最近、宴会が苦痛です。
酒に酔わないので、開き直ってウーロン茶を飲んでますし、これだと帰りの車も安心とは言いながら、気を使ったり、間が空いたりするのが恐い雰囲気で……。
疲れるなぁ……。
今日も、これから宴会に出ますけど、早くフェ~ドアウトして買ってあるDVDを観たいもんだと、願っています。
ということで、本日の1枚はリラックスして尚且つ凄い、これを――
■The Sound Of The Trio / Oscar Peterson (Verve)
オスカー・ピータソンは偉大なピアニストであり、けっして手抜きをしない名人だと思います。実際、私がこれまでに行った4回のライブそれぞれが物凄い熱演で、本当に一生懸命に生真面目な人だなぁ~♪ と演奏そのものよりも、そういう巨匠のステージマナーに感激したほどです。
これは多分、スタジオでの録音セッションでもリハーサルでも、はたまた個人の練習でも、きっと、同じだと思います。
しかし、お客さんを前にすると、一層、熱が入るのは言わずもがなでしょう。ジャズは「生」が良いと言う点を除いても、オスカー・ピーターソンのライブ盤は傑作ばかりです。
中でもこのアルバムは、1961年7月に録音された、所謂黄金のトリオによる大名盤! つまりメンバーはオスカー・ピーターソン(p)、レイ・ブラウン(b)、エド・シグペン(ds) という、今では伝説のトリオによるものです――
A-1 Tricrotisn (1961年7月29日録音)
モダンジャズ初期に活躍したベースの巨匠=オスカー・ペティフォードのオリジナル曲、ということは、その直系というスタイルのレイ・ブラウンをフィーチャーする目論見がモロですが、期待どおりの凄い演奏が展開されています。
まずオスカー・ピーターソンのピアノとレイ・ブラウンのベースが幾何学的なテーマで絡み合い、そこに絶妙のサポートを入れるエド・シグペンのブラシが完璧です!
そしてアドリブパートでは快適な4ビートになり、何気ないふうに凄い演奏が、至極当たり前に展開されるのですから、驚異です。ここは熱心に聴き入らずとも、本当に圧倒されてしまいますねぇ~♪ エド・シグペンのスティックによるシンバルワークも、良い感じです。
ちなみに、このライブセッションが行われた「ロンドンハウス」という店は、ライブハウスというよりもレストランで、肉料理が看板だったとか♪ その所為か、演奏といっしょに、お客さんの食器が触合う音も同時に録音されていますが、こんな演奏が展開されていては、食事の味も分からなくなるのでは……? 否、いっそう旨くなるのでしょうか♪
で、肝心の黄金のトリオは、レイ・ブラウンの繊細で豪胆なベースソロが、やっぱり素晴らしく、後を受けたオスカー・ピータソンが負けじとグイグイ盛り上げていく後半が、何度聴いても圧巻です。ジビジビの呻き声も憎めませんねっ♪
A-2 On Green Dolphin Street (1961年7月29日録音)
モダンジャズでは幾多の名演が残されているスタンダード曲ですが、もちろん黄金のトリオは臆する事無く、素晴らしいバージョンを聴かせてくれます。
それはまず、オスカー・ピーターソンがリードするクラシック風の出だしから、豪快なテーマの変奏と思わせぶりなアレンジの妙が印象的です。もちろんアドリブパートへの持って行き方は、3人の名人ならではの上手さが存分に発揮された、全く余人の真似出来る境地ではありません。無駄な音がひとつも無い感じです。
ベースとドラムスはオスカー・ピーターソンの手の内を完全に読みきったサポートでありながら、ワザとらしいところが無く、当に黄金のトリオは、どこまでもグルーヴィにジャズの楽しさを撒き散らしていくのでした。
B-1 Thag's Dance (1961年7月29日録音)
オスカー・ピーターソンのオリジナル曲で、ドラムスのエド・シグペンが主役となるように設定されています。
もちろん名人ドラマーは期待を裏切ることなく、スピード感満点のブラシで至芸をたっぶりと聴かせてくれますし、何よりもオスカー・ピーターソンの強烈なピアノを逆に引張る恐ろしさ! つられてハッスルしてしまうレイ・ブラウンも最高です。
そしてクライマックスはエド・シグペンの猛烈なドラムソロ!
B-2 Ill Wind (1961年7月29日録音)
スローな展開でオスカー・ピーターソンの物凄さが存分に味わえるスタンダード曲です。
それは両手をフルに使った無伴奏ピアノソロから、ベースとドラムスが入って、お馴染みのテーマが提示された瞬間、ザワザワしていた観客が思わず拍手してしまうという、これぞジャズ♪ う~ん、このオスカー・ピーターソンの和みと凄みには唸る他はありません。ほどよい黒さが、良いんですねぇ♪
B-3 Kadota's Blues (1961年7月28日録音)
オーラスはファンキーなブルースで、なんと11分を超える熱演が展開されます。
オスカー・ピーターソンはジンワリとアドリブを始めますが、ジビジビと呻きながら、徐々に熱いフレーズと繰り出しつつ、ブルースの奥義を求めて暗中模索する雰囲気で、ジワジワとクライマックスを築いていくのです。
もちろん指が動いて止まらない部分と独特のネバリが融合した強烈なスイング感は神業、というよりもオスカー・ピーターソンのブルースな日常なんでしょうねぇ♪
レイ・ブラウンとエド・シグペンも観念したかのような付き合い方なんですが、そこは名人の2人ですから、じっくり構えて余裕の技を聴かせてくれます。
ということで、数多有るオスカー・ピーターソンのアルバムの中では当たり前過ぎる出来かもしれませんが、これほど密度の濃いピアノトリオは、滅多にあるもんじゃ無いと思います。
そしてこれが日常だったのは、黄金のトリオゆえのことでしょう。
ちなみにこの時のセッシッョンからは、他に数枚のアルバムが作られていますが、カスがひとつも無いのは言わずもがな♪ 集大成的な5枚組のCDセットが出たのは嬉しいところでした。