あぁ~、朝から諸々がトラブル続きでした。
ということで、本日も和みたい一心です――
■Ballads & Blues / Tommy Flanagan (enja)
ピアノとベースのデュオ作品は、何故かソロピアノアルバムよりも地味に感じるのは、私だけでしょうか?
だいたい演じているのが男2人という色気の無さ、ともすれば暑苦しい雰囲気さえ漂うというセッションには、これという決定的な名盤も少ないかもしれません。
もちろんオスカー・ピーターソン&レイ・ブラウンという名コンビの諸作やデューク・エリントンが自分の楽団のベーシストと繰り広げた名演の数々は歴史に残るものだと思います。でもねぇ……。
なんていう呆れた想いを抱いていた私の前に、忽然と現れたのがこの作品でした。
主役は名人ピアニストのトミー・フラナガン、そして相方はシブイ技巧派べーシストのジョージ・ムラーツですから、たまりません。なにしろこの2人は以前、人気盤「エクリプソ(enja)」で息もぴったりの名演を繰り広げていたのですから、それから約1年9カ月後という1978年11月15日のこのセッションにも期待は高まったのですが、それは全く予想以上の仕上がりになっていました――
A-1 Blue Twenty
A-2 Scrapple From The Apple
A-3 With Malice Towards None
B-1 Blues For Sarka
B-2 Star Eyes
B-3 They Say It's Spring
B-4 Birk's Works
――まずは「With Malice Towards None」が素晴らしすぎる名曲・名演です! 美しい哀愁をたたえたテーマメロディも最高ですが、そのテーマを巧みに変奏して美メロのアドリブを紡ぎだすトミー・フラナガンのセンスは最高♪ 寄り添うジョージ・ムラーツも全てが「歌」というベースを聞かせてくれます。
ちなみにこの曲はトミー・フラナガンが十八番としている隠れ名曲で、私は1980年代終り頃、ニューヨークでトミー・フラナガンが若手を入れたトリオで演じているのを聴いていますが、そこでも全く同じような展開でしたから、このバージョンの完成度の高さに納得しています。
またド頭の「Blue Twenty」はファンキーな変則ブルースながら、随所にキラリと輝く味なフレーズが素敵ですし、シンミリと始ってジワジワと熱くなっていく「Blues For Sarka」は、ビル・エバンスも真っ青の深遠な世界が描かれています。特に後者ではジョージ・ムラーツの緊張感溢れるベースワークが印象的♪ タイトルとは違って全然ブル~スしていないのも味わい深く、それは「Birk's Works」の正当性との比較で、さらに楽しくなるでしょう。
そして歌物では「Star Eyes」の軽やかな響き、「They Say It's Spring」での弾むような歌心が流石です。もちろん心からのスイング感も最高ですから、ジョージ・ムラーツのベースも存分に自己主張していますが、決して我侭ではないので好感が持てます。
それとモロにモダンジャズの「Scrapple From The Apple」は、ジョージ・ムラーツが過去にローランド・ハナ(p) とのデュオで名演を残しているだけあって、トミー・フラナガンも些か力んだ雰囲気ですが、それも良い方向に作用して結果オーライ♪ う~ん、人間臭くて好きです♪
ということで、かなり隅々まで名演だと思うのですが、やっぱり地味でしょうか……。もちろん私にしても車の中では聴きませんが、ハードな仕事の合間とか、ちょっとはホッとしたい時間にはジャストミートの1枚だと思います。