世間を騒がせている「毒入り餃子」事件の影響で、仕事場に入っている弁当屋のメニューが変わってしまいました。う~ん、随分と使われていたんですねぇ。大好きだったポークピカタが消えてしまった……。
ということで、本日は昨日の続きのような――
■The Oscar Peterson Trio At The Concertgebouw (Verve)
昨日掲載した「ゲッツ&J.J.」のライブ盤が話題に出ると、必ず付随して問題視されるのが、このアルバムです。
アルバムタイトルとデザイン、そしてジャケットに記載のサブタイトル「Recorded In Amsterdam, Holland」からして、オランダでのライブ盤と思いきや、実は前述した「ゲッツ&J.J.」のステレオ盤と同じ日の演奏が収められています。つまり録音は1957年9月28日、シカゴのオペラハウスでのライブセッションで、メンバーはオスカー・ピーターソン(p)、ハーブ・エリス(g)、レイ・ブラウン(b) というレギュラートリオ♪ もちろんJATPの巡業からライブレコーディングされたものです。ただし、こちらはモノラル盤しか無いようです――
A-1 The Lady Is A Tramp
本来は小粋な味わいのスタンダード曲なんですが、ここでのトリオは一丸となって猛烈にドライブする演奏に仕立てています。う~ん、このスピード感!
もちろんオスカー・ピーターソンは驚異的な指の動きで歌心に満ちたフレーズを連ねていきますが、爆発的なリズムギターを聞かせているハーブ・エリスはアドリブソロでも乱れず、さらに根底を支えるレイ・ブラウンも凄いですねぇ~。間然することのない演奏だと思います。
しかしそれゆえに和めないのが私です……。まるっきりサーカス演奏のようで、緊張感ばかりが先に……。オスカー・ピーターソンの呻き声までが、些か虚しく聞こえてくるのですが……。
A-2 We'll Be Together Again
という気分を察してくれたのか、続いてはリラックスした歌物バラードの世界が繰り広げられますが、これも、なんか虚しい雰囲気です……。
というのは、多分、出来すぎなんだと思いますねぇ。とても贅沢な言い訳なんですが……。
A-3 Bluesology
と戯言をホザいていたら、この演奏で目が覚めました。
タイトルどおり、ブルース魂に満ちたテーマから自然体のアドリブに入っていくトリオの素晴らしさ! 観客も拍手歓声です。
あぁ、オスカー・ピーターソンのブルースって、ウネリが凄いがゆえに黒さも百倍というか、クールで熱い部分と泥臭い雰囲気のバランスが最高で、この演奏あたりは、それが存分に味わえると思います。
ハーブ・エリスもギターのボディをボンゴのように叩いてリズムのアクセントを作り出し、時折入れるオカズのカッコ良さは絶品ですし、アドリブソロも基本に忠実なブルースリック、またカントリー系のフレーズを混ぜながら、本当に、たまらない世界です♪
またレイ・ブラウンが粘っこいウォーキング、さらにシブイ雰囲気のベースソロと縁の下の力持ちとなって、演奏はドロドロに煮詰められ、豪快なグルーヴを発散させていくのでした。
3者の絡みは圧巻ですよっ!
A-4 Budo
バド・パウエル(p) のオリジナル曲ですから、ビバップ色が強いテーマメロディながら、このトリオならではのアレンジと演奏力で、一気に最後まで持っていく展開がっ!
特にハーブ・エリスの早弾きと嫌らしいチョーキングは、いやはやなんとも……。オスカー・ピーターソンも指が動いて止まらない感じですし、ガンガンと過激な世界に入っていくトリオは凄いはずなのですが……。
B-1 I've Got The World On A String
あまり有名ではないスタンダード曲ですが、このオスカー・ピーターンソはリラックスした歌心の真髄を聞かせてくれますし、トリオの纏まりも最高だと思います。
それはミディアムテンポのグルーヴィな味わい、上手すぎるテーマメロディの変奏から千変万化のアドリブ地獄が素晴らし過ぎるんですねぇ♪ ハーブ・エリスの小粋なスイング感に満ちたギター、安定感抜群のレイ・ブラウンという、このトリオの真髄が楽しめると思います。
B-2 Daahoud
ギターとピアノの緻密な絡みから浮き出すテーマメロディは、おぉ、クリフォード・ブラウンが十八番としていたハードバップ曲! ですから、ちょいとエキゾチックな雰囲気にクラシック風のアレンジがありながら、アドリブパートはストレート勝負で、まずはハーブ・エリスがカントリー系のリックを多用した凄いギターソロを聞かせてくれます。
もちろんオスカー・ピーターソンは絶好調の豪快ピアノ! グイノリで早いフレーズを、これでもかと出しまくりですから、客席からも大拍手♪
B-3 When Lights Are Low
これもジャズの世界では裂けて通れぬ有名曲だけにオスカー・ピーターソン以下、トリオの面々は緻密なアレンジと歌心、スイング感の追及に没頭しています。
それはリラックスしたテンポ、洒落た雰囲気と遊び心が満載で、ステージと客席が一体となった和みの空間が現出しています。
B-4 Evrve
オーラスはオスカー・ピーターソンが書いたオリジナルが烈しいテンポで演奏されていきますから、たぶんバンドテーマだったのかもしれません。とにかく豪快無比なピアノ、最高に上手いサイドギターの味わい、4ビートの真髄を聞かせるベースという名人芸なのでした。
ということで、相等に凄い演奏ばかりなのですが、個人的にはイマイチ和めない作品です。極言すれば「Bluesology」1曲あれば良いという感じなんですねぇ……。
う~ん、何故だろう……。
とにかく「Bluesology」だけは聴いていただきたく、お願い申し上げます。
それにしても録音データに拘らないあたりが、いかにもヴァーヴというアルバムでもありました。ちなみにこれはモノラル盤しかないんでしょうか? こうなると気になっています。