■今夜は眠れない / The Electric Prunes (Reprse / 日本ビクター)
以前にも書きましたが、サイケデリックロックにはスタジオ技術をふんだんに使った「作り込み系」と、ライプステージでのジャズっぽいアドリブや、その場の空気を大切にした「即興系」があると思います。
例えば後者の代表がクリームやグレイトフル・デッドのような千変万化のライプを得意とするバンドであり、長い演奏が十八番というか、それが出来なければサイケデリックじゃ無い!?! と決めつけられた時代が、確かにありました。
一方、「作り込み系」としては、まず「サージェント・ペパーズ」期前後のビートルズ、あるいはそれに追従したストーンズも、またしかりですし、その他の有象無象が夥しいシングル&アルバムを制作しています。
しかしそれが大衆ヒットするのは、本当に限られたものだけで、本日ご紹介の「今夜は眠れない / I Had Too Much To Dream」は代表的な名曲だと思います。
演じているエレクトリック・プルーンズは一応はアメリカのバンドとされていますが、その正体は本当のところ、不明じゃないか? というのがサイケおやじの昔っからの疑問です。
その一番のプロフィールとしては、リチャード・ウェットストーン(vo,ds,per)、マーク・キンケイド(g,vo)、ブレット・ウェイド(b,ts,fl,key)、ジョン・ヘロン(key,per) ということなっていますが、掲載したシングル盤のジャケット写真にはメンバーが5人!?!
どうやら実際のバンドとレコーディングしていたメンツは異なるという、当時のハリウッド芸能界の事情がモロなんですねぇ……。一説にはカナダ出身の某バンドが、その正体だったとか!?! あるいは営業用のバンドが幾つもあったとか!?! とにかく出来あがった楽曲が売れてくれれば、結果オーライでしょうね。
実際、サイケおやじにしても、昭和42(1967)年のラジオから流れてきた「今夜は眠れない」には、本当に眠れないほど興奮させられました。
歪んで唸るエレキギター、幾層にも重ねられたリズムとビートの呪術的なノリ、そしてまさにサイケデリックなボーカルで歌われる、妙に親しみやすいメロディ♪♪~♪ もちろんサウンドの作りは間然することのない鮮やかさで、そこには作編曲を担当するデイヴィッド・アクセルロッドという影の中心人物が存在していたようです。
またレコーディングの現場では、ストーンズが1960年代中頃にアメリカでのスタジオで諸々を仕込まれた名匠エンジニアのデイヴ・ハシンジャーが、しぶとく暗躍していたようですから、こうして出来あがった「今夜は眠れない」が、1967年2月にアメリカで大ヒットするのもムペなるかな! その勢いで我国でもシングル盤が発売され、各方面に多大な影響を与えたと、私は確信しております。
ちなみにエレクトリック・プルーズはアルバムも数枚出しておりますが、リアルタイムの我国で発売されていたかは知りません。ただ後年、ようやく聴けたそれらのLPにしても、結局はこのシングル曲のインパクトには遠く及びません。それがサイケおやじの正直な感想でした。
その意味で、尚更にこのシングル盤が愛おしいというわけです。