昨日は年甲斐も無くスノーボードなんかやったもんで、本日は腰が……。イテテテテ……。
ということで、本日は――
■Bill Evans Alone (Verve)
1970年代のジャズ界にはソロピアノのブームがあって、それを出せないピアニストは二流という風潮までありました。そして我国のジャズ喫茶でも、ソロピアノのアルバムが鳴りまくっていた時期が確かにあったのです。
今となっては、はっきり言って、つまらない仕上がりというか、独り善がりの演奏もありましたですね。特にキース・ジャレット、チック・コリア、マッコイ・タイナー、ハービー・ハンコックという人気者の作品なんか、リクエストが絶えないほどでしたが、そこには天国と地獄の両方が存在していたような……。
しかし誰もがノー文句でシビレる演奏だったのが、本日の1枚です。
主役のビル・エバンスは説明不要ながら、白人らしいスマートで奥深いハーモニー感覚の素晴らしさ、メロディを大切にしながらも独特のピート感がたまらない魅力という偉大なジャズピアニストで、ベースとドラムスを従えたピアノトリオの概念さえ変えてしまった天才!
そのビル・エバンスが、この初めての本格的ソロピアノのアルバムを作ったのは、未だブームが到来する前だった1969年12月の録音だったのですから、流石です――
A-1 Here's That Rainy Day
A-2 Time For Love
A-3 Midnight Mood
A-4 On A Clear Day (You Can See Forever)
B-1 Never Let Me Go
――という演目も最高でしょう♪ いずれの曲も素敵なメロディですから、そこにビル・エバンスの豊かなハーモニーと深遠なジャズ魂が加われば、もう桃源郷は“お約束”♪
それはゆったりとテーマメロディを歌わせながら、やがて秘められた情熱からジャズっぽいタッチに変化していくという展開が中心で、いましもベースとドラムスが入ってきそうな瞬間がスリリング! もちろんそんな事は「ありえない」というオチは分かっていて、それでもゾクゾクさせられるのがジャズ者の歓喜だと思います。
「Here's That Rainy Day」のアドリブは力強く、典型的なエバンス節しかしか出ない「Time For Love」、ジョー・ザビヌルが書いた名曲「Midnight Mood」の潔さ、また軽やかに躍動する「On A Clear Day」というA面は、ジャズ喫茶の定番として飽きない名演ばかりです。
また逆にB面は「Never Let Me Go」の1曲だけという長尺演奏ですが、魅惑のテーマメロディを静謐に弾きながら、独自の世界へとイマジネーションを広げていく展開は最高♪ それは官能的でもあります。
ということで、消え入りそうに淡いジャケットデザインにピッタリの演奏集だと思います。そしてソロピアノでありながら、決して眠くなるようなつまらなさは皆無! もし眠くなるとしたら、それはビル・エバンスが心から歌うメロディの魔法に酔わされた所為だと思います。
前述したブームの最中、ジャズ喫茶では流行のソロピアノが鳴り出すと席を立つお客さんも少なからず存在していたのですが、流石にこのアルバムだけは、皆が頭をたれて聴き入ったものでした。
それも懐かしい伝説かもしれません。