9日には久々にエリック・クラプトンのライブに行ってきました。
そこで、いろいろと書きたいことがあるんですが、とりあえず一番印象的だったのは、私のような中年者がメインの客層の中で、若い娘と一緒のカップルが目立ったことです。
それは、あぁ、援交、丸見えだなぁ……、と羨ましがっていたら、実は親子連れという真相が、ほとんどのようでした……。
う~ん、ギターの神様も、時が流れて素敵な親子関係をサポートする立場になったのかぁ……♪
なんか、ますます羨ましくなったところで、本日の1枚は――
■Like Someone In Love / Art Blekey & The Jazz Messengers (Blue Note)
リー・モーガンとウェイン・ショーターという、メッセンジャーズ史上最高のスタア2人を徹底的に看板にした作品です。
と言っても、これは録音当時のリアルタイムで発売されたわけでもありませんし、セッション企画時から、それを目論んでいたわけでも無いと思います。ネタを明かせば、お蔵入りしていた音源を、それなりに集めて仕立て上げたアルバムなのですが、やはり上昇期の勢いとか熱気が、演奏の音以外のプラスアルファ的要素として、録音テープに残されたという奇跡の一瞬が楽しめるのです。
録音は1960年8月7&14日、つまり名盤「チェニジアの夜」と同日のセッションですねっ♪ もちろんメンバーはリー・モーガン(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ボビー・ティモンズ(p)、ジミー・メリット(b)、アート・ブレイキー(ds) という、最高のレギュラー陣が揃い踏みです――
A-1 Like Someone In Love (1960年8月14日録音)
ジャズでは定番スタンダードなので、幾多の名演が残されていますが、このバージョンも間違いなく、そのひとつです。
まずホビー・ティモンズが作るイントロ、そしてリズム隊のさりげなくアレンジされたグループ表現が秀逸で、忽ち惹き込まれてしまいます。しかも続くリー・モーガンのテーマ吹奏が、ソフトな歌心に満ちていて、もう最高です♪
あぁ、このミディアムテンポでグルーヴィな雰囲気といい、ウェイン・ショーターが彩るハーモニーの妙といい、これは全く、それまでジャズメッセンジャーズがウリにしていた「ゴルソンハーモニー」の進化系! というか「ショーター・ハーモニー」でしょうか♪
もちろんリー・モーガンも力演で、アドリブパートで徐々に力感を増してファンキー感覚を打ち出していくあたりは、トリハダ♪
またボビー・ティモンズも必要以上にワルノリせず、じっくりと構えてゴスペル風味をつけていく好演だと思います。
ただし残念なのはウェイン・ショーターのアドリブが出ないことで、しかし実は、それゆえにテーマ部分のハーモニーが輝くのだっ! と買被ることになるのですが……。
A-2 Johnny's Blue (1960年8月14日録音)
リー・モーガンが書いた熱いハードバップです。
そこには初っ端から、リズム隊のズンドコ&ドドンパ系のビートに煽られたエキゾチックな雰囲気が横溢し、そのまんま突入していくアドリブパートでは、忽ち激烈な4ビートという展開が痛快至極です。
とにかくリー・モーガンは、十八番のアドリブメロディをテンコ盛りで聴かせてくれますし、ウェイン・ショーターは自由奔放に奇怪なフレーズばかりを吹きまくりです。独特の音色も個人的には大好き♪
またリズム隊では大波のようなジミー・メリットのウォーキングベースが素晴らしく、それゆえにアート・ブレイキーの暴れが足りないように感じるのは贅沢でしょうか……。ボビー・ティモンズは可も無し不可も無しとは言え、ファンキー・グルーヴは健在です。
B-1 Noide In The Attic (1960年8月7日録音)
これが烈しいモード系ハードバップの極みつきという快演です。
作曲はウェイン・ショーターですが、アドリブ先発のリー・モーガンは、その真意を充分に汲み取ったツッコミで、唖然とさせられます! あぁ、この瞬発力こそ、モダンジャズ全盛期の証に他なりません!
そして、いよいよ登場するウェイン・ショーターも、全く期待以上の弾けっぷりです♪ バックで煽るアート・ブレイキーのドラムスが霞んでしまうほどのブッ飛び方は、当時はおろか、現代でも常軌を逸していると思いますねぇ~! 3分44秒目あたりからの烈しいスタッカートの連発は、本当に強烈です。
さらにボビー・ティモンズのパートでは、リズム隊が一丸となったようなグルーヴの大嵐ですから、締めのアート・ブレイキーのドラムソロまで、緊張感がいっぱいです。
B-2 Sleeping Dancer Sleep On (1960年8月7日録音)
これも名曲・名演の極みつき♪ というか作者のウェイン・ショーターとしても会心のオリジナルではないでしょうか。スローで優しい美メロのテーマと力強いリズム隊が渾然一体になったところから、フゥ~、と抜け出していくリー・モーガンのトランペットが、本当に爽快です♪
もちろんアドリブパートでは、これぞリー・モーガンというアクの強いフレーズが、これでもかと楽しめますし、続くウェイン・ショーターは言わずもがなの完璧さ! 神秘性と和み、その深遠なメロディ感覚は、私の感性にはジャストミートの一撃ですねぇ~♪ 本当に何時までも聴いていたい名演です。
またボビー・ティモンズが、ちょっとビル・エバンス風というアプローチで、意表を突かれますが、これはこれで、良いんです。あぁ、名演!
B-3 Giantis (1960年8月14日録音)
この曲もまた、如何にもウェイン・ショーター的なオリジナルで、ちょっと幾何学的なテーマがクセになるハードバップです。
アドリブ先発は、もちろん作者自身が、お手本を聴かせるようなウネウネと複雑怪奇なフレーズを連発して、聴き手を心地良い迷路に誘い込むのですが、続くリー・モーガンが、それを颯爽と振り切ってハードバップの灼熱地獄を展開するあたりが、当時のバンドの勢いというところでしょうか。本当に最高ですねっ♪
ということで、A面がモーガン・サイド、B面がショーター・サイドという括り正解かと思いますが、どちらも最高なんですから、たまりません♪
ちなみに、このアルバムは1960年代後半に発売されたことから、アウトテイクの寄せ集め的な位置付けと思われがちですが、製作サイドとしては、内容的にリアルタイムでは難解と判断した結果だと推察しています。
実際、B面収録曲は、現代の新録作品としても充分に通用するでしょう。
またA面もジャズの本質に根ざした永遠の輝きとして間違い無いところですから、機会があれば、皆様には、ぜひとも聴いていただきたい名盤だと思います。