■Because / Dave Clake Five (EMI / 東芝)
昭和40年代はビートルズが何でも一番だったことを否定はしませんが、どっこい、巷にはまだまだ多くの素敵なメロディが溢れていたのも、また事実でした。
例えば本日ご紹介のシングル曲は、その胸キュン度数が最高の極みつきでしょう。とにかく甘いメロディとオルガンが実に印象的なんてすよ♪♪~♪ 発売されたのは昭和39(1964)年で、翌年にかけて大ヒットしましたですね。
演じているデイヴ・クラーク・ファイブはイギリスのグループで、メンバーはマイク・スミス(vo,org)、デニス・ペイトン(ts)、レニー・デヴィッドソン(g)、リック・ハクスレイ(b)、そしてデイヴ・クラーク(ds) の5人組です。そしてジャケットをご覧になれば一目瞭然、如何にも芸能界王道路線というスマートなルックスながら、しかし、その音楽性はなかなかにエグ味もある、当時の言い方ならば、パンチの効いたサウンドが特徴的でした。
ただし、日本でそれが知れてくるのは、このヒットがきっかけで、おそらく、この曲によってデイヴ・クラーク・ファイブはブレイクしたのではないかと思います。つまりバンド本来の持ち味からすれば、異質の展開が結果オーライ♪♪~♪
ちなみに当時の世界と我国の洋楽ヒット状況を考察すれば、エルビス・プレスリーによって白人主導のR&Rがブレイクし、続けてリトル・リチャードやチャック・ベリーといった本物の黒人R&Bがネタをバラした後、大スタアのエルビス・プレスリーが徴兵されたことで、激しいグルーヴをもった若者の音楽は、大衆芸能路線に追従していました。
それは元祖産業ロックというか、アイドル性を持った歌手が職業作家の書いた楽曲を歌い、あるいは上品な白人歌手がR&Bを脱色して演じ、さらにシュガーコーティングした甘い恋愛の歌を作り出しては、十代のマーケットを狙い撃ちです。
それは我国でもロカビリーの大きなブームが何時しか歌謡曲へと変質し、そのバックを演じていたのはジャズ専門のミュージシャンでしたから、さもありなん……。
少年時代のサイケおやじにしても、エルビス・プレスリーは歌う映画スタアで、小林旭みたいな人だと思い込んでいたほどですし、ラジオから流れてくる洋楽にしても、映画音楽とか大衆ジャズが多かったと記憶しています。
そんなわけですから、良いメロディの楽曲が優先してヒットするのは、あたり前田のクラッカー!
私はビートルズよりも先に、ビーター&ゴードンの「愛なき世界 / A World Without Love」と並んで、この「Because」が死ぬほど好きになりました。
逆に言えば、既に発売されていたビートルズの歌と演奏が、どれほど激しかった!?!
ということなんですねぇ~。
ベンチャーズに代表されるエレキサウンドも、またしかりです。
ちなみにデイヴ・クラーク・ファイブは、その楽器編成やグループの醸し出す雰囲気から、我国GSのブルー・コメッツとの関連も浮かんでまいりますが、やはり意識していたのでしょうか? 歴史的にはブルコメの方が昔から活動していたように思いますが……。
それとデイヴ・クラーク・ファイブは本国イギリスよりも、アメリカや諸外国で人気が高かったそうで、所謂ブリティッシュビートを広めた功績についてはビートルズと双璧だと言われていますが、そのビートルズの人気が本格的にブレイクした後は落ち目の三度笠……。するとリーダーのデイヴ・クラークは逸早く俳優へと転身しています。
尤もこれはバンドが全盛期から映画出演もメインにしていた活動にもよるでしょう。
このあたりは、我国のGSにも大きな影響を与えているのかもしれません。
ということで、昭和の洋楽はメロディが良くなければ流行らないという、極めて真っ当な事実を本日は書きたかったのです。