OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

とにかく初めて買ったジミヘン

2009-08-09 12:05:43 | Jimi Hendrix

Hey Joe / Jimi Hendrix (Track / 日本グラモフォン)

カリスマミュージシャンにして、サイケおやじも心底敬愛するジミ・ヘンドリックスも、しかし私は最初っから偉大な故人の魅力を理解していたとは言えません。

最初に聴いたのはラジオから流れてきた、おそらく「紫のけむり」だったと思いますが、それは昭和43(1968)年のことでした。そして正直に言えば、頭を抱えたというか、曲を決定づけるリフのカッコ良さにはグッと惹きつけられるのですが、ギュンギュンに唸ってばかりのギター、暴れるドラムスと蠢くベースからは、当時の常識的なロックのビートが感じられません。しかし全体としては、なんか凄いっ!?! と痛感させられる、所謂サイケデリックロックの神髄が溢れ出ているのです。

このあたりはリアルタイムでジェファーソン・エアプレインやザ・バーズといった、アメリカ西海岸系のトップバンドの歌と演奏、あるいは音楽雑誌やテレビ&ラジオ等々を通じて、ある程度の免疫が出来ていたはずなのに、中学生だったサイケおやじには理解不能の世界になっていました。

もちろんビートルズがやっていたスタジオ加工のサイケデリックとも明らかに違う、フレッシュなライプ感覚が極めて自然体だなぁ~、とさえ思う他はないというか……。

と同時に、いろんな写真で見るジミ・ヘンドリックスの風貌がド派手な衣装! それは名前のジミとは正反対じゃねぇのか!? なんていうシャレにもならない強烈なイメージでしたし、なによりも黒人がバリバリギンギンのロックを演じるという、当時としては常識外れの行動が、ますます得体の知れないものに直結していたのです。

しかも左利きのギタリストというのも、なんか、しっくりせず、おまけに歯でギターを弾くとか、ライプステージで楽器に火を付けたとか、背中に回したギターを曲芸のように鳴らしてみせるとか!?!

そうした場面の写真や映像に直面するほどに、サイケおやじは焦りを感じてしまうのでした。

そこで意を決して買ったのが、本日ご紹介のシングル盤で、本来はイギリスでのデビュー曲でしたが、我国では多分、4枚目の発売だったかもしれません。とにかくレコード屋の店員さんは、これが良い♪♪~♪ とか太鼓判でしたし、なによりもジャケットの雰囲気がサイケデリックのど真ん中!

しかし実際に針を落として聴いてみれば……。

ジミ・ヘンドリックスは皆様がご存じようにアメリカで活動していた黒人ギタリストで、その仕事は有名R&Bスタアの巡業バンドメンバーが主でした。その中にはリトル・リチャード、アイズレー・ブラザース、サム・クック等々の大物との仕事も含まれていて、現在ではその頃の貴重なレコーディングも聞かれるようになっていますが、概ねは下積みだったのです。

ところが1965年秋、アメリカに巡業に来ていたイギリスの人気グループ=アニマルズのペース奏者だったチャス・チャンドラーに発見され、そのまんま渡英したのが世の中を変える第一歩となるのです。

多くの伝説によれば、ジミ・ヘンドリックスはバックバンドのメンバーでありながら、既に相当派手なギタープレイを演じていたそうですし、前述したような曲芸もどきの演奏にしても、黒人芸能のひとつの方法論として昔から確立してたものだと言われていますが、それをジミ・ヘンドリックスは完全にエンタメ系から最先端のロック&ソウルの手法へと進化させていたようです。

そして紆余曲折あっての1年後、1966年の秋にはノエル・レディング(b) にミッチ・ミッチェル(ds) というジャズ出身者を従えた自分のバンドを率いて、いよいよデビューしたのが今日の歴史です。

で、サイケおやじは、それでも分からないなりに、このシングル盤を聴くという、ちょっと修行ような日々が確かにありました。

しかし救いだったのはB面に収録された「Stone Free」のスピード感に満ちたファンキーロックな演奏で、ここに書いたような表現は完全に後付けなわけですが、とにかくギンギンに突き進んでいくバンドの勢いは圧巻! これまで全く未体験だったギターの音色と歪んだようなフレーズ、R&Bとロックのビートがゴッタ煮となった白熱のノリ!

正直、ドロドロしたA面の「Hey Joe」よりは、数段ストレートに楽しめましたですね♪♪~♪

ちなみに私の周囲には、その頃にジミ・ヘンドリックスを聴いていた仲間は皆無でしたから、既に出ていたアルバムを聴けたのは後の事ですが、それでもクリームやエリック・クラプトンよりは先に、ジミ・ヘンドリックスって、なんか凄い! と思わされたのです。

まあ、このあたりはロックの歴史とは逆なんですけど、それが当時の実情の一端だと、ご理解願います。

そしてサイケおやじはジミ・ヘンドリックスが通称、ジミヘンと呼ばれていることを知り、その絶頂期に無限の可能性を残したまま、天国へ召された悲しみを体験するのですが、それは後のお話として、まずは最初に買ったのが、このシングル盤ということだけで、本日はお開きとさせていただきます。