暑さが去って涼しくなると、ハートバップの季節です。
なんて勝手に決め付けていますが、こんな季節には、ハンク・モブレー!
というのも、私の勝手な決め付けです。そして今日は、これを――
■Another Workout / Hank Mobley (Blue Note)
確か1985年頃に発掘発売されたブツで、最初聴いた時からお蔵入りしていた理由が??? というほど充実した演奏が収められています。
なにしろ録音が1961年3月と12月! つまりハンク・モブレーがマイルス・デイビス(tp) のバンド・レギュラーだった頃の全盛期ですし、メンバーはハンク・モブレー(ts) 以下、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、それはタイトルどおりに、あの名盤「ワークアウト(Blue Note)」と同じメンツによる兄弟セッションですから、悪いはずがありません――
A-1 Out Of Joe's Bag (1961年12月5日録音)
フィリー・ジョーの張り切ったドラムスとの掛け合いで進行するハードバップ曲で、作曲はもちろんハンク・モブレーという旨味があります。
ただしアドリブに突入する部分に、やや乱れがあり、それがお蔵入りの原因でしょうか? しかし本編部分のハンク・モブレーは好調極まりなく、何時もよりもハードなフレーズも織り交ぜながら、あのモブレー節を聴かせてくれます。
続くウィントン・ケリーも素晴らしく、フィリー・ジョーも楽しいリムショットで合の手を入れ、さらにクライマックスのドラムソロもビシッと決まっています。
A-2 I Should Care (1961年12月5日録音)
お馴染みのスタンダード曲を悠然と吹奏するハンク・モブレー♪ スローな展開ですが、テーマの変奏から独特の味を醸し出していくあたりは、充分にファンを納得させるものです。しかもビートを強めたアドリブパートでは、その歌心がますます冴えるのですから、たまりません。モタレが良い味になっているのも、ハンク・モブレーだけの個性ですし、ちょっと聞きには緩すぎる演奏かもしれませんが、モブレー・マニアには、それが堪えられないのです♪
A-3 Gettin' And Jettin' (1961年12月5日録音)
マイルス・デイビスのモード曲「Milestones」のハンク・モブレー的解釈とでも申しましょうか、モードを美味しく料理した溌剌たる名曲!
快調なリズム隊の煽られてノリまくるハンク・モブレーは、もう最高です。それは全体的にモードの色合が強いリズム隊とファンキーに拘るハンク・モブレーの対比が、クライマックスのドラムスとの掛け合いで調和していくのです。
ちなみにこの曲は後年、「Up A Step」と名前を変えて1963年に再演され、アルバム「ノー・ルーム・フォー・スクエア(Blue Note)」に収められましたが、そちらはもう少しモード味が強くなっています。
B-1 Hank's Other Soul (1961年12月5日録音)
このアルバムの目玉演奏が、これです。
ハンク・モブレーが十八番のファンキームードが横溢し、リズム隊はゴスペル・ハードバップの真髄を披露して、グイグイと盛り上がります。
あぁ、ハンク・モブレーのアドリブは完璧です。歌心とタメが絶妙なフレーズの妙、モタレとネバリの美学が見事に融合した、一世一代の名演だと思います♪
もちろんウィントン・ケリーも負けじと楽しくグッとくるピアノを披露し、フィリー・ジョーのゴスペルドラムも冴え、ポール・チェンバースも図太くドライブしています! 最初から最後まで、当にこれがハードバップという極みつきです♪
B-2 Hello Young Lovers (1961年12月5日録音)
和みのスタンダード曲を、より以上に和んで演奏するハンク・モブレー♪
これが、たまらなく素敵です。もう、テーマ部分の吹奏だけで、完全降伏!
リズム隊との息もピッタリですし、ジャズがこんなに楽しくて良いんでしょうか!? 決して快楽的ではないんですが、ほどよい「泣き」と「哀愁」を潜ませたモブレー節が全篇に満ち溢れているのです。もちろん「歌心」も満点です。
そしてリズム隊が、これまたゴキゲンで、弾みまくりのウィントン・ケリーに、颯爽としたフィリー・ジョーのドラムスが素晴らし過ぎです♪
ちなみにこの曲にはJ.J.ジョンソン(tb) やカーティス・フラー(tb) の名演がありますが、このハンク・モブレーのバージョンも、永遠に聴き継がれる決定版だと思います。
B-3 Three Coins In A Fountain (1961年3月26日録音)
この曲だけが前述したアルバム「ワークアウト」セッションで未発表になっていたものの流用で、当日はグラント・グリーン(g) も現場に居たのですが、ここには参加していないので違和感がありません。
もちろんハンク・モブレーは言う事なしの快演ですし、リズム隊も緊張感があって最高です。
ということで、これはハンク・モブレーの隠れた代表作です。
そして実は、最近リマスターされてCD化されていますが、「Three Coins In A Fountain」が抜かれた純粋盤? とは言え、名作アルバムに変わりはありません。むしろジャケットは、新盤の方が良いほどです。
ちなみにその曲は「ワークアウト」のCDにボーナストラックとして入っているようです。
まあ、それはそれとして、皆様にはぜひとも聴いていただきとうございます。「Hank's Other Soul」と「Hello Young Lovers」の2連発は絶対です。
関係ないけど、今日は「日本以外全部沈没」のレイトショウに行ってきます♪