これらか宴会に出席だっていうのに、体調・気力ともにイマイチです。
なんか疲れが抜けていない毎日ですからねぇ……。ちょっと自分の老化現象を感じています。
で、こういう時には、新録のCDでも聴いてみようと――
■On Fire / Mike LeDonne (Savant)
マイク・ルドンはウィントン・ケリー系のピアニストなんで、第一線に出で来た頃から聴いていますが、最近はオルガンに専念しているのが、ちょっと???です。
しかし新譜が出ると、やっぱりゲットしてしまうんですから、そこは……。
で、このアルバムは最近レギュラーバンド化しているオルガントリオ+1形態で、録音は2006年5月23&24日、ニューヨークのクラブ「Smoke」でのライブセッション♪ メンバーはエリック・アレクサンダー(ts)、マイク・ルドン(org)、ピーター・バーンスタイン(g)、ジョン・ファーンズワース(ds) という売れっ子ばかりです――
01 Could It Be I'm Falling In Love
黒人ソウルコーラスのスピナーズが放った往年のヒット曲で、誰でも一度は聴いたことがあるメロディでしょう。それをこのバンドは4ビートでグルーヴィに演奏していますが、黒っぽさが稀薄なのが物足りません。尤もスピナーズのオリジナルバージョンが、洒落た感覚でしたからねぇ、これでいいんでしょう……。
ビートがドドンパになりかかっているあたりが和み、と言えばミもフタもありませんし、歌心が欠如しているエリック・アレキサンダーに対し、ディープな味付けをしていくマイク・ルドンのオルガンがOKです。
02 Spinky
一転して高速4ビートの快演です。
オリジナルはメンバー全員の恩人という故チャールス・アーランド(org) ですから、自然と熱も入ろうというところでしょうか、まずエリック・アレキサンダーがモード系のフレーズを出し惜しみしない熱演です。
またリズム隊の発散するビートも熱っぽく、このバンドの本領発揮は、こういう演奏でしょう。特にマイク・ルドンは伴奏&アドリブソロ共に素晴らしく、ジョン・ファーンズワースも終始、快適なシンバルワークを聴かせてくれます。
そしてピーター・バーンスタインの単音弾き主体のギーターソロでは、なんか日活ニューアクション映画のサントラ音源のような雰囲気が♪♪~♪
03 Idle Moments
さてさて、このアルバム中で一番気になるのが、この曲でしょう。
ご存知、グラント・グリーン(g) 畢生の名曲・名演として、そのアナクロ歌謡曲風のテーマメロディとディープでスローな解釈が、ジャズ者の心を捕らえて離さないわけですから、このメンツでは、どうなることやら……、と興味深々、聴く前からのワクワク現象でした。
で、まずマイク・ルドンのオルガンがペースを設定し、ピーター・バーンスタインのギターが真摯にテーマを弾いてくれるスローな展開♪ とは言え、やっぱり本家本元が素晴らし過ぎて、どうしてもイメージがB級に聞こえてしまいます。
エリック・アレキサンダーもテーマ部分ではジョー・ヘンダーソンに似せたサブトーンを吹いているんですが、アドリブパートではグリグリ・バリバリに突っ込んでしまいますし、ピーター・バーンスタインのギターはセンの細さが気になります。
なんか学生バンドみたいですねぇ。恐らく、直後にグラント・グリーンのバージョンが聴きたくなること、請け合いです。これがジャズの恐いところでしょう。
04 At Long Last Love
コール・ポーターが書いた定番スタンダード曲ですから、メンバーも気楽にスイングさせて和みの時間を生み出しています。
マイク・ルドンのオルガンは軽く、ピーター・バーンスタインのギターも白人的な洒落たフレーズばかりですから、お約束だとしても、この盛り上がりは、いいですねぇ~♪
エリック・アレキサンダーが入っていないのが、吉と出た雰囲気です。
05 Prayer For Mary
マイク・ルドンが書いたスピリッチャルなモード系の曲ですから、初っ端からエリック・アレキサンダーがジョン・コルトレーンの役を演じて、ハードな雰囲気を作り出しているあたりに、かなりグッときます。
まあ、このあたりは往年のジャズ喫茶族には、たまらんでしょう。
肝心のアドリブパートは、アフロ&4ビートの重さと快適なスピード感がありますが、何故かメンバーのソロパートが、またしても軽いというか、不完全燃焼気味……。これが現代のジャズだと言われれば、それまでですが……。勿体無いなぁ~。
06 Bones
ピーター・バーンスタインが書いたダークなハードバップなんですが、ここでも演奏が軽くて、物足りません。
それは多分、ジョン・ファーンズワースの敲き出すビートの軽さゆえのことかもしれませんが、メンバー全員が熱くなることを恥じているような雰囲気も……。
07 In The Bag
オーラスはナット・アダレイが書いた隠れ名曲を8ビート主体に、ビシバシに演じてくれますから、中盤のダレ場も帳消しです。
エリック・アレキサンダーは、甘っちょろいスタンダード吹奏よりも、けっこう、こういうのが合っているように思うんですがねぇ~。
オルガンとドラムスのビートの出し方も素晴らしく、ピーター・バーンスタインのギターも、それなりに爆発的なフレーズを聴かせてくれます。ただし演奏時間が短くて、残念……。
ということで、たまに新しいブツを紹介すると、こんな嘆き節しか書けません。明らかに聴いていて欲求不満に陥る出来なんですが、まあ、次に熱いハードバップを聴くぞっ! とジャズモードが全開にさせられるという効果は満点♪
皮肉っぽくて、すみません。メンツと曲に幻惑されて、買ってしまうブツって、やっぱり有るんですよ。