なんだか東海~関西は積雪があったらしいですね。
雪国も当然、雪なんですが、本日はちょっとスキー場へ行ってきました。なにしろ家族もそれが目当てで、こっちに来ているし、南方から来た外人のお客さんが、どうしてもスノボをやりたいとか我侭たれるんで……。
それでも少しは暖かかったんで、雪も湿り気味でしたが、楽しいといえば楽しい1日だったようです。
ということで、本日は――
■Black Peales / John Coltrane (Prestige)
プレスティッジお得意のオールスタアセッション物のひとつで、しかも長らく寝かせておいた後に発表されたアルバムです。
その録音は1958年5月23日、メンバーはドナルド・バード(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds) という定番の五人組! しかし発売されたのは1964年頃だったと言われています――
A-1 Black Peales
ジョン・コルトレーンのオリジナル曲で、陽気でありながら、ちょっと不気味な違和感が漂うテーマ合奏が、なんとも魅力です。安定感抜群のリズム隊は、何時もながらに快適なグルーヴを提供していますが、ジョン・コルトレーンはアドリブの初っ端から強烈な音符の羅列で、ひとり異次元を彷徨っていくんですねぇ。
それでも絶対に崩れないリズム隊の存在ゆえに、これは当時入っていたマイルス・デイビスのバンドでもやっていた事なんでしょうが、ここではますます確固たる自信を掴みかけていたジョン・コルトレーンの姿勢だったと思います。いや、そう思いたいほどにジコチュウなんです。
しかし続くドナルド・バードは、あくまでもハードバップの範疇で大熱演! ですからリズム隊も、ますます安心感が強いプレイとなって、ツッコミと合の手が冴えまくり♪ アート・テイラーが十八番の釘打ちリムショットが良い感じです。
そしてレッド・ガーランドが和みのスイングで、歌心のあるフレーズばっかりですから、如何にジョン・コルトレーンが浮いているか、はっきりと確認出来るのでした。
まあ、このあたりは同じメンツで膨大に残されているレッド・ガーランドのリーダーセッション盤と似て非なる世界で、良く解釈すればジョン・コルトレーンの世界が表現されていると言えますが、なんとも最高なレッド・ガーランドのブロックコード弾きからポール・チェンバースの素晴らしいベースソロが披露されれば、“元の木阿弥”という感じですね。
A-2 Lover Come Back To Me
猛烈なテンポで演奏されるスタンダード曲で、ドナルド・バードが絶好調のテーマ吹奏から白熱のアドリブに入っていきます。バックのリズム隊が作り出すキメも鮮やかですが、こんな全力疾走が普通に出来ていることに驚嘆させられます。
もちろんこれはジョン・コルトレーンの望むところでしょうが、何故か最初はモタツキがあって、逆に安心出来ます。そして中盤からは本領発揮の強烈な音符過多症候群! ついつい乱れそうになるリズム隊が必死の追走も熱いところです。
しかしレッド・ガーランドのアドリブパートは苦しく、あぁ、これがオスカー・ピーターソンだったらなぁ、と失礼な感想まで……。と思っていると、アート・テイラーのパワー満点というドラムソロがっ♪
B-1 Sweet Sapphire Blues
結論から言うとアドリブばっかりでテーマが無いブルースです。
それは快調なリズム隊、レッド・ガーランドのイントロ拡大アドリブパートでスタートしますが、この部分だけでゴキゲン♪ もちろんジョン・コルトレーンが登場する“露払い”なんですが、これもハードバップの魅力でしょう。けっこう早いテンポで、これだけのグルーヴが出せるのは名人トリオの底力だと思います。
こうして気を持たせた後に登場するジョン・コルトレーンは、なかなか新しいアプローチを聞かせてくれるんですねぇ。それはもちろん独特のスピード感でリズム隊から浮遊しながら大量の音符を撒き散らすという、所謂シーツ・オブ・サウンドです。
う~ん、既に述べたように、このアルバムは1960年代中頃に発売されているわけですが、それでも完全に時代にジャストミートしていたアドリブじゃないでしょうか!? 当時のジョン・コルトレーンはフリーに入り込んでいたにしろ、このアドリブだって古びていないと…。
そしてドナルド・バードが正調ハードバップからジョン・コルトレーンに刺激を受けたような音符羅列のフレーズまで吹きまくるのも楽しいところで、レッド・ガーランドが様々に仕掛けてくる伴奏のキメも実に良い雰囲気です♪
演奏はこの後、ベース&ドラムスのソロがあって終焉を迎えますが、スタジオでの即興演奏とはいえ、各人が手慣れた中にも緊張感に満ちたアドリブに撤していますから、長尺なトラックもダレないで聴けるはずです。
ということで、一応リーダーだったジョン・コルトレーンだけが浮きまくりという仕上がりなんですが、それゆえに痛快なアルバムです。
なによりもジャケットに写るジョン・コルトレーンの威風堂々とした姿が眩しく、このアルバムの魅力の一部だと思うのでした。