秋晴れの休日なのに家に引篭もり、ロマンポルノの復刻DVDを鑑賞して過ごしてしまいました。しかし後悔していません。
ジャズも久々に落ち着いて聴きました。それが――
■Ritual / The Jazz Messengers featuring Art Blakey (Pacific)
1957年に製作されたハードバップの隠れ名盤です。
わざわざ「隠れ」と書いたのは、この時期のジャズ・メッセンジャーズは誰が決めたか所謂「暗黒期」として、聴かず嫌いというか再発だって遅れ気味ですから、このアルバムを初めて聴いた時の感動と興奮は忘れられません。
録音は1957年1月14日&2月11日、メンバーはビル・ハードマン(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、サム・ドッケリー(p)、スパンキー・デブレスト(b)、そしてアート・ブレイキー(ds) という、確かにハンク・モブレー(ts) やホレス・シルバー(p) がいた時期よりも、格下のメンツになっているわけですが――
A-1 Sam's Tune (1957年1月14日録音)
タイトルどおり、ピアニストのサム・ドッケリーが書いた躍動的なハードバップで、テーマではアート・ブレイキーのアフロなドラムスが冴えわたります。
そしてアドリブパートでは先発のジャッキー・マクリーンが、思いっきり泣きじゃくる大名演! もうここだけで、どうしてこれが「暗黒期」なのか、完全に???です。
さらにビル・ハードマンもスピード感に満ちた快演!
ただしサム・ドッケリーのビアノが小粒というか、センが細い雰囲気で、リズム隊だけだとグルーヴがイマイチ足りません。
しかし、それゆえにアート・ブレイキーが素晴らしいオカズとビートを叩きだす熱演で、孤軍奮闘するのでした。
A-2 Scotch Blues (1957年2月11日録音)
デューク・ジョーダンが書いた哀愁の名曲の決定的な演奏です。
幾分、心もとない音色でテーマをリードするビル・ハードマンのトランペットが、意外にも曲想に合っており、ジャッキー・マクリーンはギスギスしたブルース・フィーリングを撒き散らします。
サム・ドッケリーもここでは健闘していますし、マーチ調のアート・ブレイキーも楽しい出来です。
A-3 Once Upon A Groove
これもタイトルどおりにグルーヴィなハードバップになっています。
ビル・ハードマンとジャッキー・マクリーンは盟友関係というか、息もぴったりですね♪ アドリブパートでも、それぞれがベストを尽くそうという気概が感じられます。
親分のアート・ブレイキーも、そのあたりは心得たもので、流石のオカズと力強いビートで全面バックアップ! もちろんクライマックスは爆発的なドラムソロです。
B-1 Ritual
アート・ブレイキーのドラムソロがたっぶりと!
一応、ホーンのリフがちょっぴり入りますが、どうやら全員が打楽器を持たされて演奏に参加しているようです。
つまり後年、このバンドのウリになる「A Night In Tunisia / チュニジアの夜」の演奏で延々と聴かれる打楽器アンサンブルの前例のひとつです。10分近い演奏ですが、けっこう飽きないで聴けるのが不思議というか、流石です。
B-2 Touche
マル・ウォルドロン(p) が書いた、これも哀愁のハードバップです。テーマの途中でワルツテンポになるのがミソでしょうか、ここではタッチの弱いサム・ドッケリーのピアノも気になりません。
またジャッキー・マクリーンが、ここでも絶好調♪
B-3 Wake Up
オーラスは叩きつけるような烈しいハードバップで、初っ端からアート・ブレイキーが熱く燃え、ジャッキー・マクリーンは激情を爆発させています。
またビル・ハードマンも負けじと奮闘し、ケニー・ドーハムを想起させるような快演を披露すれば、サム・ドッケリーはホレス・シルバーもどきのグルーヴを発散させる大健闘です。
そしてもちろん、クライマックスは親分のドラムソロですが、これがホーン隊が上手く呼応してラストテーマに入るという、非常にバランスの良い演奏になっているのでした。
ということで、ジャズメッセンジャーズとしても快演盤のひとつ♪ として良いと思うのですが……。
ちなみに発売元が珍しくもパシフィックになっているのは、当時契約していたコロムビアがチェット・ベイカー(tp) のマスターと交換したからだと、言われています。
それゆえに権利関係が複雑なんでしょうか? 一時、CD化されていたような記憶もあるのですが、現在は聴くことが叶わないようです。復刻熱望!