完全に開き直って、好きなの聴きの私です。
そして昨日のソウル路線を継承して、本日は――
■Haaah ! / 和田アキ子 1968 - 2003 (テイチク)
我国歌謡曲界のレディソウルといえば、和田アキ子ですね♪
デビュー当時は全くの異端だった彼女も、今や芸能界の大御所ですが、それは彼女の喋りの上手さとかキャラが立っていたからでしょう。
本業の歌の実力は、決定的な名曲「あの鐘をならすのはあなた」で賞を総なめにした時点で決まってしまったのが、逆に災いしていると感じます。
何故ならば、彼女が出すシングル曲のほとんどが、何の脈絡も無く、ただ場当たり的に製作されていたからです。それは本日ご紹介のCDボックスを聴けば、悲しいほどに実感出来てしまいます。
これはCD10枚組で、彼女が発売したシングル盤AB面曲が年代順に入っていて、さらに今では廃盤になっているライブ盤からの音源やカラオケまでもが収められていますが、私はどちらかというと、初期から中期が好きなので、偏った聴き方になっています。
例えばデビュー曲「星空の孤独」はモロにライチャイス・ブラザースをひとりでやった感じですし、そのB面だった「バイバイアダム」は完全に「マーシー・マーシー・マーシー」のパクリですが、その黒い雰囲気は、当時の歌謡界ではウルトラ級の本格派でした。
そして2作目で大ヒットの「どしゃぶりの雨の中で」は、私が大好きなR&B演歌の傑作ですし、続く「その時わたしに何が起ったの?」はブラス&ストリングが豪華に鳴り響く、当時の王道歌謡ポップの名曲です。もちろん黒~いですよっ♪
こういうヒット曲が出た後の彼女は、「笑って許して」とか「さすらいのブルース」さらに「あの鐘~」で女性シンガーのトップに君臨するわけですが、ご存知のとおり、当時の歌謡界はアイドル全盛期でしたから、あくまでも「歌」だけで勝負出来るほど甘い世界ではなく、和田アキ子はバラエティの世界で大輪の花を咲かせてしまうのでした。
それが良かったのか、悪かったのか、結果論に過ぎませんが、少なくとも「歌」の世界では名曲・名唱を今日まで沢山残しています。
その中で特に私が好きなのが激烈R&Bの「古い日記」やフィリーソウル歌謡の「見えない世界」、そして泣きの歌謡ソウル「もっと自由に」です♪ いずれも黒いコブシと力み、鉄壁のアレンジが完全に融合した傑作で、今聞いても、全然古くありませんねぇ~。
尤もこんなに歌いこなせる人がいるか、という問題がありますが♪
他にも隠れ名曲がどっさりあるんですが、悲しいかな、どうしようもない惰性の演歌曲があるのも、事実です。なんでかなぁ~、と今更ながらに???の気分です。
まあ、製作側とすれば大人の味を狙ったんでしょうねぇ……。
しかしこのボックスの魅力はライブ音源にもあります。
まず1970年8月のライブでは、若さにまかせて歌いまくるイキの良さが魅力です。スタジオ録音では丁寧に歌っていた「その時わたしに~」の豪快なノリ、「どしゃぶりの雨の中で」のコブシ回しのイナセな雰囲気、低音で迫る「星空の孤独」の堂々たる歌いっぷりは最高です。バックバンドの演奏が、完全に彼女に引張られているのが分かるほどですから♪
またジェームス・ブラウンの「パパのニューバック」なんて、英語の発音が完全に耳で覚えたノリで、なかなか素晴らしいです。そしてここでもバンドが彼女に引張られた和製グルーヴの大嵐が、憎めないところです。
そして翌年7月のライブになると、彼女の歌はますます円熟していますが、惜しむらくは演目に演歌色が強くなっています。それでも「夏の夜のサンバ」のギンギンな演奏と歌は流石です! もちろん「あの鐘~」はフィナーレですが♪
ということで、近年の彼女は「歌」でも様々な試行錯誤があるようで、迷い道ですが、ここはひとつ、デビュー当時のR&B演歌に戻っていただきたいと、強く希望しています。
「古い日記」の「ハッ」という掛声は、永遠に不滅ですよ。こんなタテノリ歌謡曲、あるもんかっ!