いよいよ寒くなってきましたですね。
明日からは年末年始にかけて仕事地獄が待ち構えていますので、心の準備も必要です。
そこで――
■Three Quartets / Chick Corea (Warner Brs. / Stretch)
ジャズがフュージョンを通過して4ビートに回帰した1980年前後は、あたかもブームのように登場してきた新伝承派と呼ばれた若手に対し、実際にフュージョンどっぷりだった現役世代が意地を聴かせた作品を続々と発表した、良い時代でした。
例えば本日の1枚は、その中でも特にハードで妥協の無い演奏がぎっしり詰まった作品で、それゆえに、やや感情移入が難しい欠点もありますが、聴かず嫌いが許されないブツだと思います。
録音は1981年1&2月、メンバーはマイケル・ブレッカー(ts)、チック・コリア(p)、エディ・ゴメス(b)、スティーヴ・ガッド(ds) という、恐い人選になっています――
A-1 Quartete No.1
チック・コリアが弾き出す不気味なイントロからバリバリにハードコアな演奏が展開されます。
それは決して4ビートだけで無く、ロックビートまでも導入した怖ろしいもので、まずマイケル・ブレッカーがツッコミの烈しいブローを聴かせてくれますが、その十八番とも言える因数分解フレーズには打ちのめされてしまいます。
もちろんバックのリズム隊も容赦無く攻めてきますが、やや消化不良のような……。多分、どこまでジャズに拘ったら良いか、特にエディ・ゴメスが困ったような按配……。
ですから、リズム隊だけのパートになると、スティーヴ・ガッドがブラシで4ビート主体に方針転換! するとエディ・ゴメスも生き返ったかのように、なかなかのベースソロを聴かせてくれます。
さらにチック・コリアがリリカルな一面を強調した神秘性を発揮♪ ここでもスティーヴ・ガッドが地味に良いですねぇ~♪ フッと気がつくと、いつしかラストテーマが始まっているという心地良さ!
つまり前半の動、後半の静が上手く組み合わされているのでした。
A-2 Quartete No.3
これも不気味な展開で、和めない曲です。
スローでドロドロしたテーマから、チック・コリアが無伴奏でピアノを弾きまくると思いきや、再びマイケル・ブレッカー主導のハードコア路線! なんだか分からないうちに高速4ビートの嵐に引き込まれてしまいます。疲れるなぁ……。
またチック・コリアとエディ・ゴメスも右倣え的な態度に終始するのですが、聴いていて、ちっとも楽しくないし、熱くもなりません。
こんな苦行もジャズの魅力なんでしょうか?
B-1 Quartete No.2
part 1 (デューク・エリントンに捧ぐ)
part 2 (ジョン・コルトレーンに捧ぐ)
B面は1曲だけの長尺演奏ながら、一応、2つのパートに分かれています。
まず前半はチック・コリアがスローで優しさに満ちたソロ・ピアノを聴かせて、雰囲気を設定していきますが、良いですねっ♪ ジャズ喫茶全盛期の響きが感じられます。
そして続くマイケル・ブレッカーがソフト&メローという趣から、精神性の強い部分へシフトしていく展開で熱演です。一応、チック・コリアとのデュオという演奏になっているのもニクイところです。
さらにエディ・ゴメスとスティーヴ・ガッドが参入してのピアノトリオになると、別の意味で和みと凄みの二重奏♪ う~ん、スティーヴ・ガッドのブラシが、こんなに良いなんてっ!
さて後半は、そのスティーヴ・ガッドが重いビートを敲き出してのハードな演奏になります。曲調も当にジョン・コルトレーンに捧げた雰囲気ですし、アドリブパートでの烈しい4ビートは、チック・コリアにしても、マイケル・ブレッカーにしても望むところでしょう。なにしろアドリブフレーズに「至上の愛」や「朝日のごとく~」が出たりします♪
そんな中でエディ・ゴメスはマイペースなのが???ですが、マイケル・ブレッカーは期待通りの爆裂テナーサックスで大暴れです! もちろんジョン・コルトレーンとは違う、マイケル・ブレッカーの「節」ばっかりですが、要所では、ついモード全盛期のフリー突入寸前の雰囲気を再現してくれる大サービスです。
ただし、それゆえに物足りないんですが……。
ということで、これは発売当時、ジャズ喫茶で鳴りまくった1枚です。
それが今日、CD復刻に際して、ボーナストラックが4曲ついており、それがなかなか良いんです♪
明るい雰囲気の「Folk Song」、正統派の「hairy Canary」と「Slippery When Wet」、お馴染みのビバップ曲「Confirmation」は、いずれも気楽にスイングして凄くなってしまった雰囲気が横溢しています。つまり明らかに本篇とは異質の演奏なので、アルバムには入れなかったのでしょう。
現代では体調が良くないと疲労困憊する作品かもしれませんので、ご注意願います。
ただし、このハードな雰囲気に馴染んでしまうと、日常の仕事地獄にも光明が差すというもんです。