あ~ぁ、忘年会のシーズン到来ということで、若い者のパーティに景品を出してくれるように無心されています。
毎年のことですが、今年は「ロマンポルノ」か「野良猫ロック」のDVDにするつもりです。
とはいえ、自分自身の物欲に煩悩が疼くわけですが……。
ということで、本日は――
■A Swingin' Affair / Dexter Gordon (Blue Note)
デクスター・ゴードンの凄さを、私は本当に分かっているのか?
聴く度に、自問自答する、今日この頃です。
豪快で重厚なテナーサックスを吹かせたら唯一無二の存在であり、晩年は俳優としても評価され、さらに最高にお洒落な服装センス♪
もちろん若い頃には、いけないクスリに手を出して、ハードバップ全盛期に活動出来なかった悔いもあるでしょうが、やはりカッコイイ男として人生を終えたその姿は、羨ましくもあります。
さて、このアルバムはモダンジャズが自意識過剰の独り善がりに傾斜していく時代の、その狭間に吹き込まれた傑作盤ですが、明らかにモードやフリーといった尖がった手法よりも、自らが信じる王道ハードパップに拘り貫いた潔さが魅力です。
録音は1962年8月29日、メンバーはデクスター・ゴードン(ts)、ソニー・クラーク(p)、ブッチ・ウォーレン(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) というワンホーン編成です――
A-1 Soy Califa
いきなり「ソイ~、カリ~ファ~」という掛声♪ 誰でしょうねぇ、デクスター・ゴードンでしょうか?
で、演奏はビリー・ヒギンズの軽快なラテンリズムに乗せられて、楽しいテーマが奏でられる、あぁ、ここだけで気分はウキウキしてきますねぇ~♪ こういうカリプソ系のジャズはソニー・ロリンズ(ts) が十八番にしていますが、デクスター・ゴードンも負けていません♪
リズム隊も最高にグルーヴィですし、ラテンビートと4ビートの交錯がたまりません! もちろん、お目当てのソニー・クラークはソロに伴奏にキラリと輝くフレーズのテンコ盛りです。ビリー・ヒギンズのビシビシとキメまくりのドラムスが、また快感です。
A-2 Don't Explain
一転して、ムード満点の大人の世界という、デクスター・ゴードンならではのスローバラードの至芸が披露されます。う~ん、このサブトーンのほど良さとハードボイルドなテナーサックスの音色だけで、KOされますねぇ♪ もちろんテーマを変奏していく歌心のアドリブも最高級です。
「歌詞を忘れたから、吹けない……」は主演映画「ラウンド・ミッドナイト」の中でデクスター・ゴードン本人が自然と口に出たかのような永遠の名台詞ですが、この演奏を聴いていると、肯けます。
そしてソニー・クラークが、また素晴らしいです。仄かなマイナー性と奥深い歌心が、短いソロの中に凝縮されているような名演だと思います。
A-3 You Stepped Out Of A Dream
有名スタンダードが軽快に演奏され、当にハードバップの醍醐味が満喫出来ます。
まずソニー・クラークのイントロがイカシていますし、デクスター・ゴードンのテーマ吹奏からアドリブ、その全てにおいて徹底的にスイングしていく様は楽しく、痛快です。
それは、ちょっと遅れていながら、ケツがビシッと合っているというか、そんな雰囲気の驚異のノリが、凄いところだと思います。いや、逆に合っていないからこそ、凄いのか……?
B-1 The Backborn
ブッチ・ウォーレンのベースがイントロから弾けています! なにせ、本人の作曲ですからねぇ~♪
デクスター・ゴードンも、それにちゃ~んと付き合っているところが憎めませんし、かなりビンビンのリズム隊を逆に煽るかのような過激なフレーズまでも吹いています。
そしてソニー・クラークが、さらに過激というか、ワザとらしさ寸前の外しの伴奏とか、ビリー・ヒギンズの容赦無いステックさばきが怖ろしいところ! もちろん一番凄いのは、全く唯我独尊のデクスター・ゴードンではありますがっ!
B-2 Until The Real Thing Comes Along
これもスタンダード曲の大ムード大会ですが、決して甘さに流れないデクスター・ゴードンの凄さが、存分に味わえます。
それは、もどかしいばかりの歌心とでも申しましょうか、言いたいことをズバリと言えない男のダンディズムかもしれず、まあ、秘すれば花という……。
逆にリズム隊は、かなり力強く、スローな展開の中で黒っぽさとハードなノリを追求していて侮れませんし、ソニー・クラークは魅力全開です♪
B-3 McSplivens
オーラスはデクスター・ゴードンが十八番の、ノリノリのリフで作ったオリジナル曲ですから、演奏は自然発生的に盛り上がっていきます。
特にリズム隊は絶好調ですから、デクスター・ゴードンも気を抜けない雰囲気で、しかもリラックスしているのですから、これはもう、名人の証でしょう。ついグイグイとボリュームを上げてしまいます。
ということで、決して歴史的名盤とは言えないアルバムかもしれませんが、こういうブツが鳴り出したりすると、お客さんの顔が一斉に飾ってあるジャケットの方を向くという、当に集団即興のような場面が、1970年代のジャズ喫茶でした。
それは、ある種の普遍性というか、ハードバップという最もジャズっぽいジャズが記録されているからで、モードやフリーやフュージョンに毒されていた当時の業界が、やはりツッパリであったことの証明でした。
そして時代はハードバップのリバイバルが根強く続き、その中心人物がデクスター・ゴードンだったというわけです。
これで私は、本当に分かっているのでしょうか……?