今朝は仕事に向かう途中、車で黒猫をはねた!
と思いきや大きなヌイグルミでした。
う~ん、ホッとしたんですが、それにしても道路に紛らわしいものを置いたのは誰だっ!
ということで、本日は――
■Down Home Reunion (United Artists)
大人数が参加したジャムセッション盤は、様々な味のミュージシャンが一度に楽しめる幕の内弁当のような楽しみがありますが、アルバムとして、ちゃんと纏まりをつけた作品は案外少ないと思われます。
結果的にアルバムになるのは、LPという長時間録音&再生が可能なメディアとしての利用価値が優先されたに過ぎないのではないでしょうか。
しかし、このアルバムは「Young Men From Memphis」とサブタイトルが付けられているように、最初っからきちんと企画されて作られたのでしょう。実際に参加したのは、メンフィス出身でバリバリの若手達です。
録音は1959年、メンバーはブッカー・リトル(tp)、ルイ・スミス(tp)、フランク・ストロジャー(as)、ジョージ・コールマン(ts)、フィニアス・ニューボーン(p)、カルビン・ニューボーン(g)、ジョージ・ジョイナー(b)、チャールス・クロスビー(ds) という、豪華な面々です。
ちなみにフィニアス&カルビンのニューボーン兄弟の父親は、メンフィスでは有名なR&B楽団を運営しており、彼等兄弟に加えて、ジョージ・コールマンやジョージ・ジョイナー、チャールス・クロスビーがレギュラーとして活躍していたそうですが、その面々は後に大物ブルースマン=B.B.キングのバンドメンバーに横滑りしてメンフィスを去り、モダンジャズを志してニューヨークに流れ着いたという、サイドストーリーがあるようです。
またルイ・スミスは、この当時、半ば引退していたようですが、このアルバムのプロデューサーであるトム・ウィルソンとはデビュー盤(トランジション→ブルーノート)製作時からの仲とあって、引っ張り出された格好です。
そして注目のブッカー・リトルと白人のフランク・ストロジャーは、トム・ウィルソンが大いに売り出そうとしていた新進気鋭でした――
A-1 Things Ain't What They Used To Be
ブルースっぽくて和みのある、デューク・エリントン楽団の定番レパートリーで、モダンジャズでも多くのミュージシャンが演奏している名曲です。
ここではミディアムテンポで雰囲気のある合奏からジョージ・ジョイナーのベースが巧みなブレイクを聴かせ、フランク・ストロジャーがリードするテーマが、ジャズのムードを否が応でも盛り上げてしまいます。
そして、そのまんまアドリブパートに突入すれば、とても白人とは思えない黒っぽさと艶やか音色が魅力満点♪ 鋭いツッコミに絶妙の「泣き」もあって、本当に素晴らしいですねぇ~♪ バックをつけるリズム隊ではニューボーン兄弟の活躍が光ます。
続くトランペットはブッカー・リトルで、持ち前のスピード&マイナースケールの得意技を披露! バトンを受けたジョージ・コールマンはソフトな黒っぽさで正統派の貫禄を見せつけます。
またお目当てのルイ・スミスは、クリフォード・ブラウン直系という、相変わらずの実力者ぶりで流石です。
リズム隊ではカルビン・ニューボーンのギターソロに編集疑惑があるものの、ジョージ・ジョイナーの強靭なベースとフィニアス・ニューボーンの恐いピアノが、シンプルな凄みを発揮しています。
A-2 Blue'N Boogie
一転して早いテンポのハードバップで、ブルース進行でアドリブの腕を競い合う趣向になっています。
それはまずフランク・ストロジャーが流麗なフレーズを駆使して先陣を切り、続くブッカー・リトルは垂れ流し寸前のスケール練習気味ではありますが、その独自のマイナー感覚が、ここでも冴えています。
またジョージ・コールマンは、後に参加したマイルス・デイビスのバンド時代のようなモード感覚までも入れて熱演ですが、やや消化不良……。
しかし続くルイ・スミスが物凄い快演で、その歌心、スピード感は爽快ですが、ソロの時間が短いのが残念無念です。
気になるリズム隊はジョージ・ジョイナーがバックでも唯我独尊の暴れで存在感がありますし、フィニアス・ニューボーンは何時もながらの弾けっぷり♪
B-1 After Hours
このアルバムの目玉演奏にして、モダンジャズの歴史に残る名演だと思います。
素材はスローなブルースで、リズム隊だけの演奏ですが、本当に素晴らしいの一言! 主役はもちろんフィニアス・ニューボーンのピアノですが、ジョージ・ジョイナーの軋むベース、味のあるカルビン・ニューボーンのギターが絶妙の味をつけています。またドラムスのチャールス・クロスビーも余計な手出しをしない上手さがありますねぇ。
ちなみにこの曲はフィニアス・ニューボーンの十八番なんでしょう、ロイ・ヘインズのリーダー盤「ウイ・スリー(Prestige)」でもピアノトリオによる名演を残していますので、聴き比べも楽しいところですが、個人的には、ギターが入っているがゆえに、こちらのバージョンが好みです。何度聴いても飽きません♪
B-2 Star Eyes
天才アルトサックス奏者のチャーリー・パーカーが十八番にしていたスタンダート曲ということで、ここではフランク・ストロジャーとリズム隊だけのワンホーン演奏になっていますが、これも素晴らしい♪
ラテンリズムのテーマからフランク・ストロジャーが思わせぶりの吹奏で、4ビートに転じてからも、粋なメロディフェイクでワクワクさせてくれます。
もちろんアドリブパートも快演ですが、随所に新しい感覚と鋭いツッコミを入れて聴かせる情熱の吐露は、間違いなくマニア心を刺激されます。
またフィニアス・ニューボーンは、派手さよりも堅実さで勝負している印象で、その綺麗なタッチが魅力絶大ですねぇ♪ それにしてもバカテクの人が、こういう落ち着いたところを聴かせると、凄みがますます強くなるんですねぇ。
さらにジョージ・ジョイナー! お前は何故に、そんなに暴れるんだ!
ということで、派手でシブイ、クールが熱いという名盤だと思います。
特に繰り返しますがB面ド頭の「After Hours」は素晴らしすぎ♪ 一端虜になると、抜け出すのに苦労します。実際、私はCDならではのリピート機能で、延々と鳴らし続ける事も度々です。
また参加メンバー各々については、後に明暗を分けた人生模様が綴られていますが、とにかくここでは全員が熱演ですから、まさに一期一会を楽しむ機会として、リスナーは素直に聴く他はありませんですね。