東京も昨日の大雪、本日の冷え込みで道路が凍結し、事故が多発でしたね。まあ、冬用の備えが日頃は必要ないところから、仕方がないとは言いながら……。
被害にあわれた皆様には、お見舞いもうしあげます。
ということで、本日は――
■Stan Getz & J.J.Johnson At The Opera House (Verve)
言わずと知れたモダンジャズの大名盤ですし、モノラルとステレオの両盤において、そのミックス以外にも録音年月日が異なるという事でも有名な傑作です。
結論から言うと、演奏そのものは甲乙つけがたいのですが、1曲だけ収録トラックが多いモノラル盤の方が個人的には好きです。
録音は1957年10月7日、もしくは10月25日のライブセッションで、タイトルは「オペラハウス」になっていますが、実際のステージはロスのシュライン・オーディトリアムが正しいとされています。
ちなみにステレオ盤は1957年9月29日のステージで、こちらこそがシカゴのオペラハウスでの録音なのですが、メンバーはスタン・ゲッツ(ts)、J.J.ジョンソン(tb)、オスカー・ピーターソン(p)、ハーブ・エリス(g)、レイ・ブラウン(b)、コニー・ケイ(ds) というオールスタアズなのは、両盤とも同じです――
A-1 Billie's Bounce
チャーリー・パーカーが書いたモダンジャズの聖典というブルースで、まずは物凄いドライブ感に満ちたオスカー・ピーターソンのイントロから豪快なテーマ合奏だけで、完全に虜になってしまいます。
そしてスタン・ゲッツが独特の浮遊感でアドリブに入っていけば、狂ったようにスイングしまくるリズム隊に煽られつつも、逆に引っぱる大快演! 豪快かつ繊細なフレーズ、流れてウネルという唯我独尊の世界には眩暈がするほどの歓喜悶絶です。
また対する J.J.ジョンソンは何時もの冷静さを脱ぎ捨てたような暴れっぷりで、端正なフレーズに激しさが加わって、当に火の出るようなアドリブでありながら、決して破綻していない素晴らしさです。
さらにクライマックスではスタン・ゲッツ対 J.J.ジョンソンの絡んで悶絶の白黒ショウという仕掛けがっ!!! 本当に最高ですねぇ♪
このあたりはステレオ盤でも同様の展開なんですが、モノラルバージョンの方がテンポが幾分速いので、なおさらに痛快なのでした。
A-2 My Funny Valentine
有名なスタンダード曲がミディアムテンポで演奏されますが、テーマ部分からテナーサックスとトロンボーンが執拗に絡み合いながらメロディを奏でていくという仕掛けが、最高にキマッています♪ おそらくこれはヘッドアレンジなんでしょうが、流石は名手ばかりのバンドですから、感銘して絶句でしょうねぇ。
もちろんアドリブパートでも先発のスタン・ゲッツがクールで熱い歌心を発揮すれば、J.J.ジョンソンは悠々自適のスライドワークでスケールの大きな和みの世界を構築していきます。
ちなみにステレオバージョンでは、このソロの順番が逆になっていますが、ラストテーマ部分の絡み進行は同じですし、アドリブの良さも甲乙つけがたい味わいがあります。
B-1 Carzy Rhythm
タイトルどおり、熱狂的にスイングするスタンダード曲の演奏なので、こういう対決ライブにはジャストミート! 烈しく攻め込む J.J.ジョンソンに対して流麗な歌心で勝負するスタン・ゲッツというスリルがたまりません♪
早いテンポでも決して乱れないリズム隊の強烈なグルーヴも素晴らしいと思います。
ちなみにステレオバージョンのミックスは左にピアノ、ベース、ギター、右にドラムス、テナーサックス、トロンボーンという“泣き別れ”が基本なのですが、このトラックに関してはテナーサックスが時折左寄りになったり、またベースが真ん中へ行ったり、シンバルとバスドラが左右に広がったりするのが顕著なので、ステレオ盤がけっこう面白く聴けるかもしれません。
もちろん演奏の出来そのものは、全く差異がありませんが♪
B-2 Yesterdays
J.J.ジョンソンをフィーチュアしたスタンダード曲の演奏で、ミディアムテンポのリラックスした好演になっています。
そしてこれはモノラル盤にだけ入っているんですねぇ~。それゆえに一層、モノラル盤の人気が高かったわけですが、現在ではCDアルバムで復活していますので、一安心でしょう。
実際、短いながら、素晴らしい出来栄えなんですねぇ♪
さらにラストテーマの最後には、ホーンアンサンブルが付いているのを確認出来るというお楽しみがあります。これは多分、このステージがノーマン・グランツ主催によるJATPでのバラードメドレーの一部だった可能性を示唆していると思いますが……。
B-3 It Never Entered My Mind
今度はスタン・ゲッツの一人舞台というバラード演奏で、これまた素晴らしい♪ スカスカのサブトーン、力強い解釈、深遠な歌心と天才性が溢れ出た名演だと思います。
ちなみにモノラルとステレオの両バージョンにおいても、基本が同じという出来栄えですから、ほとんど完成された世界だったことが分かろうというものです。う~ん、最高!
B-4 Blues In The Closet
アルバムの締め括りはアップテンポのブルース大会ですから、これぞハードバップの熱気が充満して爆発した豪快な演奏です。
時期的には名盤「ブルートロンボーン(Columbia)」を吹き込んでいたJ.J.ジョンソンが怖ろしいばかりのアドリブを披露すれば、スタン・ゲッツは流麗にドライブする狂熱のクールスタイルで対抗しています。
もちろん両者のアドリブソロの背後からは、お互いの楽器とリズム隊が烈しく絡んでツッコミを入れてきますから、クライマックスの丁々発止は“お約束”なんですが、ステレオ盤の方が、若干ですが出来が良いと感じています。それはステレオ盤だと、スタン・ゲッツ対 J.J.ジョンソンの絡みが明瞭に聞き取れるからで、まあ、これは十人十色の好き嫌いでしょう。
ということで掲載ジャケットはモノラル盤です。ステレオ盤とはデザインが異なっていますが、個人的には、こっちが好きなので♪
まあ、それはそれとして、やっぱり名盤は最高♪ と聴く度に熱くさせられるのでした。欲を言えばリズム隊の各人に全くアドリブソロの出番が無いことですが、やはりフロントの2大スタアを主役にすれば当然と納得しています。