昼間、顔を出したパーティで、疲れ果てました。
気疲れってやつですね……。お偉い方々が大勢いらっしゃって……。
どうも、こういう席は苦手です。世間話が金の話になったりして……。
隙をみてフェードアウトし、久々にジャズ喫茶で、これをリクエストしてきました――
■Capuchin Swing / Jackie McLean (Blue Note)
モダンジャズは所詮、個人技の競い合いなので、発売アルバムには参加メンバーの記載が必須です。そしてジャズ者は、未聴でも、そのメンツに期待してお目当てのブツをレジへ運ぶわけですが、私にとっては、このアルバムこそ、その最たるものでした。
録音は1960年4月17日、メンバーはブルー・ミッチェル(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、ウォルター・ビショップ Jr.(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds)という、大変に魅力的ラインナップですが、私の期待は、スバリ、ウォルター・ビショップ Jr. でした。
何故ならば、この人には説明不要の「スピーク・ロウ(Jazztime)」という大名盤が有り、その録音日が翌年の3月14日、つまり、このセッションから約1年後ということで、同質の演奏が聴けると当りをつけたわけです。そして――
A-1 Farncisco
初っ端からアップテンポでブッ飛ばしていくモード系の曲で、叩きつけるようなアート・テイラーのドラムスが痛快ですが、作曲したジャッキー・マクリーンも、何時に無くウェイン・ショーター風のアプローチを展開するあたりが聴きところでしょうか。なかなかにテンションが高く、興奮させられます。
またブルー・ミッチェルは、十八番の分かり易いフレーズを積み重ね、親しみが持てないテーマ曲を楽しい方向に導いて行きいます。
そしてお目当てのウォルター・ビショップ Jr. は、刺激の強いコード弾きの伴奏からアドリブソロで、おぉ♪ 歌心が発揮しにくい曲調でありながら、烈しい中にも絶妙の「泣き」が入った流麗なところを聴かせてくれます。このリズム隊だけのピアノトリオの部分も、テンションが高い好演だと思います。
ベースとドラムスは、もちろん素晴らしいかぎりです♪
A-2 Just For Now
そのウォルター・ビショップ Jr. が書いた、そこはかとない哀愁曲です。
ジャッキー・マクリーンは、そのムードを壊さないようにミディアムテンポでギスギスと吹いてくれますが、ブルー・ミッチェルは、やや不調か……?
そしてウォルター・ビショップ Jr. は、全体的に同じ様なフレーズばかり弾いているような雰囲気で???……? これで良いのか……? しかしそれは、十八番のフレーズばっかりなんでしょうねぇ……。
どうやら曲調に、それしか出来ないようなシバリがあるのかもしれません……。なんでかなぁ……。けっこう魅力的な曲なんですが……。
A-3 Don't Blame Me
お馴染みのスタンダード曲が、ここでは意表をついて、通常よりも早いテンポで演奏されています。しかもリズム隊だけのトリオセッション!
まずテーマから最初のアドリブパートにかけて、ウォルター・ビショップ Jr. が本領発揮のハードな歌心を綴れば、アート・テイラーは絶妙のブラシでサポート♪ ポール・チェンバースもブンブン唸っています。
もちろん、はっきり言って、前述した「スピーク・ロウ」には負けていますが、それなりに同様の味が楽しめるのでした。
B-1 Condition Blue
ジャッキー・マクリーン作曲による快適なハードバップです♪
そしてこういう曲調ならば、俺にまかせろ! ブルー・ミッチェルが素晴らしい快演で、私は完全にノセられてしまいますねぇ~♪ ポール・チェンバースも最高です。
そしてジャッキー・マクリーンがブレイクからアドリブしていくあたりは、本当にジャズを聴く喜びに感涙する瞬間で、ワザとらしいアウト感覚も憎めません。背後で時折聴こえる唸り声は、本人のものでしょうか、これも結果オーライです♪
さらにウォルター・ビショップ Jr. は、手クセ全開のアドリブで嬉しくなります。
B-2 Capuchin Swing
これもジャッキー・マクリーンのオリジナル曲ですが、やや考えすぎたような雰囲気になっています。まあ、時代がモード地獄へ突入していた頃ですから……。
したがって聴いていて、ちっとも楽しくありません。アート・テイラーもラテンビートまで叩いて盛り上げようと奮戦しているんですが……。
もちろんメンバーのアドリブソロは淀みなく情熱を吐露しています。しかしそれで名演とならないのが、ジャズ難しいところかもしれません。
B-3 On The Lion
しかしオーラスはウォルター・ビショップ Jr. が書いた颯爽としたハードバップなんで、前曲のイライラは解消されます。
まず先発のウォルター・ビショップ Jr. が、かなりエグ味のあるフレーズと手クセでアンバランスな面白さを聴かせてくれれば、続くジャッキー・マクリーンは「泣き」と「唸り」のマクリーン節をたっぷりと出しています。
もちろんブルー・ミッチェルは安定感がありますし、ポール・チェンバースの伴奏はかなり好き放題やっているように感じます。
ということで、とても名盤とは認定出来ない、はっきり言えば、中途半端な作品です。ウォルター・ビショップ Jr. が参加していなかったら、私は買う事も無かったでしょう。ジャズ喫茶で鳴っていた記憶も無い有様です。
ちなみにウォルター・ビショップ Jr. は、何故か前述の名盤「スピーク・ロウ」で聴かせた最高の歌心が、他では全くと言っていいほど、発揮されていません。ジャズ界の七不思議のひとつ、と断定しても良いと思うほどです! 当に一期一会、奇跡の出来だったのでしょうか……。
それゆえ、一度でも「スピーク・ロウ」を聴いたジャズ者は、同じ夢を追って、ウォルター・ビショップ Jr. を聴き続けるわけです。
そしてそれが、ジャズ地獄の一丁目! これはその奥の細道の入口に佇む傑作盤としておきましょう。
通称は「サルのマクリーン」です♪