■ジェーン・ジェーン / 小畑ミキ (テイチクユニオン)
昭和歌謡曲の女性歌手は「スタア」であって、決して「アイドル」ではないというのが、サイケおやじの1960年代までの認識です。そして、それを打ち破ったのが以前にも書いたとおり、岡崎友紀だと思うのですが、実は昭和42(1967)年、極めて「アイドル」に近いところまでいった「スタア」が登場していました。
それが小畑ミキです。
彼女は掲載ジャケットをご覧なれば一目瞭然、日米ハーフで、本業は当時の人気モデルのひとりでした。そして作詞の才能があったことや、最高にキュートなルックスとスタイルが注目されていましたから、ついに17歳の時にレコードデビューしたのです。
ただし歌唱力は決して素晴らしいとは言えません。
このあたりは昭和40年代後半から1980年代のアイドル全盛期へと繋がる、まさに芸能界の美しき流れの本流でもありますが、残念ながらリアルタイムでは大きなヒットは出すことが出来ませんでした。
しかし後年、後追いで昭和歌謡曲を聴いている新しいファンに小畑ミキが発見され、そのアイドル性が再認識されたのは、当時を知っている私のような者には懐かしさと胸キュンの思い出が複雑に入り混じり、せつないような、嬉しいような……。
確か本格的な歌手活動はシングル盤を5~6枚しか残していないと思われますが、実は作詞家として、引退後も幾つかの作品を提供しているようです。
で、本日ご紹介のシングル盤は、おそらく2枚目の発売だと思いますが、これが全く歌謡曲離れしたGSポップス♪♪~♪ ガレージロックのガールパンクなR&Rの開祖といって過言ではない魅力が溢れ出た名曲名演だと思います。
その脱力してキュートな小畑ミキのボーカル、自身が作詞したアイ・ラビュ・ラビュ~♪ というキメ、解ぁ~って欲し~いぃぃぃ~♪ と、せつなく歌われる乙女心のストレートな感性が、如何にも芸能界どっぷりのところから素人っぽい世界への逆飛翔のような微妙さで、グッとシビレますよ。
さらにバックの演奏とコーラスが、実力派GSバンドだったアウトキャスト! ガッツ~ンとキメるイントロから、軽さの中にもビシッとロックのビートを叩きつけていくグルーヴは流石だと思います。間奏の「Terry-sh」なギターソロと小畑ミキに合わせるコーラスも良い感じ♪♪~♪
またB面に収録された「ハイ・ミスター」は同じくアウトキャストの演奏をバックにした4ビートの歌謡ロック! これもまた、最高に胸キュンの昭和の味わいなんですよねぇ~♪ ほとんど「こぶし」がつかない小畑ミキの、本当に棒読みの節回しが、アウトキャストのカッコ良い演奏と刹那コーラスで、なんとも言えない不思議なムードに化学変化していく、これも名曲名演だと思います。
繰り返しますが、小畑ミキの歌は上手くありません。
ですからテレビ出演で歌った時など、けっこう悲惨な場面も私の記憶に残っていますが、それも彼女のキュートなルックスと憎めない笑顔があれば、結果オーライ♪♪~♪ というよりも、歌でミスってこその魅力というか、そっちこそが小畑ミキの存在感だったように、失礼ながら、今は思っています。
実際、ブラウン管の中で、はにかむ彼女の魅力は絶大でしたよ♪♪~♪
ただし、それでも彼女が「アイドルに近いところ」までしか行けなかったのは、小畑ミキという女性が、あまりに美人すぎて、所謂「敷居が高い」という雰囲気だったからでしょう。テレビに登場する彼女が大好きだったサイケおやじにしても、きっとこの人とは、永久に口もきけないだろうなぁ……、という最初っからのあきらめが、確かにあったのです。
それは「スタア」の必要十分条件ではありますが、ちょっと勿体なかったなぁ……、と思います。
ちなみに彼女が残した他の楽曲は、昭和歌謡曲に染まりきったものからオールディズポップスやヨーロッパ系の美メロ曲まで、ちょいと一貫性に欠けています。そこには小畑ミキという素敵な美女の資質を活かす試行錯誤があったのは否めません。そして結局は大ヒットを出せぬままに引退されたのも……。
ということで、彼女の残した歌の幾つかは、喜ばしいことにCD復刻もなされているようです。そして本当の魅力を伝える映像復刻も、強く望みたいのは、私だけではないでしょう。当然ながら彼女はタレント活動もやっていましたから、全く可能性が無いとは決めつけられません。
こんな思いは伝わるのでしょうか……。