選びだした人間に　わたしの作った薬を注射した

そう・・・エゴからわたしは罪を生んだ

愚かな自分を　長年の研究を捨てられなかった


いかにしようと　あの人はよみがえりはしない

そうと気付きながら　鬼の心を捨てられなかった

ただ　ただ　わたしの望んだものは
願い続けたことは　あの優しく微笑む娘とー


しかし　わたしは許されまい


ならば　この身を炎で焼こう

わたしは地獄へ行く

天上世界でのあの人の永遠の幸福を祈りながら





(お読みくださった方々へ　有難うございました「報復ゾンビ」終わります)