1951年 北九州市小倉区生まれの作家 葉室麟は2017年12月に亡くなっている
この文庫本は2024年〈令和6年〉1月に初版発行されている
亡くなってなお その高い人気を示すかのように・・・・・
質の高い作品を発表し続けてくれた作家さんでした
「鬼火」
幕末 天才剣士とうたわれた新選組の沖田総司は 胸の病で死んだと言われている
その人気の高さを示すかのように舞台・小説・映画・・・果てはゲームにも名前が使われている
この沖田総司と 新選組で暗殺された芹沢鴨の意外な接点・交流
好色で粗暴などと描かれることも多い芹沢
だがしかし 本当のところはどうだったのだろう
かつて芹沢が死を覚悟した時に 辞世の句として詠んだ歌が作中に出てくる
雪霜に 色よく花の さきがけて 散りても後に 匂う梅が香
「鬼の影」
京都 山科にあって遊興に耽っているように見せていた大石内蔵助
藩の存続 復興が叶わぬとなり 討ち入りにいたり 本懐遂げたのち切腹
短い中で 緊迫した斬りあいのヤマもある
享年45歳
辞世の句は
あら楽し 思いは晴るる 身は捨つる 浮世の月に かかる雲なし
「ダミアン長政」
黒田官兵衛の息子の長政の関ケ原ではたした役割 その真意
また石田三成の言葉の意味を解き明かしたのだと
彼は 石田三成を「一粒の麦」にたとえてたたえた
「魔王の星」
天文にも興味を見せた織田信長
現れた巨大な彗星は凶星か それとも
「女人入眼」
頼朝亡きあと 鎌倉を守り抜いた北条政子
己の死後も考えて 打っていた手
近年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の場面などもつい浮かぶ
幾度も逆縁にあい母親としては辛い人生でもあっただろうに
「不疑」
中国の漢の時代にあった役職 それは知事と警察長官を兼ねたような・・・日本でいえば江戸時代の町奉行にも似たような役目であったのだと
この仕事にあった不疑という人物が 解いた事件を描いている
村木嵐〈むらき らん〉さんが「圧倒的なリアル」と題して書かれた解説も収録された作品に丁寧に触れておられて
葉室麟という作家さんにもっと寿命があったならば どのような分野の作品を書かれただろうかと
崩れない品格ある作風も惜しまれる
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ごめんなさい