昨夜から仕事と野暮用にかきまわされて、全く落ち着けない日常が続いています。
こんな日には、豪快に炸裂する、こんなアルバムを――
■Ready For Freddie / Freddie Hubbard (Blue Note)
常に時代の先端というか、ジャズ界をリードする作品を作り続けたブルーノートの姿勢を端的に表した1枚が、これです。
リーダーのフレディ・ハバードは当時、若干23歳にして新進気鋭のトランペッターとして上昇期にあり、ハードバップからモード、フリーやジャズロックまでも完璧に順応する圧倒的な演奏力が、ここに結実しています。
録音は1961年8月21日、メンバーはフレディ・ハバード(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、バーナード・マッキニー(euphonium)、マッコイ・タイナー(p)、アート・デイビス(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という猛者ばかり! 実際、リアルタイムではフレディ&ショーターがジャズメッセンジャーズであり、リズム隊はコルトレーン・カルテットからの出張ということで、バリバリの若手精鋭陣が揃ってしまったというわけです――
A-1 Arietis
溌剌としてグルーヴィなフレディ・ハバードのオリジナル♪ まず力強いリズム隊が最高で、さらにモードを上手く使いながらもメロディアスなテーマ、そして何よりも明朗闊達なフレディ・ハバードのトランペットがリードする演奏全体の勢いにシビレます。
もちろんアドリブパートでもスピード感満点に吹きまくるフレディ・ハバードは、それでいて印象的なフレーズを完全にコントロールされたトーンで聞かせてくれるのです。
またウェイン・ショーターも摩訶不思議なモード節! ジョン・コルトレーンとは明らかに異なった次元から繰り出されるアドリブは、クールで熱いですし、バーナード・マッキニーが吹くユーフォニュームは、トロンボーンよりも柔らかい音がして、味わい深いところです。
そしてリズム隊の物凄さ! 大ハッスルのマッコイ・タイナー、野太いウォーキングのアート・デイビス、ヘヴィなエルビン・ジョーンズという、これがモダンジャズ最前線の演奏なのでした。
A-2 Weaver Of Dreams
安らぎのメロディが魅力の歌物スタンダード曲で、最初にちょっとしたホーンアンサンブルが付いていますが、それ以降はフレディ・ハバードが一人舞台で大らかな歌心を披露しています。
スローテンポながらも力強いビートを出してくるリズム隊ゆえに、フレディ・ハバードは甘えることを許されず、アドリブパートからはテンポアップして溌剌と吹きまくり♪ エルビン・ジョーンズの厳しいブラシも最高ですねぇ~♪
さらにマッコイ・タイナーの饒舌なピアノに絡むアート・デイビスのベースも秀逸で、全くリズム隊だけ聴いていても満足の演奏だと思います。
と言いつつも、ラストテーマから大団円のフレディ・ハバードが、一層、素晴らしい輝きを放つのでした。
A-3 Marie Antoinette
ウェイン・ショーターが書いた強力なモード曲で、グイノリのリズム隊に煽られたテーマ合奏からウキウキさせられます。執拗に絡んでくるマッコイ・タイナーが印象的ですねっ♪
そしてアドリブ先発のウェイン・ショーターが大爆発! 典型的な“異次元ショーター節”に熱くさせられます。もちろんフレディ・ハバードも負けじと吹きまくれば、バーナード・マッキニーも意味不明なフレーズを羅列しながら大健闘! ビシバシに怒ったようなエルビン・ジョーンズも良い味を出しまくりです。
演奏はこの後、マッコイ・タイナーからアート・デイビスのベースに受け渡されますが、このパートも強烈! 特にアート・デイビスは演奏全体をがっしりと支え、しかも我侭に自己主張しまくっています。
B-1 Birdlike
フレディ・ハバードが後々まで十八番にしていたオリジナル曲で、タイトルどおり、ビバップの新主流派的な展開が楽しめます。それはアップテンポの豪快な演奏であり、若さ溢れるストレートな勢いにはグッと惹きつけられます♪
あぁ、これぞジャズ喫茶の音というか、烈しくツッコミながら燃え上がるフレディ・ハバード、強靭なアート・デイビスに激情のポリリズムを敲きまくるエルビン・ジョーンズというだけで、その場には熱狂の渦がっ!
そして、さらに凄いのがウェイン・ショーターです! 直線的でありながら紆余曲折という変態テナーサックスの真髄を聞かせてくれるんですねぇ。もちろん熱いジャズ魂が発散されていきますから、エルビン・ジョーンズも怒りのドラミングで対抗です♪ う~ん、最高ですっ!
続くバーナード・マッキニーも待ちきれずにアドリブに入ってしまうほどのハッスルぶりですし、背後から恐いほどに襲い掛かるリズム隊! 特にマッコイ・タイナーが俺に任せろのアドリブに入る心意気ですから、どうにも止まらないです。
B-2 Crisis
これもフレディ・ハバードのオリジナルで、ちょっとラテンリズムを使ったエキゾチックな名曲♪ ジャズメッセンジャーズの演目としても御馴染みですが、これが初演でしょうか?
ちなみにフレディ・ハバードがジャズメッセンジャーズに入ってから初の公式スタジオ録音は、このセッションの約1月後で、それは「モザイク(Blue Note)」というアルバムに纏められましたが、ここですでに、その手のサウンドが出来上がっていたのは、ウェイン・ショーターの参加ゆえの事かと思います。
で、ここでも雰囲気満点の演奏は“お約束”で、ラテンビートからポリリズムを駆使して奮闘するエルビン・ジョーンズが素晴らしく、痛快に吹きまくるフレディ・ハバード、独自の美学に拘るウェイン・ショーター、ユルユルのバーナード・マッキニー、さらにモードに耽溺するマッコイ・タイナーという、完全なる擬似メッセンジャーズ状態が好ましいです。
ということで、過激でありながら、なかなか聞き易さもある名盤だと思います。所謂3管編成という、当時の流行も取り入れながら、しかし頑固な部分もあり、常に節操が無いと言われ続けているフレディ・ハバードにあっては、なかなか硬派な仕上がりです。
これも大音響なればこその魅力盤なんですが、ヘッドホーンでも充分に楽しめると思います。
いゃ~ぁ、スカッとしますねぇ♪