OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

こんな日はワルツ♪

2008-02-01 18:24:02 | Jazz

あぁ、メッチャクチャに忙しかったです、朝っから!

だいたいトラブルの電話報告で起こされる事態が、ねぇ……。

ということで、本日は――

Jazz In 3/4 Time Featuring Max Roach (EmArcy)

アルバム全篇、ワルツタイムでハードバップを演じた、1950年代では画期的な作品です。

主役のマックス・ローチは抜群のドラミングでモダンジャズを創成した偉人のひとりで、4ビートはもちろんのこと、逸早くポリリズム感覚を叩いていたのですから、こういう企画もムベなるかな!

ちなみにジャズの世界ではデイヴ・ブルーベック(p) も変拍子演奏をウリにしていますが、ワルツタイムを使い出したのは、このアルバム録音時の1957年と同じ頃でしたし、もっと過激な5拍子とか7拍子をやりだしたのは、1959年頃です。

もちろんモダンジャズ以前にワルツタイムでスイングしていた演奏は、ほとんど無いと私は思っていますから、このアルバムの自然で豪快なグルーヴは驚異的であると同時に、当時のバンドレギュラー達の素晴らしいアドリブも堪能出来る名盤になっています。

録音は1956年9月と1957年3月に行われており、メンバーはマックス・ローチ(ds) 以下、ケニー・ドーハム(tp)、ソニー・ロリンズ(ts)、レイ・ブライアント(p)、ジョージ・モロウ(b) という黄金のクインテット! しかし3月のセッションになるとピアニストがビル・ウォレス(p) に交代しています――

A-1 Blues Waltz (1957年3月18日録音)
 タイトルどおり、ハードバップのブルースをワルツタイムで演じていますが、豪快なノリは最高です。
 もちろんアドリブパートでも違和感が無いのは、マックス・ローチの正確無比なドラミングがあればこそ! ビル・ウォレスは些か緊張気味ですが、続くケニー・ドーハムはリラックスした快演ですし、ソニー・ロリンズは独自のタイム感覚も冴えた豪快さを披露しています。
 そしてマックス・ローチのドラムソロが3拍子をキープしたままに暴れまくり、ヤバイほどにキマッています。

A-2 Valse Hot (1957年3月20日録音)
 ソニー・ロリンズの有名なオリジナル曲で、既にクリフォード・ブラウンと共に1956年3月録音の名演(Prestige)が残されていますが、テンポアップしたこのバージョンも凄すぎます。
 まずソニー・ロリンズのアドリブが強烈至極! マックス・ローチのドラミングも完全なポリリズムになっていますから、ほとんど両者の対決がメインという感じです。
 しかしケニー・ドーハムも負けていません。歌心優先の温か味のあるスタイルで、この優雅な名曲を彩るのです。また必死でピアノをスイングさせようと奮闘するビル・ウォレスも印象的ですねぇ。途中で道に迷った感もありますが、ちょいとニヤリの場面です。
 そしてベースソロに続いてのクライマックスはマックス・ローチの恐いドラミングが引っぱるソロチェンジ! ドーハム&ロリンズとのハンディキャップマッチとなりますが、思わず熱くなるドラムソロ!
 15分近い演奏ですが、全くダレていません。

B-1 I'll Take Romance (1957年3月18日録音)
 緊張感が強かったA面から一転、B面は和みサイドとでも申しましょうか、まずはリラックスしたスタンダード曲が、もちろんワルツタイムで演じられます。
 シンミリとしたピアノのイントロから楽しいテーマ演奏は、なかなか凝ったアレンジですし、力強いグルーヴが表出していて、ここだけで満足してしまいますが、ケニー・ドーハムがアドリブに入ると、ますます素晴らしい世界が繰り広げられるのです。う~ん、歌心満載♪
 そしてソニー・ロリンズが、これまた最高! こんな自在なアドリブが出来るなんて絶句……。まさに天才の証が楽しめます。
 またオクターブ奏法でバラバラになりそうなビル・ウォレスのハッスルぶりも、なんか微笑ましいですねぇ。
 
B-2 Little Folks (1957年3月20日録音)
 マックス・ローチのオリジナルで、それほど冴えた曲ではありませんが、ドーハム&ロリンズのアドリブは原曲を越えた“アドリブの面白さ”を強調しています。
 全体に沈み込んでいくようなワルツビートが重く、う~ん……。

B-3 Lover (1957年3月21日録音)
 モダンジャズでは御馴染みのスタンダード曲で、テーマ部分からウネリまくるソニー・ロリンズが強い印象を残します。もちろんアドリブパートも豪快ならば、バックで煽るマックス・ローチのドラミングはワルツビートのポリリズム的解釈で素晴らしいですねぇ~~♪
 またケニー・ドーハムも既に新主流派っぽいアドリブになっていますし、ビル・ウォレスは、またまたオクターブのバラバラ弾きでテクニックを披露しているつもりなんでしょうが、??? マックス・ローチの度量の大きさゆえに、ちょっとフリーな演奏を聴いている錯覚に陥ります。
 ちなみに、この演奏は編集バージョンで、完全版はステレオバージョンとして後に発表されていますが、ここではドラムソロとアンサンブルの一部がカットされただけというのが、真相です。

B-4 The Most Beautiful Girl In The World (1956年9月19日録音)
 ソニー・ロリンズが十八番にしているこの曲だけ、レイ・ブライアントがピアノを弾いている所為でしょうか、なかなかリラックスした味わい深い仕上がりです。とにかくソニー・ロリンズが素晴らしい♪
 そしてケニー・ドーハムのトランペットも微妙な“泣き”が入っている感じです。もちろんレイ・ブライアントの艶っぽいピアノも絶品♪ ジャズの良さを再認識させられてしまいます。

ということで、マックス・ローチのドラミングの素晴らしさはもちろんのこと、全盛期ソニー・ロリンズを存分に楽しめる1枚でもあります。

基本はモノラルバージョンだと思いますが、完全版はステレオバージョンというところから、CD再発では前述した「Lover」が両バージョン入っているようです。

ただし個人的には、このアルバムのステレオミックスは隙間がありすぎて迫力不足を感じています。まあ十人十色の感性でしょうが、ハードバップの名盤に違いはありません。

欲を言えば、レイ・ブライアントが全面的に参加していれば……。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする