本の帯に「小さな病院は、命がけでコロナに立ち向かった」とあります
「神様のカルテ」シリーズも有名な著者は現役の医師です
あとがきにありますが 著者は自分の本を世に送り出す時に「少しでも世の中が良くなるように」
いつもそんな思いを託しているのだとか
ただ「臨床の砦」だけは こういった思いを維持するゆとりすらなかったと
コロナ禍に直面した人間が その実体験をドキュメントとして書くこともできただろう
それはそれで生々しいものになっただろう
小説の体裁をとってさえ 読みながら本のあちこちに栞をはさまずにいられなかった
TV出演される一部の方々を別として 医療に関わる方々は その実際を余り語らない
労苦を喧伝しはしない
4歳年下の内科医の従弟がいる
持病ある私の事を案じて時々メールや電話をくれる
自分の仕事がどんなに大変かを従弟自身が話すことはない
従弟の父親である叔父から 従弟の生活について漏れ聞くくらいだ
従弟は往診も手掛けていて 例の宇宙服のような防護服を着てー
そしてそれは随分暑いのだと
読みながら そんなことも思い出していた
体調を崩した人間は医師に診てもらえれば安心する
従弟が往診に出向くから家で待機するように諭しても病院へ押しかける人がいる
病院には入れず院外待機してもらうしかないのに
中国の武漢発の世界に拡散した謎病
最初は治療方法も効果ある薬も分からず手探りでの治療
正体が見えない病気は 治療に携わる医師にとっても恐怖
手を尽くしても死んでいく患者
診察を拒否する病院も多い中 患者を受け入れ「正解は見えないなかで 最善を尽くした」医師たちの姿が作中描かれている
医師や看護師たちも「感染するかもしれない」恐怖と戦いながら
心に響く そして考えさせられる言葉も多い
医療の現場の声
小説ではあるけれど 政治家にも虚ろなコメントしかできないコメンテーター諸氏にも読んでほしい
これは読むべき価値ある本です