江戸の町に“三年長屋”と呼ばれる長屋がありました。
3年住めば、願いが叶うと言う言い伝えがあるからです。
長屋の奥には、家主が彫ったと言う河童の像が祀られています。
住人は、きゅうり等のお供えをしながら、毎日拝んでいます。
その長屋の差配をしているのが、主人公の左平次。元は武士で名を古川左衛門と言いました。
元々、正義感が強く、藩の不正が許せず、抗議した時、父親はそれを見て見ぬふりをしてくれたのにと言われるのです。
その瞬間、左衛門は、藩を捨てました。
浪人の生活は苦しく、その中で妻を失ってしまいます。
そして、唯一の心の支えだった幼い娘とも生き別れとなってしまうんです。
絶望の淵にいた彼を町人左平次にし、差配を任せたのが、お梅と言う家主でした。
長屋には、様々な人が住んでいます。
それぞれに性格も仕事も違うけれど、共通しているのは、一生懸命に生きていると言う事。
彼らの世話をしつつ、左平次も自分を取り戻していきます。
長屋の住人にとっての“河童”が何なのか、幸せとは何なのかを、考えさせられる物語です。
最初は、ちょっとまどろっこしい進みに飽きそうになりましたが、読み進めるうちに、どんどん目の前に長屋の情景が浮かぶ気がして、いつの間にか、私も三年長屋に入り込んでいました。
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