うざね博士のブログ

緑の仕事を営むかたわら、赤裸々、かつ言いたい放題のうざね博士の日記。ユニークなH・Pも開設。

竹の一斉開花の話

2023年08月03日 03時59分02秒 | 樹木医の日々片々
先月7月2日、大多喜県民の森で千葉樹木医会南ブロックの研修会が開催された。
 その内容は、大国主神社境内の造成工事に伴うマサカキ(主幹)樹高13.0、幹周1,25の樹勢回復の方向性について検討した。ちなみに、このマサカキという樹木はなかなか大木にならずこのサイズでも珍しく稀少木になるのだ。植生的には房総半島の照葉樹林帯に生育していて山林の構成としては中腹か尾根沿いに育つ、陰樹、半日陰向きか、と判断できるだろう。
 また、先ごろ関東地方を直撃した台風(2019.9.8 15号)被害に遭い倒木した館山市保存樹木指定のサイカチの後継樹育成に関する話で、繁殖的に挿し木が結果的に不良で替りに静岡から取り寄せた種子の播種後の実生木に倒木の穂木を接いで成功の報告があった。サイカチ自体は本州以南の分布域かと思われるがかならずしも房総に多いとも聞かない。〈サイカチ;マメ科ジャケツノイバラ亜科サイカチ属〉

 最後に竹の一斉開花の話が出た。担当者は実務経験豊富な16期の先輩樹木医である。以前(R元/11/10)の研修会に引き続き、以下に記していきたい。竹にこだわるわたしのタケノコ好きはこのブログでも何度も取り上げた。そこでここでは新しい知見を述べてみたい。
 地元では食用のタケノコとして孟宗竹、真竹、淡竹(呉竹)を収穫している。
 今回は竹の一斉開花の話になる。一般的に植物の開花となると何事もなくひょっとしたら吉事のように捉えられるが、タケノコの生産農家にとってその年以降数年間は出荷できず不作になる、そして竹材の伐採搬出が不可能になる。詰まるところ、タケの特性として一斉開花とはその竹林エリアの一斉枯死に至る恐れがあるのだ。
 以下、上田弘一郎氏の「有用竹と筍ー栽培の新技術---竹林の開花枯死とその対策」より竹種ごとのパターンを引用する。
(イ)竹林のすべての竹が一斉に開花(全面開花)するもの。
   →真竹、淡竹、黒竹、笹類
(ロ)竹林のうちに開花竹と非開花竹が混じっているもの。
   →真竹、淡竹、黒竹、笹類
(ハ)竹林内の一株または一連なりの地下茎から生じた竹のうちの一部分、あるいは一本の竹についている枝のうちの一部が開花するするもの。
   →孟宗竹、蓬莱竹(バンブー)
 一斉開花の話の内容をまとめる。開花は純然たる植物の生理現象であって決して伝染病ではない。60年周期説では明治43年に昭和43年で、次は令和8年に開花になるが、当地では淡竹がその年代にあたっているようだ。また60年周期説の年数については中国の古代説話からくるものらしい。実際的には竹林ごとに時系列的にその観察データを取ることが重要だとされる。現地では、開花後、地下茎も枯れてから2,3年経つと竹林の再生が始まる。開花時期は一年の内で6月が多いことが知られている。現地の画像で確認できるように、全くイネ科特有の形態を示している。
 なお、かつて、身近にもわたし家の近所の農家の庭にも笹(篠竹・アズマネザサ)が開花したのを見たことがある。

 画像の説明をする。現地は夷隅郡大多喜町内の山間部、国道465号線沿いは竹林が小山の尾根に駆け上がるように広がる、この辺一帯はタケノコ栽培の有数の地である。また、大多喜県民の森では県内唯一、竹笹園を持ち竹の生育特性や生態を研究してきた公共の組織である。モウソウチクの種子播種による貴重な竹林の実験林もあり、それは下段に前回と同様に再度アップしておきたい。
資料:「タケ類 特性・鑑賞と栽培」室井ヒロシ 加島書店
   「有用竹と筍ー栽培の新技術」上田弘一郎 博友社」


          淡竹の一斉開花状況 
          
          
          
          
          
          
          

          モウソウチクの播種による実験林
          
          
          
 
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